単語を作ったのはジャーナリストの本田雅一さんで元々の定義はこんな感じです。
ええと、”コタツ記事”というのは、ブログや海外記事、掲示板、他人が書いた記事などを”総合評論”し、コタツの上だけで完結できる記事の事を個人的にそう呼んでます。自分たちでコタツ記事が優れていると宣言している方もいれば、言ってない方も。柔らかな言い方をすると「文献派」の方々
— 本田雅一 (@rokuzouhonda) December 9, 2010
当初はあくまで記事の種類または編集方法を規定しただけで、必ずしも悪いと断定しているわけではないのですが、昨今の風潮としては「ろくに取材もせず、検索した情報をまとめなおして記事にすること」ぐらいの意味になっているように思います。
かつてはいわゆる「キュレーション記事」、Amazonのランキングから「オススメ5選」みたいな記事のことを「コタツ記事」と言っていたような気がしますが、最近増えているのは著名人や芸能人のSNSの投稿を紹介し、それに対するSNS上のリアクションを羅列して締める感じの記事。新型コロナウイルスの影響でステイホームが進み取材が思うように出来ないという事情はあるにしても、ある程度のネットリテラシーがあれば作れるような記事を作りそれをマスメディアに載せるとなると、お前それで高い給料もらってて良いご身分だなぐらいの皮肉を言いたくなる気持ちもわかります。
実際に見てみましょう
昔から読んでいて個人的に好きなスポーツ紙「スポーツニッポン」の芸能欄を見てみましょう。コタツ記事ってこんなのです。俳優の河相我聞(45)が13日、自身のブログを更新。膵臓がんのため昨年12月30日に亡くなっていたことが同日明らかになった俳優の綿引勝彦さん(享年75)を追悼した。
河相我聞 “お父さん”綿引勝彦さん悼む「お父さん、ありがとう。お母さんと二人でゆっくりしてください」― スポニチ Sponichi Annex 芸能
記事のほとんどはブログからの引用で、書き出しと最終段だけがオリジナル。オリジナルといっていいかわからんようなテキストだけど。
綿引さんは1991年から99年までTBS系で放送されていた大家族をテーマにした大人気ホームドラマ「天までとどけ」シリーズで、岡江さんと13人の子どもたちを育てる夫婦役として共演。河相は次男の信平を演じた。
河相我聞 “お父さん”綿引勝彦さん悼む「お父さん、ありがとう。お母さんと二人でゆっくりしてください」― スポニチ Sponichi Annex 芸能
こちらも全く同じ構成。オリジナル部分は書き出しのみ。
女優の仲間由紀恵(41)が13日、自身のブログを更新し、昨年末に過密スケジュールで体調を崩したことを明かした。
仲間由紀恵 昨年末 過密スケジュールで体調崩す「少し無理してしまって…迷惑をおかけしてしまいました」― スポニチ Sponichi Annex 芸能
こちらは書き出しのみオリジナル、引用後にSNSのリアクションを掲載。
女優でモデルの本田翼(28)が14日、自身のインスタグラムを更新し、「メンズ服が気になって仕方なくてたまらない」私服ショットを公開した。
本田翼 ロエベ×トトロのバッグ手に最近気になるメンズ服ショット公開「ばっさー最強」「しぬほどかわい」― スポニチ Sponichi Annex 芸能
コタツ記事だから悪いってことを言いたいわけじゃないんですよ。誰も彼もがSNSで情報を発信する時代で、好きな芸能人の情報を追うのだけで一苦労。知ってはいるけどファンではないぐらいのレベルだと全く情報が入ってこないので、そんな情報をまとめて配信してくれるのはありがたい。なので、こういう携帯はスポーツ紙やタブロイド紙と親和性が高かったんだろうなと思うし、その上でやはり、楽なお仕事ですねという感想になります。張り込んだりつきまとったりしてコメント取ってた時代じゃもうないんだろうねえ。
「コタツ記事」について思うこと
まあそういうわけなので、スポーツ紙を中心とした一部マスメディアはコタツ記事を量産することで自らを良くいえばキュレーター化、悪くいうなら情報の土管化し、存在価値を希薄化させていくのねというのが全体の感想です。本来の取材部門とは別に編集部門を設けるのなら別に良いんじゃないかな。GIGAZINEの編集体制だってそういうところあったし(最近見てないけど今もお元気なのかしら、GIGAZINE)。一方で、「お前らちゃんと取材しろよ」とまでいう気になれないのは、ひとつには新型コロナウイルスの影響があるけれど、もうひとつには自分が書いているブログ記事だってコタツ記事的なものが何割かはあるってことなんですよね。一時大流行した、ニュースに出てきた名前を検索して記事にまとめてアフィリエイトで儲けるスタイルなんかほんとそうだけど、何かを検索してまとめただけで「記事書きました」っていっちゃうのって、それコタツ記事ですよね。スポーツ紙はキュレーターとしての有用性があるから良いけど、僕なんかそんなのないわけだからほんとやってる意味がわからない。個人的に言えば自分が興味持ったことをメモ的に残してるだけなんですが、でも広告貼ってるからなあ。
そうした僕の「おまいう」部分を踏まえた上で敢えて言うとすれば、せめてもう少し記者の所感を掲載するようにして欲しいなとは思います。ジャーナリストなんだからさ。ニュースに触れて考えること、何かあるでしょう。「それはブログ記事の引用で示してる」っていうかもしれないけど、記事の大半を引用で構成してるのを「記者の所感です」はちと厳しい。プロ野球専門ニュースサイトとかだと契約してる元プロ野球選手の解説者にコメントを求めたりするし、せめて芸能レポーター(絶滅危惧種?)の感想を取りに行くぐらいはして欲しい。こたつの上にもみかんが必要、そういうことじゃないかと思うんですけどね。