【ニュースから】飲食店の倒産が過去最多に

ふさぎ込むシェフのイラスト(男性)
まあそんな気はしてましたが。


 2019年(1月~11月)の飲食店の倒産件数は11月時点で668件発生し、過去最多となるペースで推移している。

 消費者の節約志向は高まる一方で、外食を控えて中食や内食を選ぶ消費者が増加している。そのようななか今年10月には消費税率が10%に引き上げられ、それに伴い導入された軽減税率により、テイクアウトやデリバリーなどは消費税率が8%に据え置かれたのに対し、飲食店の店内で食事をすると消費税率が10%となったことなども客離れの要因となった。帝国データバンクが発表している景気動向調査によると、10月の飲食店の景気DIは前月比6.3ポイント減の37.3となり、その影響が伺える。

 また、「人手不足」が原因となり倒産するケースが増えつつあり、これからさらに増加する可能性もある。実際、帝国データバンクが2019年11月に発表した『人手不足に対する企業の動向調査』では、飲食店では非正社員について78.3%の事業者が人手不足を感じていると回答している。

飲食店の倒産、過去最多へ(帝国データバンク) – Yahoo!ニュース



一般論としては「消費税増税のせいで」ということになるのかも知れませんが、正直言うとそれは僕の実感とはちょっと違って、消費税増税よりも前からその傾向は始まっていたように思うんですよね。そうだなあ、今年の初めぐらいから?ここ2,3年、拡大路線で来たチェーン店が減速したり、業態を増やして飲食店の多角経営に向かったりという流れがあったのも、言わばその前兆と言えるのかも知れません。なんとか沈まないように頑張ろうという活動は、すなわちキツいってことなんで。



働き方改革から始まった

店舗によっていろいろと事情はあると思うので一概にどうこうは言えませんが、自分が見た感じで言うと、消費税増税より最低賃金見直しを含めた働き方改革の方が結構しんどいなという感じはあります。消費税はあくまでトドメ。

飲食店がデフォルトでブラックなのは皆さんご存知の通りなのですが、そこにもメスが入って割と厳しく制限されるようになりつつあります。月残業時間を45時間までにするとか、休み・休憩をきちんと取るようにするとか、有休を使えとか。それらを満たした上でかつ営業するためには、どうしても人手が必要です。3人でやってたのを4人にして1人休む、みたいなイメージ。会社としては人件費3割増しですね。

金で解決出来るならまだマシな方で、ただでさえ人手が不足しているところに、働き方改革への取り組み状況による「雇用条件の差」が生まれてしまったために、採用出来ないところへはほんと誰も来ないという状況になりました。そうなると当然、労働時間を枠内に収めるためには営業を休むことになります。30日営業していたのを24日に減らせば、売上は2割減です。現実的には週7日間どの日も同じ売上と言うことにはならないので、売上が低い日を選んで休めば1割程度の売上減に抑えられるとは思いますが、いずれにしても1割は少なくない。月商1,000万なら100万の減ですし、ちょうど人1人分ぐらいは利益が飛ぶことになります。どっちを向いてもキツい。

カツカツな店がいきなりそれやれって言われたら……そりゃ潰れるわ。



働き方は変えなくてはならない

ただね、このことを一概に「良くないこと」とは言いたくないんですよね。だってさ、社会的に見れば今の働き方の方が普通ですからね。働き方改革が始まるまでのある居酒屋の働き方は、「休日週1日」「週労働時間70時間(月法定残業時間130時間)」「残業代なし」「休憩無し」「有休取得不可」「出勤前や休日の作業あり」で、働き方改革以降も「休日が月6日になったこと」と「勤務時間11時間以上で残業代が出るようになったこと」以外は特に変わってません。

こんなのおかしいよね、むちゃくちゃじゃねえかと思うけれど、周りから言われない限り中の人は気付かないし会社も変える気がない。変えろっていわれたら「会社潰す気か!」みたいな話になるけど、まあねえ、人からそこまで搾取しないと成立しない商売なんか潰してしまえと僕なんかは思うのでねえ。ドラスティックに変えろとは言わないから、せめて少しずつでも改善する意志ぐらいは見せて欲しいよねえ。



でも正直、もともとが儲からないんですよね

自分でやってて思うのは、飲食店を営業しようと思ったら時間はいくらあっても足りないことと、個店で人件費を出そうと思ったらものすごく大変だということです。きちんと工夫して商売して売上を作らないと、バイトも雇えない。月1のカフェ営業で目が回るぐらい忙しくても自分たちの人件費も出てないです。

そういう流れで言えば、飲食店がブラックになりがちなのは自然な流れではあるのだけど、でも個人で経営するのと人を雇うのとは全く違うことだから。経営する側が休めないことは経営状況によってままあるとしても、それに従業員を付き合わせるのは違うよね。それでも付き合いたい従業員がいるなら、法人化して役員にするとかね。求められているのはそういうことかなと思います。



スクラップ&ビルドの果てに

このスクラップからのビルドを経て、良い会社が残ってくれれば良いなと思ってるんですけど(そしてそれは将来の競争力になるはずと信じてる)、でも現状、いくつかの会社を見る範囲ではなかなか難しいかなあ。仕事の分量は減らないのに「働くな」と言われる、この状況を解決する方法を発見しない限りなかなかね。最悪、法律に従わずに上手く露見しなかった会社だけが生き残るみたいになって、「誰が上手くすり抜けるか」みたいなことになりかねない。チェーン店だと難しくても中小ならあり得るからなー。


でも、そうなったらもう完全にディストピアだなあ……