思い返してみると「パワハラ体質な上司」って案外少ない

パワハラを受ける人のイラスト(男性)
だからこそのパワハラなんでしょうけど(過半数がそうだったらパワハラという概念自体存在しないだろうし)






今年4月から中小企業が「パワハラ防止法」の対象になるそうです

近年、社会の働き方への関心が高まり、いわゆる「ブラック労働」への目も厳しくなっています。

そんななか、職場における「いじめ」や「嫌がらせ」を防いで、誰もが快適に働ける環境づくりを目指したのが、「パワハラ(パワーハラスメント)防止法(改正労働施策総合推進法)」で、2019年5月に成立しました。

パワハラ防止法は当初は大企業を対象としていましたが、今年4月から中小企業も含まれることになります。日本企業の99.7%が中小企業(小規模企業含む)ですから、多くの人は、4月の施行によって、初めてパワハラ防止法の存在を認識するのではないでしょうか。

取引先に「仕事が雑だよね」はパワハラにあたるか | 企業経営・会計・制度 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース


僕が働いてきたもしくは仕事をしてきた相手はほとんどが中小企業なので(例外としてレストランの経営側の親会社が一部上場大企業ってことはあった)、そういった会社も今年4月からこの「パワーハラスメント防止法」(改正労働施策総合推進法)の対象になるんだなあという感慨があり、また関係が悪くなって辞めたことも何度かあったのでそんな中でパワーハラスメントを受けたことがあったかな、と思い返してみたのですけど……いやあ、案外いないですね。



類型に当てはめて考えてみる

ぼんやり「あれってパワハラになるのかな」という感じで考えるとどれもこれもパワハラに思えてくるので、上記記事中で紹介されている「厚生労働省の定義」と「類型」を元に考えてみます。

厚生労働省の定義

  1. 優越的な関係を背景とした言動
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
  3. 労働者の就業環境が害されるもの

パワハラの6つの類型

  1. 精神的な攻撃:同僚の前で叱責される、必要以上に長時間叱られる、侮辱されるなど
  2. 身体的な攻撃:叩く、殴る、蹴るといった暴行を受けるなど
  3. 過大な要求:他の従業員より明らかに高いノルマや達成困難な課題を課せられるなど
  4. 過小な要求:能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事に従事させられるなど
  5. 人間関係からの切り離し:1人だけ別室に席を移される、無視されるなど
  6. 個の侵害:私的な生活やプライバシーに過剰に立ち入られるなど


自称コンサルタントの例

過去のキャリアで僕自身が受けた行為のうち明らかにパワハラだったなと思うのは、正社員(エンジニア)として働いていたときに自称コンサルタントから受けた行為だけで、まあ今考えてもちょっとひやりとするんですけど、類型でいうと次の3つに当てはまりそうです。

  • 精神的な攻撃:必要以上に長時間叱られる、侮辱されるなど
  • 過大な要求:他の従業員より明らかに高いノルマや達成困難な課題を課せられるなど
  • 人間関係からの切り離し:1人だけ別室に席を移される

僕が彼の要求するスキルを満たしていなかったことは事実であったとしても、与えられた資金でもって必要な人材を確保しプロジェクトを前へ進める責任を負っていたのは自称コンサルタントであり、当初予定になかった部分に僕を持ってきて「出来ない」などと騒ぐのはプロジェクト遅延のスケープゴート以外の何ものでもなかったので、返す返すも酷い話でした。こいつだけは二度と顔も見たくない。


飲食店経営者の例

僕が一緒に仕事をした時点では既にもうだいぶ「丸く」なっていて手を挙げるなんてことも全くない人にだったんですけど、かつてはかなりの武闘派であり特に自分の甥に対する「教育」はかなり苛烈で「身体的な攻撃」を十分に満たすものだったようです。話に聞いただけですが、古参従業員の怖がり方とその「甥」の仕事の出来無さを考えるとまあ……さもありなんという気はします。

ただ重ねて言いますけど、近年はすっかりそういう部分もなくなって多少言葉にやんちゃな部分があってもパワハラ的な要素を含むことはなくなりました。スタッフ思いのいいおっちゃんなんですが、見た目が強面なのでどうしてもねー。そのへんは僕も共通してるのでよくわかります。ちょっと厳しく言っただけでパワハラって言われちゃいそうな。そんなことないんですけどね。



良くあるわけではないがしかし確かに存在はする

色んなシチュエーションがあるので一口には言えませんが、確かに存在はすると思います。上で挙げた飲食店経営者は全然そんなことありませんが、直近で働いていた飲食店の店長は物腰は一見柔らかいものの言動が粘着質で、同僚に対する当たり方にはパワーハラスメントじみたものもありました。それ以外のスタッフに対しては「気さくでいい上司」を印象づけているのに、その部分だけはちょっと。同僚にスキルが足りなかったのは事実でしたけど、それなら速やかにクビにした方が良かったんじゃないかな。


ワンマン経営の経営者にしてもそういう要素がある人とない人とがいて、絶対的な地位をもってるある社長は全ての社員に対して優位性を持ちつつも、ハラスメントになるようなことは口にしないタイプでした。もちろん業務上の必要性から個人を叱責することもありましたが、常識の範囲内。しかし別の社長は頭に血が上ると口が軽くなるタイプで、事務作業が苦手な社員に対してついつい余計なことを1つ2つ付け加えて叱責してしまいがちで、脇で聞いていてこれはハラスメントだよなーと思ってました。何も無ければ童顔で凄く温厚そうに見える社長なんですけどね(中身は死ぬほどイラチ)。



パワハラ防止法が施行されたぐらいで世の中のパワハラがなくなるとは思いませんけど、パワハラの加害者・被害者が「どこのあたりが世間の常識なのか」を知るきっかけになるのであれば、有用なのかなと思います。先に上げた定義と類型1つ取っても、はっきりしなかったらぼんやり広がってしまう「パワハラ」が、しっかり形を取って「それはダメだよね」という共通認識にできるようになりますし、当事者ではなくても「それはダメですよ」「こんなことがありました」といった注意喚起が出来るようになるんじゃないかなと。

仕事上の人間関係ってほんと難しいですけど、少しでも良い方向に向かうと良いなと思います。