手のひらの中のアジア 山本 弘 アメーバブックス 2007-09 by G-Tools |
どこかで見掛けて、
自転車、旅行、アジア、これは買わなくちゃならない!
と思って、手にした一冊。
まぁ手にしたと言っても、Amazonだけど。
読後の率直な感想は、『残念』。
表紙には、中国?東南アジアの地図、
本を開いてすぐの所には、旅行を始めてから現在までの旅程が細かく記載されている。
そういうことから、てっきり、旅行全体をまとめた本だろう、と思っていたのだけど、
実際に中で描かれているのは、
旅行に出ることに決めたきっかけと、
ラオス/ムアンシンでの美しい想い出、その部分だけ。
読む前に僕が期待しすぎたのかもしれないけど、正直、物足りなかった。
ただ、ムアンシンでの、
全てが穏やかに過ぎていく、美しく満ち足りた生活は、
筆者の言葉と写真から十二分に伝わってきた。
程度は全く違うけれども、同じようなことを感じたことはある。
自転車で苦労しながら、色んなものを見て通った道のりを、
電車で一気に戻った経験もある。
だから、その辺の心情はよく分かって、共感したのだけど、
…どうも描写が『点的』で、感情移入しにくい。
これ、当事者は、点と点の間を記憶で埋められるからあんまり気にしないことなのだけど、
第三者から見ると、よく分からない。
そう、日記をそのまま載せちゃった感じ…それはあくまでメモであって、
本にするならきちんと言葉で埋めないと…
そう思ってよく見たら、出版がアメーバブックス。
要するに、山本弘さんの同名ブログ、
『手のひらの中のアジア』の書籍化だったわけだ。
うー。
そう考えると、特にこういう旅行記に関して、
ブログをそのまんま書籍化するのは…ちょっと無理があるかなーと思った。
ブログなら、更新毎に細切れ別エピソードでも楽しく読めるけど、
書籍っていう、一気に読めちゃう媒体では、
その辺の編集が上手くないと、どうにも興をそがれてしまうような。
やっぱり、作家ってのは凄いんだなぁ、と改めて思ったよ。
単に、編集の手抜きって話もあるけどね。
もちろん、本の感想がどうあれ、
山本さんがしている旅行の素晴らしさに変わりはなく、
ブログを読むきっかけとしてとか、
山本さんがどんな人なのか、を知るためにとかという意味であれば、
十分に面白い。
あと、同じようなことを考えて迷っている人にも。
最後に、もうひとつ、苦言というかなんというか。
該当ブログでは、書籍化に辺り使用されたエントリが削除されてます。
こんな感じ。↓
このたび、『手のひらの中のアジア』書籍化に伴い、本の内容と重複するブログの関連記事を、誠に勝手ながら削除させていただきました。これまで気軽に読んでいただいていた読者の皆様や、これから読もうとしていただいていた皆様には大変申し訳ございませんが、この本を一人でも多くの方々に読んでいただきたいとの思いもあって、そのようにさせていただきました。皆様のご理解をいただけますよう、よろしくお願い申し上げます。
どうだろう、これ。
版権の問題とか、アメーバの意向とか色々あると思うけども。
書いてある文章を、書いてあるとおりに受け取るとすると、
この部分は金出して本買って読んでくれって、ことだよね。
それはないんじゃないかなぁ。
ハッキリ言って、あさましい。
あさましついでに言うと、
僕は、ムアンシンで検索を掛けたのだけど、
もし記事を削除してしまわなかったら、もっと多くの検索が掛かり、
多分もっと多くの人がこの本の存在知って、
中には買ってくれる人もいると思う。
自分の記録として残しておいたものを、
書籍化したからと言って削除するのは…どうなんだろう。
事情は色々あるんだろうけど、賛同できないな。
やってること自体は素晴らしいのに、
本の出来や、書籍化に当たってのブログの対応などで、
残念なことが多くて、結果として全体を損なってしまってる…
そんな印象の『本』でした。
やっぱり、残念だなぁ。