フリーターの生活が楽になることは(まだしばらくは)ない

渋い顔でバイト雑誌を見る人のイラスト(男性)

最低賃金の引き上げをめぐる議論が大詰めを迎えている。厚生労働省の中央最低賃金審議会(厚労相の諮問機関)は24日に小委員会を開催し、2018年度の引き上げの目安額を決定する見通しだ。政府は年率3%程度上げる方針で、18年度も全国平均で前年度比26円増の時給874円が軸になるとみられるが、労使の隔たりは大きい。

最低賃金上げ、議論大詰め=26円軸、労使に隔たり-厚労省審議会:時事ドットコム


このところ毎年秋に引き上げられている最低賃金の議論が聞こえてきました。今年は全国平均で26円増の874円になる見込みです。京都市は今856円なので、880円くらいになりそうです。僕が大学生の頃(1998年頃)のアルバイトの時給は650円でしたし、深夜から早朝のコンビニバイトでも850円でしたから、これが最低賃金なんて隔世の感がありますが、ただそれは学生のアルバイトに限ってのこと。フリーター、非正規雇用に焦点を当てて計算するとまだまだ厳しい数字です。先ほどの記事の続きを引用します。



17年度の最低賃金は全国平均で848円だが、この水準でフルタイムで働いても年収は176万円。連合や日弁連が主張する1000円でも年収208万円。いずれも貧困から脱出するのは難しく、最近は1500円を目指す運動も広がっている。

最低賃金上げ、議論大詰め=26円軸、労使に隔たり-厚労省審議会:時事ドットコム


至極当然のことですが、雇う方はそこまで考えていないと思うんですよね。あくまで自分のところの懐具合と、同業他社の状況を見ながら設定していると思うので。でも実情は上記の通りです。非正規雇用の人間は、時給1,000円でも暮らしていけないんですよ。じゃあどうするかっていうと、僕みたいにダブルワークをせざるを得ない。周りでフリーターやってる人を見て、ダブルワークしなくて済んでいるのは実家住まいの人間だけですね。僕は今でこそ(アルバイトとしては)良い待遇で昼の仕事を貰っているので、そこまで労働時間を伸ばさなくて済んでいますが、フリーターになってから一番働いた月の「所定」労働時間は280時間ぐらい。それでようやく手取り22万円くらいです。つら。

でも非正規雇用ってそういうもんなんですよね。政府・厚生労働省の働き方改革は、僕らにとってはとても有り難いことなんですけど、でも実際に安心できるまでは変えられないよねとも思っています。



また一口に「時給」と言っても、今少しお金が欲しい大学生と、継続的に働きたい人間とで同じ最低賃金というのもどうかな、とは思います。雑に言えば、大学生バイトの最低賃金は800円程度までにして、非正規雇用は1,000円程度まで引き上げたらバランスが取れると思うんですけど、ただねえ、大学生でも学費や家賃を自分で払っている大学生もいて、そういう大学生は継続的に働きたいと思っているし実際かなりの戦力になります。一方でフリーターでも実家住まいなどでちょっと稼げればいい、しんどいことはあまりしたくないみたいな人間もいて、そういう人間は戦力としては限度があり、それに時給1,000円を払うのは雇う側としては抵抗があるでしょう。

ベストは最低賃金で縛るのではなくて、同一労働同一賃金で高度な労働には高い時給で応えるみたいになるのが良いんですが、実際ね、上がらないですよね時給って。僕居酒屋で4年ちょっと働いていて、料理のクオリティをダイレクトに左右するポジションで高い魚を焼いたりもしてるんですけど、取り皿を用意して料理を持っていくだけの大学生バイトと時給100円しか変わりません。そんなことある?って思うけど、でもそういうもんですよ。継続して働く意志を見せ積極的にシフトインした結果、重要な仕事も任せてもらえるようになりましたが、時給は上がりませんでした。結局、仕事の内容を精査して時給を柔軟に変えるなんて、出来ないんですよ。よほどしっかりした育成プランとマニュアルがある企業なら別ですけど。



その状況で、店の前には「フリーター大募集」という張り紙があるわけです。時給950円。先ほどの年収試算は週40時間労働で計算しているみたいなのでそれに則ると、この店では年収197万円でフリーターを募集してるってことになります。税金、保険、年金など引いた実質手取りは年160万円てところでしょうか。家賃・食費・光熱費を月10万に抑えたとして使えるお金は1ヶ月に3万円てところですね。もちろん貯金はありません。

店がそんなつもりで募集しているわけではないのはもちろんよくわかっているんですけど、でも社会全体における非正規の扱いってのはそんなもんなんですよね。あくまで時給の「相場」しか見ていない。少し前までは「これは問題だから正規雇用にして待遇を上げよう」だったんですが、今は「非正規雇用のままでも生活できるように」ってなっているようです。有り難いんですけど、でもやっぱり、実情とはまだまだ距離がありすぎて、そして仮に実情に合わせるとして企業側でどう対応したら良いのか全く見えていなくて、実現出来そうにないですね。。



なんとなくの感じでは、日本では、「休みたい日に休める」「有休を使える」というような、労働者として当然の権利を行使できる労働者は、一段下に置かれるような印象があります。それが出来ない俺らが正社員でこの待遇なんだから、それが出来るヤツがそれと同等の待遇なわけないだろ的な。非正規雇用対策は有り難いけど、正規雇用の待遇が改善しない限り、非正規の扱いも良くはならないんじゃないかなあとうっすら思います。

医療費始め社会的コストが上がる一方で成長率は頭打ちの日本経済が、それを出来るかっていうと、まあ、うんて感じなんですが。移民を受け入れて労働力として使うってのも、問題の解決にはなってないしなあ。どうするのがいいのだろうな。