電力の話 – 見積もりどうなってます?

政府は29日、東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、2030年までに少なくとも14基の原発の新増設を目標に掲げた「エネルギー基本計画」を見直す方針を固めた。

 新たな基本計画は、原発重視から太陽光などクリーンエネルギー重視へと転換する考えで、14基の原発建設計画の中断や大幅延期は避けられない情勢だ。

 菅首相は29日の参院予算委員会で「太陽光などクリーンなエネルギーについて、日本のエネルギー政策をどうするべきか改めて議論が必要だ」と答弁。海江田経済産業相は閣議後の記者会見で「基本計画は、これまでと同じような形ではいかない。政府全体でエネルギー政策をどうするのか話をしなければいけない」と強調した。
 

僕自身は原発について、推進も反対もないのだけど(中間の立場を認めない人にとっては気持ち悪いかも知れないけどそうなんだから仕方ない)、現実問題として怖いし、将来的に可能なのであれば原発を使わずに電力を賄えるのが望ましいと思う。でも実際問題、どのくらいの計画を立てたらそこまで到達できるんだろうか?きっちりと絵を描いて述べられたのを見たことがないのでよくわからない。



例えば「即時原発停止→廃炉」という意見を見かけた。

まぁ確かにそうできればいいのだけど、実際問題としてそれは可能なんだろうか。もし可能なんだったら、今の関東圏の電力不足は、原発が止まったことによる電力不足ではなくて、地震で火力発電所が被害を受けたことによる電力不足ってことになる。それとも節電を心がけながら火力発電所を増設していけば夏のピークに間に合うという話なのだろうか。火力発電所って1つ建てるのにどれくらい時間掛かるのだろう。用地の選定から買収、建設、運用開始まで。欲しいときに欲しいだけ建てられるもんなのだろうか。シムシティみたいに。

ドラスティックな煽りばかりする人は基本的に信用できない。



クリーンエネルギーというのもよく解らない話で。

先進国であるドイツがようやく今15%程度まで来ている中で、東京電力で23%、関西電力に至っては48%にも達する原子力発電の電力をどう短期間に補うというのだろう。ドイツは2030年までに国内電力の50%を再生可能エネルギーでまかなうと言っている。日本だってそれくらいかかると考えるのが現実的じゃないのだろうか。

水曜どうでしょうの「アメリカ横断」見てて思ったけど、日本には「誰も住んでないし欲しいとも思わない平地」ってのが無いよね(北海道にはあるのかな)。アリゾナの風景は、そういう土地にガンガン風車を立てて発電してる画だったけど日本だったらそれにも限界がありそうな気がする(ドイツみたいに海上風力を使う手はある)。太陽光発電も同じで、砂漠にパネルを死ぬほど並べる…なんてのは日本では出来ない。全戸設置にすればかなり稼げそうだけどその費用負担はちょっとシャレにならないレベルだし、即時展開できるとも思えない。夜中の電力はどうするんだろう。



そうして考えると、今必要なのは反対とか賛成とかじゃなくて見積もりじゃないのかと思う。

方針として徐々に脱原発を計っていくとしても(個人的にはそうなって欲しいと思う)、そうドラスティックに変えることは出来ない。再生可能エネルギーの達成目標を立ててそれを実施しながら、達成時点でひとつずつ原発を止めていくしかない。その中では原発の新規設置は中止されるだろうけれども、既存発電所に対してある程度設備の更新を行うのは仕方がないんじゃないか?それは今回の事故の反省点でもあるわけだし。

「エネルギー基本計画」がどれくらいの効力を持つのか僕には解らないけれども、なるべく早く方針を出して欲しい。福島原発の件は何年も収束しないし、収束を待ってたんじゃ遅すぎる。細部はあとで詰めるとして「こうする!」ってのを出せないもんなのだろうか。政府が出来ないんだったら電力会社でも良いよ。使えないマニフェストで出来たんだから、これくらい大事なことなら余計にやるべきだと思うんだけどもまぁしかし、無理だろうなぁ。いや、無理じゃ困るんだけども。