ごみ分別に積極的な行政でもそこんとこを省略していることが多くて、ごみを減らしましょう、再利用しましょうとは書いてあっても、なぜそういう取り組みをしているのか?と言う部分はどの議事録にも書かれていません。きっとそんなの当たり前じゃんと言うことなんでしょうけど、なんとなくの行動で仕方なくやっているというのであればともかく、積極的、主体的に行っているのであればきちんと説明して欲しいです。エネルギー的、税金的負担を住民に強いているわけなので。
というわけで、色々検索して調べて考えてみました。
なお「分別に積極的な自治体」のモデルとしては、自分にとって身近にある中で最も積極的という意味で、滋賀県の草津市を採用したいと思います。以下、「分別に積極的な自治体」というのは基本的に滋賀県草津市のことを指します。
参考リンク
草津市 ホームごみ | 草津市
まず、草津市の取り組みについて見ていきます。
一番わかりやすいのはこれかな。
平成23年度草津市のごみ状況|草津市
ここにあるPDF資料に草津市のこれまでの取り組みがまとめられています。
時系列が前後しているなど少々わかりづらいので欲しい部分だけを抜き出してまとめるとこんな感じ。
- 1960年 ため池を利用した埋め立てを開始
- 1973年 プラスチックごみの分別収集→重油還元方式での処理を開始
- 1976年 コスト高によりプラスチックごみの処理を融解方式による成型品への再生に切り替え(クリーンセンター建設)
- 1996年 プラスチック減容処理施設、金属処理施設、破砕ごみ処理施設新設
- 1997年 ごみ焼却炉改修工事完了、ペットボトル圧縮梱包処理施設新設
- 2001年 半透明ポリエチレンのゴミ袋を導入
- 2004年 プラスチックごみの融解方式による処理を終了、公益財団法人日本容器包装リサイクル協会への引渡しに変更
- 2005年 プラスチック圧縮梱包処理施設新設
かなり早い段階から実際に埋め立てるごみを減らす努力を続けてきたことがわかります。なぜか?といえばそれはもちろん、埋め立てる土地がないため。はっきりわかりやすく書かれている個所はありませんが、廃棄物減量等推進審議会の答申案および平成23年ごみの状況に、草津市内の最終処分場(埋め立て地)について以下のように書かれています。
草津市処分場
草津市の廃棄物の処分場として、設置しておりますが、現在は埋立処分を行わず、収集した不燃物を、埋立に適した状態にして、大阪湾の最終処分場等に搬出しています。
最終処分場の整備
市内に埋立ごみを受け入れ可能な最終処分場はなく、現在、大阪湾フェニックス計画により大阪湾内にある海面埋立処分場で埋立処理を行っているが、この埋立地も平成33年度で埋め立てが完了する見込みとなっており、それ以降の次期計画の目途はたっていないため、現在のフェニックス計画が終了するまでに市内に最終処分場を整備する必要がある。
つまり、以前は埋め立て地があったが一杯になったため閉鎖され、ごみを大阪湾に持っていって埋め立てざるを得なくなった。もちろんそれにはコストもかかるし、なによりあと12年しか持たない。そのためのごみ減量である…と。草津市内の埋め立て地がいつまで稼働していたかはわかりませんでしたが、今までもそしてこれからも埋め立て地に困るため厳しいごみ量の制限を行っているということのようです。
草津市より遙かに多いごみ量を抱える東京都の最終処分場の寿命があと50年ほど、僕の住む京都市の最終処分場の寿命が70年以上と見積もられていることを考えると、草津市の状況は大変に厳しいといわざるをえません。ごみを減らさざるを得ないのも納得できます。
回答1-6 中防の寿命|東京都環境局 廃棄物と資源循環
京都市における最終処分場の経過と現状(「都市清掃」2010年11月号掲載)/京都市 環境政策局 施設管理課
ただ中間処理まで行ってあとは他自治体に任せるというごみの処理が果たしてエコなのかというと…議論の余地がありそうですね。たまたま検索で見かけた、山本正行前草津市議会議員も自身のサイトでこのように書かれていました。
3 最終処分場整備問題
