ぬか床の調整について
ぬか床に必要な要素は、「塩味」「旨味」「ぬかの適度な発酵」です。一方で不要な要素は「酸味」です。ぬか床の調整とは、毎日漬ける中で不足していく「塩味」と「旨味」を補いつつ、「酸味」が出ないように上手くぬかの発酵を導くことです。塩
塩の役割は2つあります。- 漬けものに塩味を付ける
- 雑菌の繁殖を抑え、ぬかの発酵を適正に保つ
漬けものの味にとらわれがちですが、より大事なのは2の方です。多くの雑菌が塩気を嫌がるのに対して、ぬか漬けの主成分である乳酸菌はある程度の塩気に耐えられる特性があります。その特性を活かして、雑菌を排除し乳酸菌だけを残すのが塩の役割です。雑菌が増殖すると、ぬか漬けの味が酸っぱくなったり、えぐみが出たり、ぬか床にカビが生えたりします。
適度な塩加減については感覚なので文字では伝えづらいですが、ぬかを食べてみて「少し塩っぱいな」と思うぐらいが適正です。
昆布(または旨味を付加する何か)
ぬか漬けの塩気と風味を活かすのに必要なのが旨味です。現在は昆布を定期的に20センチほど入れています。以前はかつお節のかすを入れていたときもありましたが、「ベジタリアンに出せなくなるのではないか」という指摘があったため、昆布のみにしています。仮に昆布を入れなくてもぬか漬けは漬かりますし、美味しくなりますが、昆布があるとより美味しくなります。採算が合うならば、干し椎茸などを使うことも出来ます。
かき混ぜることの重要性
ぬか床の中には主に2種類の菌が住んでいます。1つは空気を嫌う乳酸菌。もうひとつは空気を好む酵母菌。この2つがバランス良く存在することが美味しいぬか漬けを作るために必要です。ぬか床を毎日かき混ぜるのは、かき混ぜることでぬか床下部に沈んでいる酵母菌に空気を与えることと、適度に空気を含ませることで乳酸菌が増えすぎないようにすることが主な目的です。また空気を嫌う菌の中には「酪酸菌」といった雑菌もおり、腐敗の原因になります。ぬか床をかき混ぜることでこうした雑菌の繁殖を抑えることも出来ます。
水分の除去と水分の追加
ぬか床を常温に置いておくと、酸味を含む水分がにじみ出てきます。これはぬか床の酸味の原因になるので毎回丁寧に取り除きましょう。その上でぬかが固いなと感じた場合には浄水を追加することが出来ます。固いぬかは発酵が進んでいないぬかであることが多く、適度な水分を与えることで発酵しやすい環境を整えます。酸味が出た場合の対処
酸味が出た場合の対処はいくつかあります。- ぬかを追加する
- 重曹を足す
- ぬか床を冷蔵庫に保管する
ぬかを追加する場合には、ぬかと一緒に適量の塩と水を追加します。元のぬかの状況にも寄りますが、基本的にはぬかと同量の水、ぬかの7%の塩が目安です。
例)ぬか100g、水100g、塩7g
一度に多くのぬかを加えすぎるとぬか床全体の発酵具合が下がりぬか漬けが漬かりにくくなるとともに、乳酸菌・酵母菌の力が下がることで雑菌が繁殖しやすくなります。何日かに分けて少しずつ加えるのが良いです。
ぬかの追加が根本的な対策であるのに対し、日々少しずつ行えるのが重曹の追加です。重曹は酸性に傾きすぎてしまったぬか床のphをアルカリ性に戻し、酸味を消すのに役立ちます。もちろん入れすぎるとアルカリ性に偏りすぎてしまうので、小さじ1杯程度が目安です。
また夏場、気温が上がってくると発酵が進みやすくなり、酸味が出やすくなります。その場合には、ぬか漬けを漬けた後ぬか床を冷蔵庫に保管してください。
いずれの場合も対処してすぐに効果が出るわけではありません。継続して様子を見ながら調整を続けることが必要です。