【読書感想文】 仲村 清司 / 沖縄うまいもん図鑑

沖縄うまいもん図鑑 (双葉文庫)沖縄うまいもん図鑑 (双葉文庫)
仲村 清司
双葉社 2007-07
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始めは、沖縄の料理の紹介かなぁと思って読み始めたのだけど、読んでいるうちにそれがちょっと違っていることに気付く。ああそうか、沖縄の食文化を紹介する本なのね、と思って読み進めるのだけどそれも少し違っていて、つまりこの本は「(沖縄人に)沖縄の食文化の素晴らしさを伝える」ために書かれた本なのだね。もちろん僕ら「日本人」が読んでも面白いのだけど、単純に「沖縄にはこんな料理がありますよ」という本ではない、と言うところに面白味があります。外から眺めるとか背伸びして知ったふりするとかそういう感じではない、背丈にあった沖縄料理図鑑。


筆者は大阪出身だけれども同居していた祖父母・両親は沖縄出身で子ども時代も沖縄料理で育っており、現在は沖縄在住。現在の沖縄では家庭で沖縄料理を食べる機会が減っていると言うから、沖縄に生まれて育った人よりもよっぽど沖縄の食文化で育ったと言えるのかも。沖縄料理って言うと、ちゃんぷるーばっかりになってしまうけど、本当はもっと色んな種類があって、島豆腐とかマース煮とかドゥル天とかアーサの天ぷらとかくらいまでならまだ僕らでも解るけど、そこからオオタニワタリとか島ニンジンのイリチーとかチチアギーとか果てはかちゅー湯とかになってくると、沖縄文化の文脈無しでは全く解らない。すんごい面白い。言って良いのかどうか解らないけど、やっぱり沖縄は日本ではないよね。言語は似ているけれど、別の国という気がする(本来、元は別の国だし)。


また最近は1年中手にはいるようになったゴーヤにも種類(と言うか品種)があり、

現在、沖縄に出回っている品種は「群星(むりぶし)」「汐風」「アバシー」「中長」などだが、このうち「群星」「汐風」がニューフェースだ。(p.86-87)

なんて分かれてるのを聞くと、え、そうなの?と思ってしまう。農産物なのだから品種があるのは当たり前で、季節な用途によって特徴があるのはごく自然な話なのだけど、こっちではゴーヤの品種まで表示してることなんかほぼ無いし、むしろ「ゴーヤであること」に必死で品種を見定める余裕なんか無いのよね…思えば、大きさも苦味も全く違うのだからそりゃそうか(季節で変わるんだと思ってた)。

それ以外では味噌の話とか。次沖縄に行ったら是非、味噌汁定食を食べたい。


仲村さんの本は初めて読んだけれど全体の感じとしては、椎名誠さんや東海林さだおさんを意識したような少し軽いノリ。正直に言ってあまり上手なタッチではないなと思ったけれど、そんなことは気にならないくらい料理の紹介が魅力的で読む分には全く苦痛ではなかった(それに本の最初と最後で時間的なズレがあるのかタッチが自然なスタイルに移り変わっていって読みやすくなった)。

普通の「沖縄紹介本」とは沖縄との距離が違って、最初に書いたとおり、非常にローカルな話を覗いてるような気分になります。そうローカル新聞の文化面ていう感じ。それがなんとも良い案配で、巷に溢れる親切な沖縄本とは一線を画しているかも。とりあえず書店で見かけたら一項目くらいチラ読みしてみると面白いと思います。