求められているのは結局安くて簡単な仕事

求人募集の広告のイラスト
街を歩くともうとにかく街中に「スタッフ募集」「従業員募集」っていう張り紙が貼ってあることに気付きます。職場から家に帰る間だけでも、コンビニ、レストラン、雑貨屋、靴屋、薬局、クリーニング店、八百屋、スーパー、パン屋、持ち帰り弁当屋、カレー屋、居酒屋、カフェ、鉄板焼き屋などなど。接客業務がある業種が目立ちますが、恐らくそういう業種の方が張り紙の効果が高いからで、張り紙を貼っていない企業でも事務職の募集などはしているので、ほんとに社会全体で働く人が足りてないんだなあという印象です。最近話題になっているコンビニの24時間営業の話だって、根本的には人手不足の話ですからね。東大阪のセブンイレブンのオーナーさんだって、人手があってきちんとシフトを回せるのなら24時間営業を続けても良いと思っているでしょうし。すき家なんて人手不足で深夜閉店とか普通にやってたんで、セブンイレブンだってそうしたら良いと思うんですけどね。コンビニがインフラだとしてもコンビニはそのセブンイレブン1店舗だけじゃないし。



話がずれました。

そういうわけで社会に求人が溢れて、選り好みしなければ仕事はいくらでも見つかる時代ではあるわけですが、一方でじゃあそれで楽に食っていけるかというとそんなわけはなくて、どれもそれなりにしんどいわけですよね。少なくとも張り紙系の求人は暇な時間に小遣いを稼ぎたい(もしくは副業として収入を上積みしたい)人に対する募集であって、稼ぎを作りたいフリーターが目を留めるようなものじゃないわけです。先日閉店した某レストランに貼ってあった求人も、


  • 時給900円
  • 週5日以上勤務
  • 1日6時間以上

みたいなことが書いてあって、他の仕事が出来ないぐらい拘束する割には給料は最低賃金レベル、手取で多分12万くらいにしかならないのにどの顔で「フリーター募集」と言えるのかと思った覚えがあります。レストランの経営者はごく一般的な賃金感覚で掲出しただけで悪気はないんでしょうけど、でも、社会が求めている仕事、それに従事する労働者というのはそういうことなんですよね。


つまり、


  • 学習コストが低く誰でも出来るけれど一定の時間は必要になる仕事




  • 安い人件費でこなしてくれる人

を必要としているってことです。複雑なことや高度なことは人件費が嵩むんで出来るだけ自分でやる、残りの「雑務」を誰かに安くやってもらいたい。

まあいつの時代でもあったことだし、特別今の時代がどうっていう話ではないのかも知れないけれど、例えばよくある「シルバー人材センター」(地域向け高齢者活用施策的なもの)みたいなやつだって結局おなじことですよね。本人たちが納得しているから別に良いけれど、ある意味であれだって「やりがい搾取」ですからね。



求人の待遇改善は社会の改善とあんまり関係ないんじゃないか

だからまあなんだ、世の中に溢れている求人の待遇を良くしようと運動したところで、無駄じゃないですかねっていうのがこの記事で言いたいことです。その必要性はわかるけれど「軽作業を高い賃金でやってくれる人材」なんて誰も求めてないんですよ。そして誰かにやってもらいたい軽作業はなくならない。居酒屋の皿洗いがなくなることは、居酒屋が存在している限り(全自動食洗機を導入したとしても)ないわけですが、かといってその仕事に社員と同じ賃金を払う必要性もないし、もしその仕事に従事する人間を半分に出来れば払える可能性はあるけれど、まあ物理的に無理ですよね。

社会がそれを求めている以上、安い賃金で働く人は社会からなくならないし、社会に対する施策として求められているのはそういう安い仕事の賃金を上げることじゃなくて、どうやってワンランク上の仕事を出来るようになるか、その道を示すことなんですよね。アルバイトから飲食業界に入ろうとしているやつを見掛けたら、初期投資が掛かっても料理学校行って調理師免許を取った方がいいって言います。それは選べる仕事の幅が全然違うから。調理師免許あるだけで給与が何倍にもなります(仕事によるけど)。本当は技術や能力で給与が決まるべきだとは思うんですが、現実的にそんなのないですしね。給与は、雇用形態と職種と資格で決まるもの、です。


もちろん不当に安い給与で縛られている人に対して適正な給与を払うべきという活動は必要です。そういう人たちも大勢います。ただ安い給与の仕事にもそれなりの理由があるんだと思うのです。


解決すべきは、高い給与の仕事にどうやって就くかと、安い仕事を誰がやるのか、です。

それはなかなか難しいし、賃上げだけでは解決出来ません。