草津市にはゴミの最終処分場がありません。草津市内の御倉地先は中間処理場として使用しており、他市町村の最終処分地に依頼して処理してもらうための一時仮置き場としていましたが、昨今のゴミを取り巻く環境は、他市町村のゴミを扱う事は許されない状況になっています。つまり、自分の町で出たゴミは自分の町で処理することが求められています。この様な中で、御倉の中間処理場には処理されないゴミがたまりつつあり、早急な最終処分場の建設が必須となっています。・・緊急避難措置として御倉にたまっているゴミを再分別搬出を行うとして、平成14年には手作業で、平成15年からは機械を導入して減量を行いました。しかし現時点(H18、7)にあっても最終処分場の整備計画は実現していません。最終処分場の建設が周囲の理解を得られにくいものであることは判りますが、緊急避難措置だけでしのげるものならば大騒ぎする必要も無いのだが・・。 H18、7、19加筆
ごみの減量が大事なのはわかりますが、当面必要なのは埋め立て地ということのようです。僕にはそう見えます。
てか草津市ほどの規模でこれだと、小さい自治体はもっと大変だろうなぁ…
埋め立て地が十分にあれば…
埋め立て地が逼迫しているからごみを減らす…ということは、考え方によっては、ごみの埋め立て地が十分に確保できる自治体であれば極端にごみを減らさなくても良いのでは?と考えることも出来ます。埋め立て地が低コストであるわけでもないしダイオキシン対策等環境への配慮も大変なので、埋め立て地を作らないに越したことはないのですが、既に稼働している埋め立て地があり寿命も十分に長ければ、神経質にならないのももっともではないかと。逼迫感のない中での負担はなかなか受け入れられるものではないですよね。実際の話。70年の寿命を120年に延ばすため、市民税を1割上げますと言われて納得できるかなぁ…僕は多分出来ません。ちっちゃい男ですから。結局、ごみ削減の話は環境の問題でもあるけれども基本的にはまず地域的な問題であるような気がしました。
草津市の場合、崇高な理念というよりは前提として仕方が無くという面があることを強く感じました。
道徳的な問題で「ゴミ捨て放題でOK」とは言えませんけど、ごみを減らさなくて良いにもかかわらず分別を推し進めるのであればそれはなぜなんでしょう?よく言われているのは資源の節約ということになるわけですが、実際の所どうなんでしょうか。例えば草津市の実績では、分別回収したプラスチックごみからプランター1,000個、広幅板3,600枚を生産していますが、そのとき節約できた資源(主に石油?)はどれくらいのものだったのでしょうか?分別や輸送、融解などの処理に必要なエネルギーを十分に回収できるものだったのでしょうか。可燃ごみとして焼却したときの経費および環境コストと比べるとどうなのか。資源の節約って言いますけど、何するにしたって膨大なエネルギーは使うわけで実数を減らすことは難しいです。だからこそ、結果、差し引きどれくらい節約できたかを知りたい。そういうとこの指標がないと良いとも悪いとも言えないと思うんですよね。良いと信じるだけの根拠が欲しいです。
その上で学ぶべきことは
そういうわけで僕は、埋め立て地が逼迫していない環境でのごみ処理方針については、もっと研究の余地があると考えます。草津市の方針を京都市にそのまま思慮無く持ち込んで、やあ、エコだね!ってそれは「僕何も考えたくありません」というのと同義です。それはちょっと。ただ今回、草津市の様々な取り組みをみて、とても合理的で素晴らしいと思った点もありました。
例えば、このあたり。
- 指定ゴミ袋を高額に設定する一方でゴミ排出量から試算した使用枚数を無料で配布している
- ごみ収集に多くの奨励金を出している(町内会単位)
- 京都市が「拠点回収」としているものも分別の上、回収の対象としている(乾電池、蛍光灯など)
- 市民への啓蒙活動
町内会単位というのも効果は高そう。での普及活動は都市規模によると言う気はしますけれどもね。
一方で今後の取り組みについては、こんな事も書いてありました。
- (家庭)ごみ処理の有料化(指定ごみ袋による単純従量制の導入)の検討
- (家庭)リサイクル推進員制度や分別協力員制度の導入検討
- (事業)クリーンセンターへの資源ごみ搬入制限等の実施(古紙類等)
- (事業)クリーンセンターでのごみの搬入検査の実施(分別の徹底)
家庭ごみの重さや大きさでお金取られるとか、僕だったら絶対嫌だけどなぁ…付近の自治体としては、草津市が導入した施策の中から現実的に適用できる部分だけを自分の所に適用したらいいかなぁと思います。ちゃんと考えると、難しいのよね。色々事情があって。