慰安婦の件…。

最近、『反自民』という政局的な判断に基づいて、
この手のセンシティブな話題に手を出す政治家が多く、
それだけでもうんざりなんだが、
それに加えて、殆ど裏も取れてないのに、ただ『反自民』というだけで、
対局に論陣を張ろうとしている。
いくら選挙年だからってそれはやり過ぎだろ。


以前も書いたとおり、
『日本軍が朝鮮人女性を強制連行して、慰安婦として従軍させた』
この文章の通りの事実は存在しない。

昨日も、社民党の福島瑞穂党首が、
従軍慰安婦制度に軍が関与しているのは書類や資料などから明らかであり、安倍総理大臣は、従軍慰安婦問題の重大さや悲惨さを軽減しようとしているのではないか
(WEB魚拓 » (cache) NHKニュース: 社民 首相の慰安婦発言を批判
と発言しているが、実際にはそのような資料など発表された試しが無く、
何の資料に基づいて発言しているのか曖昧なまま、
ただ、安倍首相を批判しているだけだ。


安倍首相だって、まぁ微妙なところはあるから、彼を批判するのは自由だけど、
そのことの材料に、こういうセンシティブなことを平気で持ち出す、
その神経が分からない。

前述したとおり、この問題には、いくつかの確定していない要素があり、
先ほどの文章を分解すると、以下のようになる。
『日本軍が朝鮮人女性を強制連行して、慰安婦として従軍させた』
  1. 日本軍が → 日本軍は関与していたのか?
  2. 朝鮮人女性を → 朝鮮人だけか?
  3. 強制連行して → 強制連行はあったのか?
  4. 慰安婦として → 慰安婦は奴隷のような存在だったのか?
  5. 従軍させた → 軍の一部だったのか?
このうち、1に関しては資料がない。
その上、斡旋業者を取り締まる資料まである始末。
『日本軍が慰安婦を希望していた』と言う文脈における『関与』であるならば、
それはあった、と言わざるを得ないだろう。
しかし、批判文脈は、当然のことながら、強制連行への関与を念頭に置いているわけで、
そういう意味合いでの関与はちっとも裏付けられていない。

2に関しては、慰安婦としての割合は、日本人の方が遙かに多かったという話があるが、
ソースはないので何とも言えない。
しかし、慰安婦として働いたのが朝鮮人だけではなかったと言うことは確かだ。

3に関しては、拉致に近い連行はあったかもしれない。
しかし、それは以前からすり込まれているような、軍が出動して連行するようなことではなく、
斡旋業者が行ったもの。
これもまたソースが無いけれども、朝鮮人斡旋業者もかなりの数いたと言われる。
結果として、軍の希望に添って行われたという点で、結果的な責任はあるだろうが、
実際に、“連行”を行ったのは、朝鮮人自身を含む、
多くの斡旋業者である、と言う事実がここにある。

4については、少なくとも戦線が安定している間は、
さほど苦しくなかったと言われている。
そういえば、ヨーロッパ映画なんかでの売春婦の描写は、
悲惨とはかけ離れていて、むしろ、明るくさえある。
とはいえ、これは個々の状況もあるわけだし、
経済的事情などにより、本人自身の希望に依らない場合には、苦痛を極めただろう。
そう言う意味で、全体に対して、楽だとか、優雅だとか、逆に、悲惨だとか、苦しいとか、
そういうことを言うのは適切ではないと思う。
そんなのは、慰安婦を見ているとは言えない。

5については、軍の組織だったと言わざるを得ない。
これに関しては、資料が残っており、その中で、
漢口攻略後、漢口への一般邦人の進出は制限されていたが、「軍慰安所」の開設のために進出する業者は例外とされ、優先的な進出が認められており、39年初頭には約20件の「軍慰安所」が開設されたことが知られている(政府公表資料による)。
と書かれており、民間の業者を利用して設置したと読める。
そう言う意味で、対女性という視点で見て、日本にも責任があるということは添えておかねばならない。


以上の要素だけを考えてみても、
福島瑞穂社会党党首が、いかに乱暴な論理展開しているかよく分かると思う。
真実は、『日本は悪だ』と『日本は悪くない』の間にあって、
政局次第で変えて良いものなんかじゃない。


従軍慰安婦に対して、補償を行った組織、
女性のためのアジア平和国民基金(AWF)の資料にも、
なかなか面白い資料がある。

女性のためのアジア平和国民基金(アジア女性基金) – 資料

この組織は、Wikipediaで、
この組織は元慰安婦を支援することを名目にした、たんなる反日組織ではないか、とする見方もある
とあるとおり、やってることは、
とりあえず金払って、これで問題は終わりにしようぜ的強引感があるんで、
両陣営からいい目で見られていないようなのだけど、
ただ、ここの資料は面白い。


従軍慰安婦の問題は、とかく、強制連行に焦点が置かれがちだけど、
日本軍が負けたという事実を考えると、本来見るべきことは、
その後、彼女らはどうなったのか?
形式上彼女らの雇い主であり、経営者であった民間業者はどういう行動を取ったのか?

