消費期限の迫った弁当などを、フランチャイズ(FC)の加盟店が値引きして売る「見切り販売」を制限したとして、公正取引委員会は22日、独禁法違反(優越的地位の乱用)で、コンビニエンスストア最大手のセブン?イレブン・ジャパン(東京)に排除措置命令を出した。
消費期限の迫った弁当や菓子パンの値引き販売を認めず、大量廃棄を続けてきたコンビニの販売方式に、公正取引委員会が「待った」をかけた。期限切れ前に値引きする「見切り販売」が認められれば、消費者にとってメリットがあるほか、流通などの過程で食品がごみになる「フードロス」を減らす好材料となる。エコ活動などに取り組む消費者団体では「今回の命令が、コンビニ業界全体に波及すれば」と期待している。
公正取引委員会がコンビニエンスストア最大手のセブン?イレブン・ジャパンに排除措置命令を出したことは、24時間営業など「利便性」を売りに定価販売を維持してきたコンビニのビジネスモデルに大きな打撃を与える恐れがある。今後、全国のコンビニで売れ残り弁当などの値引き販売が常態化する可能性もある。消費不況の中、コンビニ各社は生き残りに向けてビジネスモデルの転換を迫られそうだ。
その筋の業界にいる友人がちょっと怒ってたので書いておくよ。
ニュースやブログを読んでいると色んなことをごっちゃにしている人が多いので、きちんとまとめておくよ。これごちゃごちゃにすると混乱しやすいし、わかりやすく見えて結構わかりづらい話だと思う。
この話の主な論点は以下。
- 加盟店に対して賞味期限の迫った商品の値下げ販売を許可しないセブンイレブン本部
- 販売期限が切れた商品は廃棄処分をするコンビニ
- 廃棄した商品による損失は加盟店が負担するという構造
さて、公正取引委員会が何を言っているかを以下から抜粋してみる。
株式会社セブン?イレブン・ジャパンに対する排除措置命令について(PDF)
セブン?イレブン・ジャパンの取引上の地位は加盟者に対して優越しているところ,セブン?イレブン・ジャパンは,加盟店で廃棄された商品の原価相当額の全額が加盟者の負担となる仕組みの下で,推奨商品のうちデイリー商品に係る見切り販売(以下「見切り販売」という。)を行おうとし,又は行っている加盟者に対し,見切り販売の取りやめを余儀なくさせ,もって,加盟者が自らの合理的な経営判断に基づいて廃棄に係るデイリー商品の原価相当額の負担を軽減する機会を失わせている。(注釈表示は削除した)
簡単に言えば以下の通り。
- セブンイレブン本部は加盟店に対して有利な立場にある
- その立場において廃棄された商品を全額加盟店に負担させている
- にもかかわらず見切り販売を禁止し、負担軽減の機会を奪っている
長年このビジネスモデルでやってきたとか、どこでもやってるとか、安値で売るとデフレになるとか、まだ食えるのに捨てるのはもったいないとか、
そういうことはこの件について考えるとき、まっっったく関係ない。
「関係ない」というのはつまり、別にこの件がその問題においてクリティカルであるわけではないと言うこと。長年やってきたことは長年間違っていたのかも知れないし、どこでもやっているのはみんな間違っているのかも知れないし、コンビニの見切り販売でデフレになるくらいならバーゲンとか止めればいいし、もったいないならそもそも製造と仕入れの調整をしろよっていう話。この件を議論しなくてもそれらは解決できる。
そうじゃなくて。
立場を利用して必要以上に負担を強いているという現状に対する注文なわけだろ?要は。本部の負担を減らすことでフランチャイズ展開をしやすくし、スケールメリットを出していこうって言うのがコンビニのビジネスモデルなはずで。加盟店に対して強制すること無しにそのビジネスモデルが維持できないんであれば、それはそのビジネスモデルが倫理的にまたは法律的に間違っていると言うことであって、そう指摘されてコンビニが潰れても知ったことではない。
公正取引委員会は期限切れ商品を廃棄するなとも、値下げ販売しろとも言ってない。そうではなく、いたずらに負担を強いるなと。値下げ販売させないなら全額負担させるなとか、何らかの援助をしろとか、別の契約で縛れとか(廃棄実績に応じて卸の量を調節するとか)そういうことなんだろう。それは、コンビニという視点から離れて普通に「卸と仕入れ」の関係で考えればごく当たり前の話で、単純に売る売らないの話だったらビジネスだけど、うちしかないんだろ?とか言って要求すればそりゃ立場に疑問を呈されても不思議じゃない。判断は公正取引委員会の胸先三寸ではあるけれども、青筋立てて怒るようなことでもない。「値下げして売ったら(ブランドイメージが壊れて|デフレになって|競走過剰になって)困る!」なんつって騒ぐのははっきり言って社会人として情けないと思うよ。何が問題なのかがわかってないっていう点で。そんな会社の事情なんか知らんつーの。そもそもそう言う不利益を自分以外に背負わせるのではないシステムで上手く回すのがクリーンな意味でのビジネスってもんじゃないのか。
…あぁいや、指摘されるまではグレーでも別に良いと思うんよ。それをしちゃいけないって言ってるわけじゃないんだ。ただこうやって指摘されちゃったら、すんませんって言って次の手を考えるしかなかろう。グレーをグレーだとわかってやってて改めるのと、グレーって言われてそれがわからないのとでは随分違う。