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最初の十数頁を読んだ時点での印象は、「伊坂幸太郎的」でした。「伊坂幸太郎的」な物語が「村上春樹的」味付けで書かれている小説だと。

ここで言う「伊坂幸太郎的」の主な特徴は、奇抜だが詳細に練り上げられたプロットに基づくストーリー、あくまで現実社会に立脚させた上でフィクションを加えた世界設定、憂鬱な展開でもどこか健康的な読後感、など。同様に「村上春樹的」の方は、曖昧な比喩表現の多い登場人物の発言、現世界と異世界またその2つを繋ぐものという設定、健康的な設定だがどこか憂鬱な読後感、など。相反する特徴もあるけれど、僕の中では何となくその2つが共存しているような感覚。



そう言えば僕が初めて村上春樹を読んだのは恐らく高校2年生の時。1994年くらい?友達のA君(文字通りAで始まる名字の)が、当時リリースされていた村上春樹の文庫本を全巻譲ってくれて(借りたのではなくくれた)、それを一気に読んだのがきっかけでした。A君とは、Huey Lewis & The Newsが好きということで意気投合した…のだけど、それがなぜ村上春樹を全巻譲ってもらうことに繋がったのかはよく覚えていません。多分、好みが合いそうだからと色んなものを薦めてくれた内の1つだったんだと思いますが、そう考えると僕は彼の期待通りに十分にコミュニケーションできたとは言えなかったかも知れません。あんまりその後村上春樹について語り合ったという記憶がないんですよね。


僕と村上春樹作品との出会いはそんな外部から偶然やってきた出会いだったんですが、中でも『羊をめぐる冒険』を読んだときの衝撃と言ったらありませんでした。

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なんて言ったらいいのかわかりませんが、恐らく当時の自分が自分の人生について閉塞感を感じていて、それはもちろん中二病特有の今やっていることに何の価値があるのだろうとか、このままこの道を歩んでいって何か楽しい人生が送れるのだろうかとか、そういうことだと思うのだけど、いわばそう言う感覚を延々と曖昧な比喩表現で描き続けるのがこの作品(というか、この作品を含む三部作)で、作品内にわかりやすい解答が用意されているわけでもないのになぜか何かを見つけるような、日常のすぐ隣には非日常が音もなく潜んでいるような、そんな気持ちになったのでした。(…というようなことを、A君に語ってあげれば良かったんだと思う、たぶん。)


そういう意味で言うと、この『1Q84』は僕の中では『羊をめぐる冒険』を読んだとき以来の、村上春樹作品からの強い衝撃を感じました。BOOK1の半分くらいまでは、最初に感じた「伊坂幸太郎的」展開を楽しんでいたんですが、次第にそんなことではないと言うことに気付きます。BOOK2に入るとむしろこれは圧倒的に村上春樹の手による作品であるということを実感せざるを得なくなり、繰り返されるテーマと曖昧な表現によってそれについて考え続けることを「強要」されるような感覚。

んーなんなんだろうね、これは。


ただ、読後感は不思議とすっきりしていました。カタルシスのはっきりとした爽快感ではないけれど素直に面白いと言えると思うし、テーマが全て語られることはないけれど、それを掴むためのヒントは余すことなく提供され、最終的な判断を読者が選択できる…そんな印象。むしろその選択とそこに至るまでの思考とを目的にして書かれた小説なのかも知れません。是非、それも含めて楽しみつつ読んで欲しい作品だと思います。