京都市長選に関する情報はどうやって集めるのが良いか?
Webが社会に浸透して数年、どんな情報を集めるのにもとても便利な時代になりました。立候補を予定している人はだいたい誰も自分のサイトを持っていますし、ブログを使ってメッセージを発信しています。人によってはFacebookやTwitterを活用しYouTubeに自らのメッセージを投稿している人もいます。こうした情報を見て回れば全ての候補の主張をまんべんなく摂取でき、曖昧で無いとても明確な判断が出来るはずです。…そう考えていたことが僕にもありました。
でも違うんですよ。違うんです。何が違うんでしょう?
ポイントは「露出の濃淡」です。自分は相手の主張を客観的に読んでいる、そう思っていても、でも改めて考えてみるとそうでも無いことが多いです。広告出稿と同じなんですけども、機会が多いことが内容を上回ることがあります。簡単に言うと頻繁に目にする候補の主張が正しいように思えてきてしまう。繰り返し繰り返し語られている主張を正しいと思ってしまう。
Webで京都市長選に関わるいろんなひとの言うことを眺めていて感じていた違和感はここで、片方の主張の正しさを支持する一方でもう片方の主張を全く知らない。自分の支持している人が「向こうはこう言ってるんですよ」というのを100%正しいと信じている。それは声高に叫ばれていることを無思考になってただなぞっているだけなのですが、気付いてないんですね。そういう人が異常に多い。それがあなたの「真面目に考える」なのですか?
…長くなりましたがWebで情報を取るに当たって一番良いのは新聞、だと思います。昨日ずっと京都新聞の特集サイトを眺めていたのですが、両者の主張が整理され公平に書かれていてとてもわかりやすく思いました。
京都新聞社:京都市長選
新聞なんて…と僕も思ってました。京都新聞についても、公務員の友人から「鬱陶しい」という愚痴を良く聞くこともあってあまり良い印象がありませんでした。でもね、結構良いよ。時間が無い人でも「難問即答」はチェックを。「マニフェスト比較」も目を通すとなお可です。
立候補の背景を知るべきか
中村候補は共産党、門川候補は各政党相乗りです。中村候補は総評、門川候補は連合です。
言いたいことは色々あるんですけど、しかしそういう前提は考えなくて良いかなぁと思ってます。政策の内容だけ見て、なぜこのような政策を主張するのかという部分は専門家や好事家がやいやい言ってれば良いと思います。確かに政策の内容に対する全体的な印象を書けば、中村候補は共産党的な考え方(富の再配分的な政策とか)、門川候補は経済界的な考え方(歳入の増大による底上げ的な政策とか)と言えるかも知れませんが、それはどちらが正しい/正しくないというよりもポリシーの問題じゃないかと。
争点とは何かを考える - クラブと風営法?そんなの争点じゃねー
先日Twitterで「クラブと風営法の問題は今回の選挙において重要な争点の一つ」というツイートを見かけてお茶ふきました。そんなわけねー。重要な議題であるとは思いますが、選ぶ市長によってこのことが左右されるというような問題ではありません。一地方都市の首長に決定権のある話でも無いですし、クラブの運営に理解を示す中村候補に対し門川候補は犯罪の温床であると語った…みたいな事実もありません。中村候補を選べば解決するという趣旨の問題でも無いし、門川候補を選ぶと解決しないという話でもないんですよ。まぁ中村候補の支持団体が作ったポスターが凄い上手かったんで、こりゃ大変だ!って思っちゃうのは解るんですけど。残念なお知らせですが、これ、争点なんかじゃ無くて話のネタになってるだけですよ。
それはね、僕らがわきまえないといけない。
マイノリティに起きている問題について市民に解って貰うというのがどういうことなのかを。
「クラブ活動を支援してくれる候補がいる」という動機で投票する候補を選ぶなとは言いませんが(どんな動機であれ、自分の意志で投票する候補を選択することは素晴らしいことだと思います)、中村候補を選ぶことでどんなことが起こるかは知っておいて欲しいです。民主党を選んだ選挙で僕らみんなが学んだことだと思うんですが、あとで「聞いてなかった」と言っても手遅れで4年間我慢するしか無いのです。
