とある昆虫研究者のメモ : 虫屋は注意友人Tよりメールをもらった。最近、ナイフを所持していて警察に連行されたらしい。
(中略)
ともあれ、私は今回の話を聞いて二つの教訓を得た。
1.草を刈るときにはナイフやカッターは危険なのでカマにする。
2.職務質問を受けやすいような風貌にならないように気をつける。
※Tはピアノを弾く紳士ではあるが格闘技の心得があり、戦闘力の高さが滲み出ている。私のようにポニョポニョしていれば職質も受けないだろう。実際、受けたことないしな。
実際に職務質問をされている場面で理屈こねても仕方ないんだろうけど、
状況があるからには一応知っておきたいということで。
僕も昔、十徳ナイフをそれこそ意味無く持ち歩いてたからなぁ。
(護身というより、ちょっとしたときに便利だったので)
とりあえず参考になりそうなページはこの辺かな?
銃刀法の正しい理解我々のようにナイフはじめ刃物類を集めたり持ち歩いたりする者は、いちおう、銃砲刀剣類所持等取締法という法律によってその「所持」や「携帯」が規制されていることを理解しておく必要がある。刃物・ナイフに関連する条項を下に抜粋してあるが、法律の文章は普通の人間が読んでも分からないように出来ているので、総理府令などの規定も参照しつつ、要するに何を言っているのかを解説しておこう。
ざっくり読んで、刃を持つ道具にも様々な分類があるのを初めて知った。
まとめてある上記ページをさらにまとめると、次の3つ。
- 刀剣類
- 刀・剣・槍・なぎなたで刃渡り15センチ以上のもの、あいくち、それに「45度以上に自動的に開刃する装置を有する飛び出しナイフ」
- 模造刀剣類
- 金属製であって、刀・剣・槍・なぎなたもしくはあいくちに著しく類似する形態を有するもの、または飛び出しナイフに著しく類似する形態及び構造を有するもの
- 刃物
- 人畜を殺傷する能力を持つ片刃または両刃の鋼質性の用具で刀剣類以外のもの
このうち、刀剣、模造刀剣に関しては手にする機会はあんまり無いし、
携帯する上でそれが危険だと判断されるとは思わなかった…なんてことはありそうにないので、
とりあえず省略。
問題はやっぱり、刃物、だろうね。
刃物の携帯については、ページ内で書かれているとおり、
銃砲刀剣類所持等取締法の第二十二条において以下のように規定されている。
銃砲刀剣類所持等取締法
- 第二十二条
- 何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが六センチメートルをこえる刃物を携帯してはならない。ただし、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが八センチメートル以下のはさみ若しくは折りたたみ式のナイフ又はこれらの刃物以外の刃物で、政令で定める種類又は形状のものについては、この限りでない。
要するに、刃渡り6センチを超える刃物は基本的に携帯不可。
携帯がOKなのはハサミなど政令で携帯の許可が認められているものか、
業務その他正当な理由がある場合。
政令については、銃砲刀剣類所持等取締法施行令の中で以下のように規定されている。
銃砲刀剣類所持等取締法施行令
- 第九条
- 法第二十二条 ただし書の政令で定める種類又は形状の刃物は、次の各号に掲げるものとする。
- 刃体の先端部が著しく鋭く、かつ、刃が鋭利なはさみ以外のはさみ
- 折りたたみ式のナイフであつて、刃体の幅が一・五センチメートルを、刃体の厚みが〇・二五センチメートルをそれぞれこえず、かつ、開刃した刃体をさやに固定させる装置を有しないもの
- 法第二十二条 の内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが八センチメートル以下のくだものナイフであつて、刃体の厚みが〇・一五センチメートルをこえず、かつ、刃体の先端部が丸みを帯びているもの
- 法第二十二条 の内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが七センチメートル以下の切出しであつて、刃体の幅が二センチメートルを、刃体の厚みが〇・二センチメートルをそれぞれこえないもの
- 刃体の先端部が著しく鋭く、かつ、刃が鋭利なはさみ以外のはさみ
んー刃の幅、厚みについて結構細かく規定されているみたい。
そんなの全く意識したこと無かったけど。
まぁしかし大体、凶器とツールの区分位になってるかなーと思う。
そんなに幅広のナイフなんか普通持ち歩かないしなぁ。
少なくとも最初のエントリの中でTさんが持っていた刃渡り6.4cm十徳ナイフは、
銃刀法に関する違反には当たりそうにない。
ただ前述の『銃刀法の正しい理解 』のページには、