彼女らがその職業に就くことになったきっかけはともかく、
日本軍の存在によって、彼女らがその後の悲惨な状況に陥ったことは事実なわけで、
戦争だから売春婦を作る、という、男性社会の身勝手な行動を反省し、
結果として、悲惨な状況に陥った方に補償をするのは間違いではないと、僕は思う。


ただまぁ、それを理解した上で。


この問題は、そう言うトータルな、様々な要素があって、
1つのものになっているわけで、政治屋が軽々しく口にして良い問題じゃない。
この問題を絶望的にこじらせた、
朝日新聞(吉田清治)と河野洋平についても言えるけど、
資料も提出できず、詳細もよくわかんないんなら、黙ってろと。

そういう、軽々しい態度に、怒りを覚える。



追記(2007/03/09)


えーこちらのまとめが圧倒的に素晴らしいので、紹介しておきます。

モジモジ君の日記。みたいな。 – 従軍慰安婦問題──何が問題なのか

上の文章を書いてる途中で、思っていたこと、
『っていうか。これじゃ、日本軍に責任無い、とは言えないじゃないか』
『直接、強制連行はしていないけど、それで責任を逃れられるのか?』
というようなことが、まとめられてます。

どうしても認めたくなかったんで、殆どスルーしてるんだけど、
こう綺麗に書かれると、もう認めざるを得ない。

日本には責任あったよな。
(今から謝罪、補償、その他すべきかは別の話)


というわけで、僕は、まとめの文章に賛同しますが、
同時に、それに対する、対外的な圧力のかけ方が不当である、とやはり感じています。
だって、国家の責任としては終わってんでしょ。
謝罪し、補償した。

国家間では既に条約によって終結している上に(本当はこれで終わり)、
個別に補償も行っているのに、何が気に入らないのだろうか。
こうして定期的にネタにされながら、
永遠に頭を下げ続けろというのだろうか。



この問題は、本当は、もっと大きい。

朝鮮人だけじゃなく、日本人や、その他多くの国の人も含めた、
戦争中の国の戦争のやり方に関連した、人権的な問題であって、
それはむしろ、朝鮮併合とも関係のない話。
朝鮮人だけじゃなく、日本軍が、全女性に対して行った非人道的な行いであると言える。
日本はそれを猛省し、再び起こさないくらいのことを言うべき。

で、逆に言えば、少なくともそれに関しては、
朝鮮半島の人ごめんなさい、とか言う必要はなくて(被害者にだけ、謝罪すればよいのだ)、
活動家なんか無視しちゃって良くて、
個人それぞれに誠意を持って接する。それだけ。


今、認めたくないなぁと思ってたことを、
認めてしまって、改めて読み返すと、
福島瑞穂も、安倍晋三も、どっちもどっちだなぁと思う。

今更こんなところで、
関係者不在にもかかわらず、
政局焦点だけで、こういう人権的な問題をやいやいやってるとことが、
激しく下品だ、ってことだ。

僕が被害者なら、こんなネタのされ方、ちっとも嬉しくないね。


日本軍は、慰安婦を『設備』くらいにしか思っていなくて、
そのことに責任があると思うが、
政治屋連中も、結局、慰安婦を『話題』『材料』くらいにしか
思ってないんだろうな。

酷い話だ。



追記(2007/03/09)


どうもタイトルが違うなぁと思ったので変えました。

本当は、世論ではこういう風に流れて、ニュースだけ追うと、
安易な方に流れがちだけど、
ネット上には、様々な資料も議論もあって、
少なくとも知った顔してる政治家よりは詳しく知ることが出来ると思いますよ、
ネットに触れるならそれくらいしていきましょうよ、

そんなことを書こうと思ってたんですが、
いつの間にか全く変わってしまいました。
(しかも、その論理も他人のエントリ一発で翻す始末)

まぁしかし、大事なのは今の僕の正誤ではなくて、
少なくとも僕が、今後、この問題に対してどういうスタンスを取るかなので、
その辺含めて、エントリ、ということにしたいと思います。


所詮このブログは、僕の思考の過程、ですから。