「永夜抄」後におきた月を巡るドタバタ劇を描いた東方儚月抄の小説版。「小説版」とは言ってもリライトでは無くて、「漫画版」の「東方儚月抄 ‾Silent Sinner in Blue.」を表のストーリーとするなら、「小説版」の方はその裏のストーリー。表の主人公が霊夢でありレミリアであるならば、裏の主人公は永遠亭の八意永琳であり八雲紫であるという感じです。連載当時複数メディア同時進行で行われた企画だったと言うことでこういう趣向になったのだと思うけれど、なんだか一粒で二度美味しいお得な感じがしてとても楽しめました。


物語は八章で構成されていて、それぞれに視点が変わるという趣向。

  1. 第一話 賢者の追憶 … 八意永琳
  2. 第二話 三千年の玉 … 蓬莱山輝夜
  3. 第三話 浄土の竜宮城 … 綿月豊姫
  4. 第四話 不尽の火 … 藤原妹紅
  5. 第五話 果てしなく低い地上から … 八雲紫
  6. 第六話 愚者の封書 … レイセン
  7. 第七話 半身半義 … 魂魄妖夢
  8. 最終話 二つの望郷 … (三人称)

永琳から始まって輝夜、豊姫と続き、最後は三人称で終わります。

この「東方儚月抄」という物語自体が「物事は見方によって見え方が変わる」という作りをしているので、章ごとに視点が変わることで物語の周りをぐるぐる回りながら眺めている感じになってとても面白いです。で、最後は幻想郷に戻って物語をまとめると。永遠亭の登場人物を中心に各キャラクターの印象が細かく描写されていてとても楽しめました。東方のことをより深く知りたいという方にオススメできます。あ、でも最初に漫画版を読んでからの方が良いかもね。







ちなみに…輝夜の設定について

二次創作の漫画や動画では「ニート」「怠惰」「我が儘」といった描写が多い輝夜ですが、「東方儚月抄」始め公式の設定を見ている限りではそんなダメ人間では無くて、むしろどこまで行っても姫という感じなのですよね。

「東方儚月抄」の中でも、「幻想郷に住んで人間として暮らすのであれば他人の為に働くことが地上民の勤め」という永琳の考えに同調し何か自分もするべきことを探そうと思っているのだけど、永琳に「輝夜は自分のやりたい事だけすればいいのよ。もしやりたい事がなければ、やりたい事を探すことを仕事にしなさい」なんて言われています。決して自らサボっているっていう風では無いのね。もちろん月の民的な上から目線の傲慢な感じがゼロかというとそうではないのですけど、永夜抄があり、永遠亭に掛けていた永遠の魔法を解いてから、徐々に人間として馴染んで行っているという感じなのかも。

ネタとして「輝夜はニート」「ゲームばかりしている」「永琳には匙を投げられている」というような設定で展開される話も好きですが(公式設定が絶対だとは思わないし)、どちらかというとのほほんとして穏やかで、時々無意識に人を傷つけてしまうような、そういう「姫」っぽい輝夜の方が僕は好きなのです。…ということを改めて感じました。