知ってはいたけどきちんと調べてはいなかったので、資料をまとめておきます。


きっかけはこの辺。

965 名前:Trader@Live![sage] 投稿日:2009/11/05(木) 20:09:32 ID:S02l4mAF
19 :名無しさん@十周年:2009/11/05(木) 18:17:27 ID:rjPY5biD0
稲田 「総理、外国人参政権は憲法に違反してますが」

鳩山 「確かに法改正が必要にな・・・・え?憲法?・・・憲法?15条?・・・」


>これ、マジなの?w  
  


   >>965
   マジ。

   鳩山はその質問を受けて、最初は「法律が・・・法改正が・・・」って言ってて
   「憲法!」と指摘されたらドモって下向いて焦りまくってた。
   もしも憲法改正にも言及してしまったら、別の問題が発生するからなぁ。
   稲田さんが「EUの国々は外国人参政権実現のために憲法改正をした」って
   ああいう公の場ではっきり述べたのはとても重要でよい事だったと思います。

   ちなみにその後鳩山は「憲法にまで触れなくてもなんとか出来るんじゃないかという方向を模索していく」みたいなことを言ってたよ。
 
参政権とは、選挙権と被選挙権に分けられます。


被選挙権について

被選挙権について語られるときの憲法とは、憲法15条のことを指します。

日本国憲法

日本国憲法第15条

  1. 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。

  2. すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。

  3. 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。

  4. すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。



国政であれ地方であれ議員は公務員なので、この第15条による規定の下にあります。特に第1項はこの件に関して直接的に影響があるかと。そういうわけで、国民ではない人間に被選挙権を与えるためには、憲法を改正する必要があります。わかりやすいですね。



ところでこの「国民」というのはどういう人のことを指すのでしょうか?社会通念的にはその国の国籍を有している人を国民と呼ぶわけですが、その国に住んでいる、または何らかの形で永住権を獲得している人間をそれに含めるとしても、論としては間違いとは言えないでしょう。

国民 - Wikipedia

憲法では以下のように規定されています。

日本国憲法第10条

  1. 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。


憲法ではなく、法律で決めてるわけですね。



で、実際に国民とは何でどう定義されているかというと、それは国籍法で定められています。

国籍法

国籍法第1条

  1. 日本国民たる要件は、この法律の定めるところによる。



というわけで現在のところ、日本の「国民」は日本国籍を持つ者のことを指します。

後に続く条文を見てもここ変えると色んなところで大変なことになりそう(永住権やら帰化やら色んなシステムを変えないといけなさそう)なので、さすがにこれを変えるのは難しいんじゃないかと思いますが、事実に関して言うと、乱暴な話、国籍を持つ者に加えて永住権を取得している外国人を国民に含めるとか、一部の永住権を持つ者に国籍を与えるとか法律を変えてしまえば、憲法を改正しなくても参政権を持つことが許されることになります。判例はあくまで、法律で定められた国民についての話ですから、矛盾しません。そこまでやるかは知りませんけど。




選挙権について

一方、選挙権の方はどうなんでしょうか。憲法第15条を再掲します。

日本国憲法第15条

  1. 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。

  2. すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。

  3. 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。

  4. すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。


第3項によると「成年者による普通選挙」とだけあります。国籍については特に指定されていないようです。


国政選挙については、国会について書かれた第4章にこうあります。

日本国憲法第43条

  1. 両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。

  2. 両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。


ここでいう「全国民」とは当然、全ての「国民」という意味でしょうから、そうなるとこれは被選挙権と同じ流れになりますね。



一方で、地方の場合はどうでしょうか。地方自治について定められた第8章に以下の記述があります。

日本国憲法第93条

  1. 地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。

  2. 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する


ここでは「国民」という用語は出てきません。代わりに「地方公共団体の住民」という用語になっています。住民って一体何なのか?これは今度は地方自治法で定められています。

地方自治法

地方自治法第11条

  1. 日本国民たる普通地方公共団体の住民は、この法律の定めるところにより、その属する普通地方公共団体の選挙に参与する権利を有する。

地方自治法第18条

  1. 日本国民たる年齢満二十年以上の者で引き続き三箇月以上市町村の区域内に住所を有するものは、別に法律の定めるところにより、その属する普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する。