軽犯罪法第1条の2には「正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他、人の生命を害し、または人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者は拘留または科料に処す」とあって、刃物の長さに関わりなく拘留の対象になる。見せびらかして人に恐怖を与えてもダメだし、だからといって隠して持っていてもダメということである。
とあって、警官の発言からもこの適用、ということになるっぽい。
軽犯罪法
- 第一条
- 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
- 正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者
うーん。また随分適用範囲の広い条項だなぁ…
これと、銃刀法の第二十四条第二項とを合わせるとTさんの状況になるかなと。
銃砲刀剣類所持等取締法
- 第二十四条の二
- 警察官は、銃砲刀剣類等を携帯し、又は運搬していると疑うに足りる相当な理由のある者が、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して他人の生命又は身体に危害を及ぼすおそれがあると認められる場合においては、銃砲刀剣類等であると疑われる物を提示させ、又はそれが隠されていると疑われる物を開示させて調べることができる。
- 警察官は、銃砲刀剣類等を携帯し、又は運搬している者が、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して他人の生命又は身体に危害を及ぼすおそれがあると認められる場合において、その危害を防止するため必要があるときは、これを提出させて一時保管することができる。
だからといって、危害を及ぼすおそれがあるかっていうと…微妙だなぁ。
では次に、銃刀法でも軽犯罪法でも書いてある『正当な理由』ってのは、
どんな理由ならいいのか?
法律ではわかりやすい形では書かれていないけれども、
銃砲刀剣類所持等取締法の第三条第一項がそれに当たるんじゃないかなという感じ。
読んだ限りでは、『銃刀法の正しい理解 』のページの方の解釈、
「正当な理由」とは、「通常人の常識で理解できる正しい理由」という意味だそうで、「誰かを殺そうと思って」とか「護身用」とか「ただ何となく」とかは正当な理由とは認められない。釣やキャンプで使うためとか、ナイフを店で購入して家に持ち帰るとか、修理のため店に持っていくとかは、一応、正当な理由になる。が、むき出しで持ち歩けば怪しまれるのは当然で、人に恐怖を与えたり警察官に疑われたりしないよう梱包して持ち歩くのが無難である。
このあたりが妥当な感じかなーと思う。
つまり買った用途ではなくて、今まさに携帯している理由って感じ。
Tさんの『草を切って採取するため』というのは…うーん。
学術目的であることが証明できればなんの問題もないんじゃないかという気がするし、
であるにもかかわらず、自らの非を認める書類に署名させられたことは、
正直言って不当じゃないかなと思うけれども(正当であるかどうかが不明確なのに)、
要するに…マイナーであって証明が明らかでない、ということなのかなぁとか。
そんなんなぁ。胸先三寸じゃんなぁ。
例えばその警察官が草の採取に詳しかったら問題なしっぽいもんなぁ。
こんなんでいいのかしら。
ちなみに、政令に関してはこんな記事もあった。
ダガーナイフ所持禁止へ…46年ぶり刀剣類規定を見直し : 秋葉原無差別殺傷 : 特集 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)通行人ら17人が死傷した東京・秋葉原の無差別殺傷事件を受け、警察庁は17日、銃刀法を改正し、ダガーナイフなど殺傷能力が高い両刃の刃物の所持を禁止する方針を明らかにした。
法律を読んだ後でこの記事を読むと、
刀剣と刃物の区分を混同してる(ないしは混同しかねない書き方をしている)気がするけど、
まぁともかく今まで刃物に分類されていたものも、刀剣に分類することで携帯を禁じる、
ということになるかもしれないということ。
警察庁の方でも、法律の運用だけで規制するのには限界があると思ってるのかもな。
そもそも予防は警察の仕事ではない気もするしね…
なんにせよ、法律では結構きっちり決まってるんだなと初めて知りました。
十徳ナイフという視点で言うと、あると便利な場面もあるんだけどね。
それでも、それは違法ですよって言われるんだったら…持たなくなるか。
鎌はさすがにないにしても、ハサミとか。
参考資料
銃砲刀剣類所持等取締法銃砲刀剣類所持等取締法施行令
軽犯罪法
銃刀法の正しい理解