誰が悪くて ── どうすれば良かったのか?:F1 アメリカGP

スポーツナビ | ニュース | 入場券払い戻しに応じる 米国GPでミシュラン社
【インディアナポリス(米インディアナ州)28日AP=共同】19日に行われた自動車F1シリーズ第9戦、米国グランプリ(GP)決勝で、7チーム14台が棄権したことに関連し、ミシュラン社は28日、入場券の払い戻しに応じ、その費用を負担するとサーキット側に申し出た。
 同社は併せて、来年の入場券2万枚を購入し、払い戻し希望者に贈呈するという。
 米国GPは、10チーム20台のうち、同社のタイヤを使用する7チーム14台が、レース中にタイヤが損傷する危険性が高いとの理由で、1周目のスタートを切らず意図的に棄権。このため、観客がコースに物を投げ入れるなど、混乱を招いた。


まぁ、当然の措置だろう。
FIA、ミシュラン、コンストラクター、
いろいろな組織の間で政治的な軋轢が起きているけれども、
こと、ファンとの間では、問題は非常にクリアだ。
少なくとも ── もしどんな非常識な決裁が下りても ── ファンは悪くない。
そして、問題のすべての元凶はミシュランであることも疑いようが無く、
もし14台が走行したとしても台無しになったであろうことは想像に難しくないわけで、
ミシュランは、ファンに対してだけは、真摯に対応すべきである。




ところで、少し視点を動かしてみると、
この事件については、未だに多くの問題が残されていることが分かる。
レース以来のこれに関する記事を、Racing-Live.comからピックアップしてみた。


ミシュラン、モズレーに責任を転嫁[21/06/05 – 20:04]
「我々は現実的で可能な代案を提示した」

モズレー、批判を一蹴[28/06/05 – 21:24]
アメリカGPの論争は続く

政治抗争は続く[29/06/05 – 11:47]
FIA、チームとミシュランが対立


こうやって見出しだけ見てみるだけでも、相当にきな臭くて醜いことが分かる。
問題を、アメリカGPに限って言えば、悪いのは明らかにミシュランなのだが、
ここまで問題がこじれてしまっている、その原因を突き詰めていくと、
FIAのこれまでのやり方も結構ひどいことが分かる。
言ってみれば、『ここぞとばかりに責めるFIA』といったところか。
で、アメリカGPに限って言えば、ミシュランも自分が悪いことは分かっているのだけど、
(その上で必死に政治的問題にすり替えようとしているようにも見える)
問題は、ミシュランユーザの行動をどう規定するか、ということになるだろう。

というのも、レースを壊したという点でおいては、
チームも、ミシュランの『共犯者』ともいえる。
アメリカGP直後の雑感でも書いたけれども、チームはそれぞれが独自に、
グランプリを何とか成り立たせる方法を考えても良かったのではないのか?と思うのだ。

しかし、視点を変えて考えてみると、チームはある意味で『被害者』といえなくもない。
広告その他の関係から、とにかく出場して、ポイントを稼がなくては、
彼らの活動は維持できないわけである。
どんな理由があったにせよ、1レース分、無駄にせざるを得なかったのは事実だし、
その原因がミシュランタイヤであったこともまた、明らかだからだ。


まぁ、逆に言えば、チームに対してどのような処分をしてもよい、
すべてはFIAの打算ひとつというワケなのだが
(その割にFIAは裁かれないわけで不公平極まりないが)
まぁ、ただでさえ、FIAおよび興行権を握るエクレストンと、
チームの間に問題があるわけで、それを悪化させることはとりあえず好ましくない。

そういうわけで、いくつかの点で有罪との判定を下しながらも、
実際のペナルティに関しては9/14まで決定を保留する、という曖昧な裁定となった。
玉虫色なのは、何も日本に限ったことではないんである。

ミシュランユーザーに対するペナルティ決定を延期[30/06/05 – 01:17]
ファンに対する補償を


チームへの具体的な容疑および、世界モータースポーツ評議会(FIA)の裁決は以下の通り。
1. 適切なタイヤを所持することを確認しなかったこと(有罪)
2. レースでスタートすることを不当に拒否したこと(有罪)
3. スピード制限に従ってレースをすることを拒否したこと(無罪)
4. またデモを図ったこと(無罪)
5. スチュワードに報告しそこねたこと(無罪)

つまり、明らかに過失(回避できたはずの部分)、背反といえる部分は有罪。
それ以外は、無罪。

そして、モズレーFIA会長によると、
ファンにどれだけ補償したかによってペナルティーの重さは変わるんだそうだ。
なんだかなぁ。
体の良いポーズにしか見えないけどなぁ。
モニターのこっちにいたファンに対しても補償してくれよ。


で、ミシュランに対しては、最終的に何を言ったかというと、
『難しい点はFIAがタイヤメーカーのミシュランと何の関係もないことだ。そのため、我々はミシュランにペナルティを科す立場にいない』

…。
何の関係もないってこと、あるんだろうか。
供給契約はないかもしれないけど、安全面とか、スポンサーとか、
なんらかの契約はあるんじゃないの…?
改善要求とか、供給の一時停止とかも出来ないんだろうか。
これだけ問題を引き起こしておいて、お咎め無しで良いのか?
ていうか、ミシュランに対するチームの率直な意見てどうなんだろうか。
アメリカGPの時はなんだか、敵の敵は味方的、一致団結感があったけど、
明らかな利害関係があり、
しかもミシュランタイヤの質の悪さを指摘されてきた上でのこれ、
僕が日本人で、ブリヂストンに対して贔屓があるにしても、
これでもまだ、多くのチームにミシュランが指示されるのは解せないなぁ。

フェラーリを倒すために、タイヤを替えるのだとしても、
それがマイナスになってたんじゃ意味ないじゃないか。

うーむ。