雇用契約と委託契約、どちらが良いの?というと「ケースバイケース」としか言いようがないと思いますが、僕の場合社会保険を払ってもらってるわけでもないし、会社との間に相互に信頼関係があって報酬は互いに納得して支払われている(たぶん時給じゃなくてもやっていける)ので、どちらでも良い。ただ税務的には、今給与としてもらっている額が事業収入に入るようになることで、青色申告特別控除がフルに引かれることになり、もしかすると節税になるのかも……と期待して計算してみたんですけど、いやあ、税金のシステムってホントに良く作られてますね……感心しました。すげえよ。
結論から言うと、僕ぐらいの規模では所得税額はほとんど変わりません。2019年度の予算ベースで試算したところ、委託契約の方が500円安くなっただけでした。事業収入が増えて青色申告特別控除を適用すると所得が減るような気がしますが、実際には「給与所得控除」の割合がものすごく大きいので、所得自体は増えてしまいます。
試算してみる
例えば収入が600万ある人が全額給与としてもらう場合と、半分だけ給与としてもらう場合、給与ゼロの場合とで比較してみます。全額給与
- 事業収入:0
- 事業所得:0 – 必要経費
- 給与収入:600万円
- 給与所得:426万円
- 総所得:426万円 – 必要経費
半分給与
- 事業収入:300万円
- 事業所得:300万円 – 65万円 – 必要経費
- 給与収入:300万円
- 給与所得:192万円
- 総所得:427万円 – 必要経費
給与ゼロ
- 事業収入:600万円
- 事業所得:600万円 – 65万円 – 必要経費
- 給与収入:0万円
- 給与所得:0万円
- 総所得:535万円 – 必要経費
必要経費やその他控除が同じだとすると、半分を給与にしても課税所得は1万円しか違わないことになり、課税所得が195万円以下なら所得税の差は500円になります(330万円以下なら1,000円)。しかもこの場合は全額給与の方が安い。雇用契約なら有給休暇も付いてくることを考えると、あ、これ、雇用契約の方がお得なやつだ。
僕の場合は事業収入もあるんでもうちょっと複雑なんですけど、でも計算結果は似たようなもの。どちらを選んでも支払う所得税はほとんど変わらないし、変わることと言えば、必要経費として計上出来るシチュエーションが増えるくらいかなあ……そうですね、ここまで事業として活動して必要経費が同じってことはあり得ないので、雇用契約の方が税金が少なくて済むとまでは言いきれないけど、でも。少なくとも僕の場合は、雇用契約を委託契約に切り替える理由がないなあ。
もしもっと収入が多かったら
「「法人成り」の閾値は売上1,000万円」とかどこかで聞いたことがある気がするので、1,000万円で雇用契約と委託契約を比べてみます。(消費税など事業に関わる細かいことは省略しています)
全額給与
- 事業収入:0
- 事業所得:0 – 必要経費
- 給与収入:1,000万円
- 給与所得:780万円
- 総所得:780万円 – 必要経費
半分給与
- 事業収入:500万円
- 事業所得:500万円 – 65万円 – 必要経費
- 給与収入:500万円
- 給与所得:346万円
- 総所得:781万円 – 必要経費
給与ゼロ
- 事業収入:1,000万円
- 事業所得:1,000万円 – 65万円 – 必要経費
- 給与収入:0万円
- 給与所得:0万円
- 総所得:935万円 – 必要経費
ここでも半分給与では1万円しか違いませんでした。給与所得控除の威力半端ねえ。給与収入が増えれば増えるほど控除の割合は下がる(例えば1,000万円では所得は収入の69%だけど、2,000万円では87%になる)ので、どこかのタイミングで給与所得控除が意味なくなるポイントはあると思うのだけれど、それでも青色申告控除の65万円に比べれば。雇用契約ってこんなに楽なもんだったのか。。
結論:計算しましょう
お金のもらい方にはいろいろな方法があり、収入や税金だけでなくいろいろな条件・制限があるので一概に何がベストとは言いがたいですが、「サラリーマンは税金を搾り取られてる」とか「フリーランスや自営業は税金が楽」とかいうのは、状況によっては変わりますよというのを理解しておくと良いかなと思います。事業収入というのは多くの売上を上げることが出来る可能性がある一方で、たくさん売り上げないとメリットが出にくいという面があり、それはそれで大変だなと。楽な働き方というのはなかなかないもんですねえ。
(あ、情報商材の宣伝とか要らないので変なDMとか送らないでくださいね)