というわけで、さっきリンク貼った京都新聞のまとめページ、明日までに読んどいて。
京都新聞社:京都市長選
2008年からの4年間はどうだったのか(財政的な意味で)
残念なのは、まぁ今回に限らないんだけど、市長が替わるかも知れないタイミングで現職の4年間についての総括をしてる人がいないと言うこと。財政再建の見通しが出てきたり悪くないこともあったと個人的には思うんだけど、みんな今後のことしか見てない。変わることは連続するということでもあるのに
— いず ○_○|||さん (@nobodyplace) 1月 29, 2012
僕には総括する知識はありませんけど、この4年間で京都市の財政が上向きになったことは知ってます。鉄道事業とか。昨日ずっと京都市の決算報告を読んでたんですが、財政再建団体になるかもといわれてた時より凄いマシになっていて驚きました。
平成22年度/京都市 行財政局 財政課
具体的に言うと、
- 一般会計:30億円の赤字(20年)が7億円の黒字に転換
- 地下鉄事業:18年度に現金収支65億円の赤字だったものが43億円の黒字に、利子支払い等を含めた経常収支も167億円の赤字から86億円の赤字に改善
- 市バス事業:経常収支の黒字を維持し、22年は22億円の黒字に拡大。債務は19年の120億円から70億円と確実に減少
- 全会計:306億円の赤字(20年)が10億円の赤字に改善
- 市債残高:20年に比べると600億円弱減ったがまだ1兆9,188億円残ってる
まだまだ単年で赤字なので借金の繰り上げ返済とか出来る状況ではありませんけど、少なくとも社会福祉費の増大には対応できそうな感じに。もしこれをやらずにいたらと思うと使いたいときに使う金が無いと言うことになりそうでゾッとします。
まとめ
こんな中途半端な形でまとめかよ、と思いますけど、まぁあんまり書くとどうしたって踏み込み過ぎちゃうので。後はお任せしますということで全ては語らず。言えることは、選挙に行ってね。それだけかなぁ。
1票で何が変わるんじゃボケ、とよく言われるんですけど、そうじゃなくて、投票するときに5秒でも京都市のことを考えるでしょう?それが良いと思うんですよ。投票なんか別に顔で決めても良いです。好きにしてください。だけど、京都市のことについて5秒でも考える時間を作るのなら、それはきっと何かに繋がります。ふとしたときに「ああこれあれか」的な。頭の片隅にでも残っていれば、言ってたこととやったことが違うときに文句も言えますし。
そんな感じ。
おまけ:国保事業の黒字について
中村候補の主張で「3年で40億円もの国保会計黒字を作り出した」というのがありますが、国保事業で黒字なのはあくまで一般会計からの繰入込みの現金収支であって、累積収支はまだまだ全然赤字ですし、一般会計からの繰入は22年だけで140億円もあります…つまり全然黒字じゃ無い。京都市の国民健康保険の運営について/京都市 保健福祉局 保険年金課
決算報告を見る限りでは国保事業の赤黒って、「歳入が予想に反した額になり繰入金が不足→赤/余剰→黒」みたいな程度の話なんだよね…予算の時点では±0で設計されてるんだもん。それを陰謀論みたいに言うのはちょっとどうかと思いました。
まぁ本当に言いたいことはそこじゃなくて、貧困層から保険料取り過ぎ!ということなので、その辺は大いに同意したいところです。お前らなんぼほど取んねん。
おまけ:政治活動について感じたこと
中村候補の支持団体を見ていくといろいろと政治団体がたくさん出てくるのですが、彼の政策がそういう支持団体の主張をまとめ上げたものであることが解って「政治活動ってこうやるんだな」ともう本当に感心しました。そして頭がクラクラしました。プロ市民って凄いんですね。通したい政策ごとに新しい組織を作って解りやすい名前を付けて代表を置き、組織を露出させることで政策の浸透も図るとかも上手いなぁ。いや手法としては手垢付きまくりの前時代的手法なんですけど、こうして政治の舞台から見てみるととても効率的。「クラブと風営法」なんて統一窓口すらないもんな。やる気だけはあるんだけどなんか上手くエネルギーだけ利用されてる気がする。。。
政治団体の個々の主張内容はともかくとして、その姿勢に本当に気概を感じました。
これがプロか。うぐぐ。