以前いた居酒屋では厨房の奥から手前(ホールに近い側)に向かって流れ作業になっていて、スタッフは通常4人いたけれど、1人が仕上げ作業、もう1人が取り皿などを添えてホールまで運ぶ係(ケツと呼んでた)だったので、調理をしているのは実質2人だけ。週末になるとスタッフが一人増えて5人になったけれど、増えるのは運び係(仕上げ場のサポート兼ねる)で調理は増えなかったので、それで一品ずつオーダーを捌くのはそれはきつかった。文字通り「追いつかない」ことはよくあって、忙しいときは追われるのが普通だった。
居酒屋方式のイメージ
一方で今の職場はスタッフが5人から6人。総数で言うとあまり変わらないけれど、違うことは、それぞれが1つずつポジションを受け持ち、そこに来た注文をこなす形になっていること。スタッフ間の連携はほとんどない。つまり調理をするのは5人。そして居酒屋のような一組が何品も少しずつ注文するような店ではないから、注文全体の総数もかなり少ない。体感では1/3ぐらい。調理する人が2.5倍になって注文数が1/3になっているから、体感としては居酒屋のだいたい1/4ぐらいの忙しさ。そりゃもちろん追われるときはあるけれど、まあなんだろう、大したことは無い。金夜も働いたけど、手を付けられないまま放置しなくてはいけないってことはほとんどなかったし。他の人も勤務時間の半分ぐらいは仕込みしてる感じ。だからこそ、20時には掃除はじめて21時には閉めはじめるなんてことが出来るんだろうな。
レストラン方式のイメージ
どちらが良いと言うこともない
一品の料理に対する効率性をいうなら居酒屋方式の方が効率的です。居酒屋方式はとにかく品数をこなせる。レストラン方式に慣れた人にとっては、自分以外の手(それもアルバイト)が介在することに抵抗がある人もいるかも知れないけれど、大量の注文を2人で捌くにあたって1人で完結させていたら絶対に捌ききれないし、アルバイトの手が入っても納得できるクオリティになるように指導するのも仕事のうち。ちなみに2人がそんなだから仕事中に仕込みをするなんてのはほとんど不可能で、簡単な作業(明太子から薄皮を外してほぐすとか、枝豆を枝から外すとか)はアルバイトの仕事だったし、仕込みは営業前に全社員総出で全力で行う必要があった。一方で負担の分散という意味では、レストラン方式の方が合理的。前いた居酒屋だって本当は調理担当スタッフを増やして、せめて3人ないしは4人にしたいだろうし、忙しい時は仕上げ係2人置いて6人体制でやればかなり安定するだろうと思うんだけど、残念ながら厨房の狭さがそれを許してくれないんだよなあ。ホールと近ければ「運ぶ係」なんてのも要らないし。ただ調理スタッフを少なくするのには、スタッフの技術レベルが揃っていなくても営業できるというメリットがあって。全員が料理に対して責任を持つレストランのようなスタイルだと、調理できるスタッフをポジション分確保する必要があるけれど、居酒屋の方は最低限2人いれば何とかしようがある。料理のクオリティを保てる。レストラン方式では1人でも技量が落ちるとそこが穴になってしまってクオリティを保てない。
何ごとも体験
僕が今のレストランの方式に飛び込んで(調理経験6年しかないのに)、厳しく指導を受けることなく既に半ば放置されているのは、何を評価されていきなりそこに入れられたのかわかんないけど結果的には「まあ出来んじゃん」と思われたんだなあという感じ。良かった。「こいつ使えねえなあ」っていう目で見られんの、一番キツいからなー。(もちろんポイント、ポイントで指導は受けているので、「放置されている」は僕の感覚であって実際は「きちんと見られている」のだとは思う)むしろあれだ、僕自身は「下のポジションからはじめられれば」なんて呑気に思ってたんだけど、そんな気楽なポジションなんかないのよな、そもそも。もっと厳しいレストランなら、ひたすら下ごしらえをする係とか、ひたすら皿を洗う係とかもあるのかも知れないけれど、そこまでではないし。
僕は別に居酒屋として独立したい気持ちも、きちんとしたレストランを開業したい気持ちもなくて、こじんまりと自分が出来る範囲でカフェをやりたいと思っているだけなので、そういう意味では近い将来自分の店を持つという情熱で料理に取り組んでいるスタッフとは熱量の差があるかも知れない。ただなんだろうな、いろんな人が色んなやり方を考えて試しているということと、どんなやり方にも良いところと上手く行っていないところがあるということに対して、純粋に興味があるんですよね。彼らは何を考えているのか。もしくは何も考えていないのか。明らかに僕だけ当事者感が薄い気はするけど、実際そうだからなあ。勉強になります。