Perlの商標の件について業界の友人に聞いてみた

話題になっていたこの件。

なにこれいたい
北畠徹也氏、「Perl/パール」を手中に

dankogaiー、そろそろ出番ですよー、と召喚してみるテスト。(笑) Dan, the patent not found.

先に行っておくと、Perlに関しては多分安心していい。すでに「本家」である The Perl Foundation が国際商標登録しているのだ。
商願2007-92708 (http://www1.ipdl.inpit.go.jp/syutsugan/TM_AREA_A.cgiより検索。ひどいインターフェイスだなあ)

先頭権発生は2007年8月29日。Perl\パール(苦笑)のそれは2009年11月2日なので、類似商号で争えばまず負けない筈だけど、私は法律のど素人なのでつっこみうぇるかむ。
 


コメントでも書いたのだけど、気になったのでその業界の友人に聞いてみました。

素人にはなかなか解りづらかったのですが、なかなか興味深かったのでまとめてみます。一応今回は、法律の条文をなるべく引かない方向で平易に進める予定で(ただでさえややこしい話なので)。





本家「Perl」の商標は取れていない

まず始めに重要なこと。

先に行っておくと、Perlに関しては多分安心していい。すでに「本家」である The Perl Foundation が国際商標登録している

されていないのです。弾さんの勘違いだと思うのですが、出願はしているものの、商標は取れていません。

本家「Perl」の出願

画像は弾さんのブログからお借りしてきたものですが、よく見ると解るように出願番号しか無く登録番号がありません。これは現在、出願中ではあるが登録はされていないと言うことです。拒絶もないので何も確定していない、審議中の状態。つまり保留。出願日が2007年8月29日ですから、3年近く掛かっていると言うことになります。



本家「Perl」商標出願の現状

商標出願の現状がどうなっているかは、こちらのページの「番号照会」から出願番号を打ち込むことでその概要を調べることが出来ます。

特許電子図書館 – 経過情報検索

「四法」を商標、番号種別を「出願番号」にして、照会番号に「2007-92708」と入力して検索を実行すると、出願が出てきます。

「出願情報」は下記の通りになっていて、


一度拒絶を受けたもののトライして現在もまた審議中らしいということが解ります。



本家「Perl」の商標が取れていない理由

ではなぜ商標が取れていないのか?というと、既に似たような「読み」のものが申請している同じ区分(9類 電子応用機械器具及びその部品)で登録されているからです。

それがこちら。


パナソニック電工株式会社によるもので登録日はなんと昭和26年です。現在も更新して所有しており、期限は2011年となっています。パナソニック電工株式会社はこの他にも文字だけで「PEARL」「パール」も登録しています。

商標は基本的に「読み」を基準として登録され、同音の漢字の場合には認められることもあるけれども、通常は綴り違いは同じものと判断され後から出願したものは認められないとのこと。テラ・インターナショナル社どうこうよりも、こっちの方が当面の壁になっているのではないかと。



本家「Perl」の出願とテラ・インターナショナル社の登録では区分が異なる

ではなぜ本家「Perl」は苦労しているのにテラ・インターナショナル社はあっさり取得できた(出願から5ヶ月)のか?
それは、出願している区分が異なるからです。

テラ・インターナショナル社の出願

本家「Perl」が「9類」であるのに対して、テラ・インターナショナル社は「42類」となっています。テラ・インターナショナル社の出願の類似群「42P02 42X11」で「パール」を検索すると本件を含めて7件が出てきますが、どれも語句の一部にパールが使われているだけで完全に一致するものはありません。そのため、余り時間が掛かることなく認められたのではないかと想像できます。



区分は異なるが系統は類似している

なぜ似たような用途なのに別の登録があるのか?それについては歴史的背景などもあって理由はよく解りません。

加えてそれぞれが具体的にどんなものを指しているかもここからでは解りませんが、こちらからそれぞれの区分の具体例を見ることで少しは想像できます。

類似商品・役務審査基準【国際分類第9版対応】

ここの第9類にあるPDFを開き、本家「Perl」の出願にある類似コード「11C01」(電子応用機械器具および部品)を見てみると次のようにあります。


これでも解りにくいことは解りにくいですが(網羅するのはそもそも無理)、5番目に「電子計算機用プログラム」が含まれていることがわかります。本家「Perl」がこの区分で出願しているのはこのためでしょう。

しかし備考を見てください。備考にはこうあります。

第42類の「電子計算機用プログラムの提供」に類似する

つまりこの項目は2つの類でかぶっている可能性がありますよ、ということです。これが何を意味するかというと…既に第42類で登録しているテラ・インターナショナル社は、この備考を根拠に意見を提出できると言うことです。「本家「Perl」の出願は自分の商標に抵触しているので拒絶して欲しい」という意見ですね。つまり下手に文句を言うとやぶ蛇になるかもってことです。法律上有利なのはテラ・インターナショナル社なので。

いや待て、これはパナソニック電工株式会社の商標にも言えるんだからそもそもテラ・インターナショナル社のヤツがダメじゃないのか?と思うんですが、しかし実際に登録されてしまっているわけですから、審議官の判断はそう言うことなんですよねぇ…意図的かどうかは知るよしもないですが。あんまり備考まで考慮して判断しないそうです。



本家「Perl」が商標を取るにはどういう可能性があるか

資金や手間を考えなければ例えば次のような案があるようです。

  • パナソニック電工株式会社から譲渡してもらう
  • パナソニック電工株式会社で「Perl」を取得してもらって譲渡してもらう
  • パナソニック電工株式会社の取消審判または無効審判を行う

つまり出願区分(9類)において「パール」という読みの商標に関する独占的な権利を持っているパナソニック電工株式会社に対して交渉を行います。一番目は、同分野をパナソニック電工株式会社に諦めてもらう。二番目は本家「Perl」の出願をパナソニック電工株式会社が行って取得してもらった上で(独占しているパナソニック電工株式会社には登録が可能)譲渡して貰う、3番目は争う。


テラ・インターナショナル社に対しては…既に認められたもので、取得から3年経っていないので無効審判も起こせず、打つ手がないような。本家「Perl」の代理人の先生は業界で有名なやり手の方のようなので既に何か手をうっていらっしゃるのかもしれませんが。




オマケ:テラ・インターナショナル社の出願一覧

いろいろと話題のテラ・インターナショナル社の出願ですが、実は登録されたのはこれが初めてです。

出願人「株式会社テラ・インターナショナル」または「北畠徹也」で検索すると次の8件が表示されます(全角表示なのは仕様です)。

  • Perl\パール
  • Apache\アパッチ
  • Jakarta\ジャカルタ
  • BidStars\ビッドスター
  • Apache
  • OPENSOURCE
  • RUBY
  • Python

どれもまぁアレですが、このうち「Perl\パール」が登録されたのが2010年4月9日。また「Apache\アパッチ」は2010年5月14日に拒絶されています。そしてそれ以外の6件については現在審議中。細かく見ていませんが、多分特許庁の返答待ちです。




とりあえずは静観。

素人の僕が口出しをするまでもなく、本家「Perl」の方もプロの方がすすめてらっしゃるので、とりあえずは静観だなぁと言う感じです。外野がやいやい言うことでもないですし。ただもし何らかの協力要請があれば、コミュニティは意見提出などで協力すべきだと思いますし、素人・玄人関係なく取り組むべきなのかもと思います。


商標の世界は、仕組みだけでなく解釈や利害や関係性が入り組んでて本当に面倒なのですよね。。
友人の受け売りではありますけども。