ここで再び「国民」の登場です。選挙権を有する住民は日本国民でなければならないと書かれています。というわけで、ここで被選挙権および国政選挙の選挙権と同じ場所に行き着くわけです。





なお、以上のことを補足する目的で、最高裁判所の次の判例が用いられていますが…

判例検索システム>検索結果詳細画面

選挙人名簿不登録処分に対する異議の申出却下決定取消

裁判要旨

日本国民たる住民に限り地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有するものとした地方自治法一一条、一八条、公職選挙法九条二項は、憲法一五条一項、九三条二項に違反しない。

最高裁判所の判断はあくまで「選挙権のない人間は選挙人名簿に記載できない」ということを確認しているだけじゃないの?とも思えます。全文をざっくり解釈すると“「住民」のとこだけ読むとそうも解釈できるけど、地方自治法が違憲でない限りそれは有効であって維持すべきであり、住民とはすなわち国民のことである”といった感じでしょうかね。逆に言えば地方自治法さえ変えちゃえば良いってことであって、必ずしも外国人参政権(この場合選挙権)そのものを否定しているわけでは無さそうです。




良いか悪いかはわかりませんが、日本は法治国家ですから。


行政サービスの対価としての税金を納めているから国民だろとか、参政権付与されるべきとかそういう話じゃないんですね。法律があるならその法律に基づいて議論しないといけないんで。哲学的に道義的に歴史的にどんなに正しくても、法律上正しくなかったら実現はしませんから。そしてもちろん法律で決まっていることには理由があるわけですから、法律を変えるのならそこベースで議論しないと始まらないわけですね。被選挙権および国政選挙の選挙権の場合、憲法を改正しないなら国籍法をザルにする必要があるし、国籍法を守るなら憲法を改正する必要がありますからね。難しいでしょう。地方選挙の選挙権については、実現させるのはそう難しくないかも知れませんが、いずれにせよ法律の大幅な改正が必要です。




まとめ。

以下のどれかを変更すれば法的に認められる。
被選挙権の場合
憲法 → 国籍法
選挙権(国政)の場合
憲法 → 国籍法
選挙権(地方)の場合
憲法 → 地方自治法 → 国籍法



外国人参政権という話は、結局のところそういう話みたいです。






追記(3:33)

参政権として被選挙権しか考慮していなかったことに気づいたので、選挙権について追記するとともに全体を改訂した。



追記(2009/11/14)

はてなブックマークでリアクションをいただいたのでなにがしか。

bogus-simotukare いっそのこと、憲法には「国民の権利」しか書いてないから、外国人の人権なんかどうでもいいんだよと言えばいいのに(もちろん冗談、皮肉だが)/学説とか判例とかいろいろな物を無視しすぎだろ 2009/11/14

学説(笑)

いや失礼。


そういう「業界」があるのはわかってますが、このエントリのポイントには無関係ですよ。どのような学説があっても、最後に必要なのは法律じゃないんでしょうかね?別に今後どうすべきということを考えて書いたつもりはありませんし、学会や学者を軽視するつもりもさらさらありませんが、議論したければご自由にどうぞやってください、という感じです。学説で外国人参政権実現のためのプロセスがどこか変わると言うんなら調べますけどね。学説に支持されて行き着く先が決定されたとしても、最後は政治的手続きが必要になりますよね。

このエントリのポイントは、何かが行われることになったときにそれがどういう手続きで可能なのかを知っておく、です。ニュースを通した印象では、時の政府が「うん」と言ったら明日から権利が与えられるみたいな感じですが、実際はそういう話ではないですよね。政治家がどんな約束をしても構わないけど、結局はどうしたって法律改正を通らなくちゃいけない。で、実際に法律を見てみると実現は随分大変そう。「明日からやります」みたいなノリで言ってるけどそんなのできんの?そういう違和感の話です。政府の行動を監視するためには、監視する方にも見るポイントの把握が必要だろうと。詳しい人には何を今さらかも知れませんが、一般的な日本国民において、僕らは法律を知らなさすぎるんじゃないでしょうか。そんなことを思います。



なお、どうすべきか?という点についてはこのエントリでは焦点を当てていません。もちろん僕にも個人的な意見はありますが、このエントリには必要ないですし、特にここで書くつもりもありません。各自の議論にお任せします。