『ストッパー毒島』、読了。

『BECK』『ゴリラーマン』の作者でもある、
ハロルド作石の野球漫画、『ストッパー毒島』をようやく全巻読み終わる。
『BECK』同様、作者の、野球への愛情が凄く伝わってきて、
もちろん気付かずに流して読めば流れていってしまうのだけど、
細かいエピソードや、キャラクター、
要するに、ウェイク国吉のモデルが、ボストンのティム・ウェイクフィールドだとか、
コレは後でナックル・ボーラーとして再生することからわかるんだけど、
助っ人の説明で、『ティム…』までしか言わせていないとか(笑)


これが書かれた時期はまだイチローもメジャーに行っていない時期で、
恐らく野茂がドジャースで頑張っていた辺り。
そんな当時にしては、もの凄くメジャーリーグよりの表現、
例えばスタンディング・ダブルとか、
ムービング・ファストボールとか、
それこそ、ナックル・ボーラーとか、
そういう表現が多用されていて。
さりげないわざとらしさ、の部分に、作者の造詣の深さとか、
野球への愛情とか、
だって、パ・リーグのマスコットキャラクターが、
いちいち登場するってのでも十分に『マイナー』だもの、
そういうものを感じた。

話のスートリー自体は…上手くいきすぎてるというか、
MLBのオークランド・アスレチックスが、
実際に何度かシーズン後半に見せているような快進撃で、
しかも最後の試合は、本来ストッパーの毒島が、
8回3/2を投げきるというおまけ付きなのだけど、
いや、いいんじゃないかなぁ。
こうやって漫画にしちゃうと、『漫画だから』なんて言いがちだけど、
現実の世界では、もっと劇的なことがそれこそしょっちゅう起こるからね。


それから、もう一つの楽しみ方としては…
ハロルド作石作品、
『ゴリラーマン』?『ストッパー毒島』?『BECK』の世界観が、
実は繋がっているということ。
『ストッパー毒島』で、京浜アスレチックスをきりきり舞いさせる、
千葉ロッテの不破投手は、
『ゴリラーマン』でも、かなり有名な高校野球の選手として出てきて、
実践で一度も打たれたことの無かったスクリューを、
球技大会でゴリラーマンに打たれたりしている。
(その回想は、『ストッパー毒島』にも出てくる)

また、『BECK』でも、例えば、真帆の家に遊びに行くシーンで、
テレビには野球の実況放送が映っていて、確かウェイクが投げていたり、
コユキの大事にしているTシャツが、
“55Tシャツ”(毒島の背番号が55)だったりする。

決してどれかがどれかの続き、というわけではないのだけど、
なんだろうな、ミニチュアの街があって、
それを角度や時代を変えて、いろんな視点で見ると、
これらの作品になっていくような。
きっとそのうち、そういう世界観とは全く別の作品、
例えば、井上雄彦の『バガボンド』のような、
を書くこともあるだろうけど、
こういう世界観は、凄く面白いし、
なんとなく、確かに、藤子不二雄の各作品の共通部分でもあるような気もする。
(ハロルド作石は藤子不二雄を尊敬しているらしい)


まぁ、必要以上の分析はいらないな。
思うことはやっぱり、この人の書き込みよう、遊び心の大きさ、
そういったところが僕は好きだなぁ、と思う。



追記

そういえば、第1巻を読み始めてから全巻読み終わるまで、
約2ヶ月くらい掛かった。
なぜそんなに時間が掛かったかというと…、
ひとえに、この漫画が、『既に連載終了している』という点が大きい。

単行本は連載から数ヶ月遅れて発行されるので、
必然的に最終巻は、連載終了後、数ヶ月してから出ることになる。
つまり、現実的に考えれば、あまり数は売れないし、
多分もともとの部数も少ない。
店頭に並ぶ時間も、他の巻に比べて短いし、あまり出回らないことが多い。
そうなってくると、新古本屋で探しても最終巻が欠けていることが多くて、
結局は、ネットで探して購入する羽目になる。

今回は、運良くAmazonが定価で売ってた(まだ絶版ではないのか…?)から、
ネットで買おうと決めてからは、スムースに手に入ったけど、
以前には、2ヶ月くらい店を探し回ったけど見つからなくて、
ネット上でも、セット販売しかなくて、
やっと見つけて最終巻を買った、ということもあった。

いきなり読み始めて、全巻揃えるってのは、
有名漫画ならともかく、
少しマイナーだと、もう本当に大変なんである。

ま、そこまでする価値があるから、探すんだけどね。