お酒を造ることに関する法律

味噌作りなう。

発酵について勉強しているとどうしてもお酒が作りたくなります(上の写真は味噌を作っているところ)。

というかまぁ、意図的にお酒を作ろうとしなくてもある種の発酵ではアルコール発酵が進んでどぶろくになってしまうこともあります。ただお酒を作るに当たっては法律で規制があるはず。うろ覚えでは「自分で飲むんなら良いんじゃねーの」と思っていましたが、いやうろ覚えじゃ危険すぎるのでちょっと調べてみました。

酒造りに関する規制は、なんと「酒税法」で規定されています。税法かよ…なんか変な感じがしますがまぁ仕方ない。

酒税法








以下、第七条「酒類の製造免許」からの引用です。

第七条  酒類を製造しようとする者は、政令で定める手続により、製造しようとする酒類の品目(第三条第七号から第二十三号までに掲げる酒類の区分をいう。以下同じ。)別に、製造場ごとに、その製造場の所在地の所轄税務署長の免許(以下「製造免許」という。)を受けなければならない。ただし、酒類の製造免許を受けた者(以下「酒類製造者」という。)が、その製造免許を受けた製造場において当該酒類の原料とするため製造する酒類については、この限りでない。

簡単に言うと、用途はどうあれ酒を造る場合には製造免許が必要です、ということ。自分の家で消費するんであっても無免許はNG。
罰則は第五十四条に規定されていてこんな感じ。

第七条第一項又は第八条の規定による製造免許を受けないで、酒類、酒母又はもろみを製造した者は、十年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

おおう、厳しい。マジか。知りませんでした。無知って怖い。



製造免許は「製造場の所在地の所轄税務署長」が発行する、と。だったら免許申請すればいいんじゃ…と思いましたけど、第二項にこんな規定。

2  酒類の製造免許は、一の製造場において製造免許を受けた後一年間に製造しようとする酒類の見込数量が当該酒類につき次に定める数量に達しない場合には、受けることができない。
一  清酒 六十キロリットル
二  合成清酒 六十キロリットル
三  連続式蒸留しようちゆう 六十キロリットル
四  単式蒸留しようちゆう 十キロリットル
五  みりん 十キロリットル
六  ビール 六十キロリットル
七  果実酒 六キロリットル
八  甘味果実酒 六キロリットル
九  ウイスキー 六キロリットル
十  ブランデー 六キロリットル
十一  原料用アルコール 六キロリットル
十二  発泡酒 六キロリットル
十三  その他の醸造酒 六キロリットル
十四  スピリッツ 六キロリットル
十五  リキュール 六キロリットル
十六  粉末酒 六キロリットル
十七  雑酒 六キロリットル

要するに、品質を保証できるような業者じゃないとダメよという。
素人がキロリットル単位で作れるわけないし…お、第三項にこの第二項の適用を免れる規定が。えーと…

3  前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一  清酒の製造免許を受けた者が、その製造免許を受けた製造場において、単式蒸留しようちゆう又はみりんを製造しようとする場合
二  連続式蒸留しようちゆう又は単式蒸留しようちゆうの製造免許を受けた者が、その製造免許を受けた製造場において、みりんを製造しようとする場合
三  果実酒又は甘味果実酒の製造免許を受けた者がブランデーを製造しようとする場合
四  試験のために酒類を製造しようとする場合
五  一の製造場において清酒及び合成清酒を製造しようとする場合で、製造免許を受けた後一年間におけるその製造見込数量の合計が六十キロリットル以上であるとき。
六  一の製造場において連続式蒸留しようちゆう及び単式蒸留しようちゆうを製造しようとする場合で、製造免許を受けた後一年間におけるその製造見込数量の合計が六十キロリットル以上であるとき。
七  前各号に準ずる場合として政令で定める場合

あー大体は、何度も申請を受けるような不便を解消するような感じの規定か。四番目の「試験のために酒類を製造しようとする場合」を見て「おおお、もしかして」(個人的に試験には違いない)と思いましたが、まぁもちろん個人の実験が「試験のため」になるわけもなく、試験とはどういうことかについても通達が出ているようです(参考:国税庁:酒類等製造免許審査項目一覧表(PDF))。

験製造免許については、真に試験研究を目的とする場合に限り付与するものであり、例えば、試験製造した酒類を販売して多額の収益を得るような営利性がある場合又は自家用酒類の製造を目的とする場合には、試験製造免許の対象とはならない。
なお、試験製造免許は、次のいずれかに該当する場合に付与する。
・酒税法7条
・法令解釈通達
2編7条3項
(1) 学校(学校教育法(昭和22年法律第26号)及び国立大学法人法(平成15年法律第112号)に規定する学校をいう。)において教育のために酒類の試験製造を行う場合
(2) 国又は地方公共団体が設置した図書館、博物館、公民館、その他の社会教育に関する施設において教育のために酒類の試験製造を行う場合
(3) 国又は地方公共団体が設立している試験場、研究所等において試験研究するために酒類の試験製造を行う場合
(4) 独立行政法人酒類総合研究所及び地方独立行政法人において試験研究するために酒類の試験製造を行う場合
(5) 新商品開発、新技術開発等の目的で酒類の試験製造を行う場合
(6) 酒類の原料、製造設備等の製造又は販売業者が、当該原料等の品質を検査するために、酒類の試験製造を行う場合
(注)酒母等の製造については、試験製造免許の制度が存在しない

「自家用酒類の製造を目的とする場合には、試験製造免許の対象とはならない」っつーことで、当然ダメ、と。




結論

個人でお酒を作るのは違法です。諦めてください。



そうかー…


ちなみに「酒類」とは何かというと、酒税法第二条。

この法律において「酒類」とは、アルコール分一度以上の飲料(薄めてアルコール分一度以上の飲料とすることができるもの(アルコール分が九十度以上のアルコールのうち、第七条第一項の規定による酒類の製造免許を受けた者が酒類の原料として当該製造免許を受けた製造場において製造するもの以外のものを除く。)又は溶解してアルコール分一度以上の飲料とすることができる粉末状のものを含む。)をいう。

とのことなので、1%未満の飲料ならお酒ではないです。なのでその程度の発酵なら大丈夫。まぁでも発酵させすぎないようにするの大変ですけどね…

色んな事情(税や衛生面やなんやかや)を鑑みると、個人でお酒を作ってみるってのは難しそうですね。残念。



参考リンク

酒税法
第7条 酒類の製造免許|酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達|国税庁
酒に関する日本の法律 – Wikipedia
酒ビジネスのプロフェッショナル―鈴木事務所お酒を造る – 行政書士 鈴木事務所