アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない (Bunshun Paperbacks) 町山 智浩 文藝春秋 2008-10-09 売り上げランキング : 253 おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
映画評論家、町山智浩さんによるアメリカ本。
以前この本を読んだ同居人に対して僕が、ブッシュを選んだアメリカ人には責任がある、
今さらブッシュ一人が悪かったというのは責任逃れだ…と発言して喧嘩になったんだけど、
(随分とくだらない理由で喧嘩してるよね…)
そのとき同居人はこの本を読んでいて、僕は未読だった。
で、改めてこの本を読んでみて思ったことは、ブッシュが最低なのはまぁ当然のこととして、
それを選挙で選んでしまった(それも2回も!)アメリカ人は、
世界に対して責任を感じる必要があるなと思った。
それはもちろん、テロの標的になって当然とかいう話では全くなくて、
次の大統領はきちんと選び、きちんと尻ぬぐいをさせろ、と言う意味なのだけど。
本書は、体裁もペーパーブックと言うこともあってそれほど大真面目に読むというものではなく、
それ故に本書の記述を100%鵜呑みにするのもどうかとは思う。
(鵜呑みにしたくない気持ちも含めて)
ただ、論評のベースとして記載されているデータについては、
ある程度ソースも明らかにされ具体的な数字が上げられているので、信用してもいいかと。
以下、読んでいて気になった点を抜粋してみる。
“キリスト教原理主義”はヤバイ
「アメリカ人の45%が進化論やビッグバンによる宇宙の起源を信じていない」(P.25)と言う話は、以前もネットで話題になっていたような記憶がある。それを読んだ当時は、ただ単純に、
ああーアメリカ人って馬鹿なんだなと思っただけだったのだけど、
実際はそんな単純な話ではなくて、そのベースに、
「聖書に書いてあることだけを信じればよい(書いていないことは間違い)」
という考えの“キリスト教原理主義”があると言うことを知ってちょっと引いた。
福音派ってこういう系統の人たちのことを言うのね…
しかも、そういう系統の人たちがブッシュの支持層であるということは知っていたけど、
ここまで深く政治に絡んでいるとは思わなかった。
「絶対禁欲教育」とかいうアホな政策に8年間で10億ドルですってよ!奥さん。
中絶は禁止だから、コンドームの使い方も教えないそうで。なんだかなぁ。
アメリカの健康保険はヤバイ
アメリカには公的な年金、公的な健康保険は無いそうです。年金は企業それぞれが独自に運用して実施する、
健康保険は民間のものに加入し、それに対して企業が援助するという形になっていると。
道理で、組織ごとの年金がしっかりしているわけだ。
しかし「しっかりしている」と言う印象は、単純にそういうものしか見えないからで、
実際にはウォルマートみたいな悲惨な話もあるわけだし、
しかも、保険会社が支払いを許可しなければ治療を受けられないとか…
もちろん保険会社は福祉どうこうじゃなくて利潤追求のためにやってるわけで、
そんなことで人間性が左右される社会って一体…
今さら「国民皆保険」を策定することが正解かどうかはよく解らないけど、
日本の行政を見ていてダメだなぁと感じていたとしても、
その存在によって随分と国民生活は助かっているんだなぁと実感した。
本当に政府は何もしてくれないんだなぁ。
スティーブン・コルベアは最高に面白かった
コルベアの晩餐会でのブッシュこき下ろしは笑った。その模様は以下。
町山さんご自身による和訳はこちら。
ホワイトハウス晩餐会でS・コルベアがブッシュをホメ殺し! – ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記
そして最後に、政治記者として生涯を捧げたヘレン・トーマスさんの質問で終わる。
「で、イラクに戦争を仕掛けた理由は何?」
ブッシュを選んだアメリカ人には本当に絶望するけれども、
アメリカ人全てがおかしいのではなくて、市井にはきちんとした人も多くいるんだと。
でも…そう考えると、民主主義による多数決ってのは、
一部の人間が多くの馬鹿な人間を操って、まともな意見を封殺するための制度、
という風にも取れるなぁ。まぁ勘ぐりすぎ何でしょうけどね。
日本のマスコミやコメンテーターもこれくらいの知性でもってやってくれたら、
僕は間違いなく賞賛するのになー
日本も人のこと言えないけど、
アメリカはアメリカの良いところを生かし切れてないよな。
ミクロで見ると、凄く良いこともたくさんある(多くの文化や人種が融合しているとかね)のに、
それを実際に動かしてみるとこうなっちゃう。
やっぱり、分割するしかないんじゃねとか思っちゃうな…
南部切り離したらもっとアメリカは知性的になると思うんだよなー
ああ、あくまでこの本を読んだ上での感想ですけどね。やれやれだ。