ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書)ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書)
中川淳一郎

光文社 2009-04-17
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初めて本書のタイトルを見かけたとき、これは明らかに煽りだなーと思った。新聞などの特集記事によくありがちな、Webは危険で質が悪く、本当に大事なことを伝えているのは我々だけだ…的な。なのであまり良い印象を持たなかったのだけど、でも同時にどんなことが書かれているのか非常に興味を持ったのも事実で、結局購入して読んでみた。


…あ、全然違った。

煽りということではなく、要するに【タイトルは釣りです】。いや100%釣りっていうわけでもないんだけど、要は、Webユーザーに期待しているサービスや企業の中の人に対する強烈な皮肉というか。確かに、Webユーザーの行動志向ってのはもっと単純で、要するに自分が得するかどうか。それは金銭的な意味でも良いし、精神的な意味でも良いんだけど、とにかく自分が得するかどうかで行動しているのであって、誰かのために役立とうとかある製品を企業に変わって売り込んでやろうとかそんなことを別に思っているわけでもなく。ブログである製品を細かくレビューし熱心に勧めている人だって、別にその製品の売り上げをただ伸ばしたいからってわけではなくて要するにアフリエイトなわけだし、その辺で企業側とは意識の乖離があるよねっていう。


実際のところポジショントークってことになるんだろうけど、確かにマーケティング分野の人の言っていることを聞くと大体はWebのユーザーに期待しすぎてるなと。アメーバニュースの中の人でもある中川さんの書かれているとおり、有象無象のWebユーザーという集団に多くのものを期待したところで基本的にはその期待は裏切られることになるし、なぜかと言えば彼らは思い思いに勝手に行動しているだけだから。ビールのブロガーイベントの話が紹介されていたけれども、確かにね…暇があって、タダで飲めるから行くってだけでしょう。世の中の人の大半は、不況のせいもあって安いからという理由で発泡酒や第三のビールを選択していて、そんな中でプレミアムビールをタダで飲ませてくれるっていうから行くんであって、つうか普段からプレミアムビールを飲んでるような人にそんなところへ出掛けていく暇なんか無いわけで(ニュースサイトなどの取材なら別だけど)、参加者層を絞り込んで思い描くのは勝手だけどまぁそうはならないよね、っていう話で。

もちろん、価格.comやAmazonのように、評価できるレビューもあるけれども、それにしたって読む方が意識して玉石を見極めているから役に立っているんであって、アレ全体に一定以上の質を求めるんならそれは違うよねっていう。ある程度の質のばらつきや見栄えの悪さも、そういうもんだよねって諦めてスルーできない限りああいうサービスを導入するのはねぇ…ちょっと違うかも。多分、神経性胃炎か何かになると思います。


本書は、各社マーケティング担当の方が自信満々に繰り広げるポジショントークや、多くの「Webに期待を寄せるビジネス書」を愛読しているような人にこそ読んでいただきたいと思う。これを読んで、「いやいくら何でもWebってここまでカオスじゃないでしょ」と思ったとしたら、その人は多分Webについてあまりよくわかっていない。Web関連の部署や広告関連の部署にいる方、是非上司にオススメした上で感想を聞いてみたらどうだろう?「だよねw」と苦笑いしてみせるような上司なら多分、Webで何をやるべきか、やるべきでないかをわかってる。本書に書いてあることを余り実感できない、ないしは反感を持つとしたらそれは黄信号。今後苦労することがあるかもしれません。

Webってのは、実社会に比べるとさらにカオスで意味不明な領域。だからこそ面白いと思うんだよね。