コンビニの雑誌の話

雑誌の棚のイラスト
去年の12月半ば頃、コンビニでの雑誌立ち読みに関する記事を途中まで書きかけたまま、完成させていませんでした。普遍的な話題だしそのうち仕上げればいいやと思っていたんですけど、このところ、コンビニの雑誌に関していくつか動きが出てきてもはや「普遍的」とは言えなくなってきたので、慌てて記事に仕上げているところです。



直近の話題と言えば、コンビニにおける成人向け雑誌(要するにエロ本)の販売停止に関する話。


日本のコンビニ、成人向け雑誌の販売中止へ  – BBCニュース

日本の大手コンビニエンスストア企業3社が、18歳未満への販売が禁止されている成人向け雑誌の販売取りやめを相次いで発表した。日本では、今年9月にラグビーワールドカップが開幕するほか、2020年夏に東京オリンピック・パラリンピックを控え、多くの外国人観光客の訪問が見込まれている。

国内で2万店舗以上を展開するセブン-イレブン・ジャパンは、今回の決定理由について、女性や子供を含む「すべてのお客様が利用しやすい環境づくりのため」だと説明している。

また、ライバル企業のローソンも、約1万4000店舗での成人向け雑誌販売の取りやめを決定した。

NHKなど複数の日本メディアは、すでに一部店舗で販売をやめているファミリーマートも8月末までに1万7000余りの全店舗で販売を原則中止すると報じている。大手3社の足並みが揃うこととなった。



コンビニでエロ本を買ったことがありますか?と聞かれたら正直に「はい」という程度には買ったことがありますが、買ったシチュエーションがどんなだったかって言うと、大体は旅先とか旅行の帰りとか。20代の頃は仕事帰りにってこともあったけれど、近年は大体すべてネットで事済んでしまうのでわざわざそのためにエロ本を手に取ることはなくなりました。コンビニにいても手に取っている人を見掛けるのは稀で、たまに暇そうなおっさんが食い入るように見ているぐらい。なんだこんな売り場が今でもあるんだろうと思っていたんですが……


コンビニの成人誌販売、これまでやめられなかった本当の理由:日経ビジネス電子版

立地によって売れ行きは異なる。都心のオフィス街ではあまり手に取られることがない。だが「住宅街近くの店舗では高齢男性が買っていく。ビジネスホテル近くや、地方の幹線道路沿いの店舗でもよく売れる」(同)。

 購入に後ろめたさをともなうためか、成人誌は他の商品と一緒に買ってもらえる利点もある。大手チェーン本部の商品担当社員は「コーヒーや新聞と一緒に買われることが多い」と話す。「(惣菜と一緒に買われることの多い)おにぎりや(食べ物と一緒に買われることの多い)お茶と比べても、併売率は驚くほど高い。単品で買っている人はほとんどいないのでは」

 人手不足が深刻さを増すなかでは商品管理の手軽さも魅力だった。1時間刻みで消費期限が定められる弁当・惣菜や、最新号が次々納本される週刊誌などと違い、成人向け雑誌は同じ商品を比較的長く棚に置いておける。「弁当は腐るが、エロ本は腐らない」。ある加盟店オーナーは、本誌の取材にそう話した。



なるほどねえ。確かにエロ本には旬がなく賞味期限も緩く定期購読者は少なく、様変わりしなくてもあまり影響がないし、僕自身が旅先で買ったことがある様に立地次第ではかなり利益を生む商品なんでしょうね。

要はその当たりの「メリット」と、他の客層に対する印象という「デメリット」を天秤に掛けて、場所を移動したり縮小したりしてきたんだと思いますが、このタイミングで大手3社が3社とも販売を取りやめると言うことは、社会の動きとして「デメリット」が「メリット」を上回ってきたということなんでしょう。アンケートを採ったら男性でさえほとんどが「エロ本売り場は要らないんじゃないですか」と言うと思うし、まあ仕方ないことなんでしょうね。



立ち読みと世知辛さの話

で、立ち読みの話です。

どんなことを書こうと思っていたかというと、最近立ち読みが出来ないコンビニがほとんどになってきて、複数の漫画雑誌を立ち読みして気に入った作品だけ単行本で買うというスタイルの自分からすると、とても生きづらい世の中になってきたなあということです。もちろん雑誌も単行本も読みたいなら金出してやれよという意見はわかるし、僕だってお金と場所が無限にあるならそうして上げたいところなんですけど、なかなかそういうわけにはいかない。現実的なスタンスから見ると、「面白いしストーリーは追いたいけど、単行本を買って手元に置いておきたいというほどではない」という作品が多くて、こういうスタイルになっているわけです。褒められたもんではないのは自覚していますが、仕方ない。

コンビニが立ち読みを禁止する気持ちはとてもよくわかります。近くに小中高大学があるコンビニだと顕著なんですけど、月曜や木曜の雑誌コーナーの荒れっぷりが酷いです。およそ商品とは思えない扱いをされているのを見ると、立ち読みが怒られるのはよくわかります。僕がオーナーだったら禁止はしないけれど、綺麗に扱ってくれとは思うだろうなあ。


でも、雑誌は返本できる

ただね、これは決して好きでもないし良いとも思わないシステムではあるけれど、日本の取り次ぎを通して納品されている以上、漫画雑誌って返本できるんですよね。立ち読みされて汚くなってしまい、売れなくなった雑誌でも返本できる。もちろん出版社の方でも返本率は管理しているでしょうし、ある意味でコストに織り込まれているはずです。意図しているかどうかはわからないけれど、ある程度の返本は販促費として考えられてると思うんですよね。返本作業はだるいという面はあるにしても、立ち読みが増えたことで店の「雑誌の」売上が減るとか損害が出るとかそういうことは無いはずです。もし雑誌も各店舗の買い取りだったらそうはいかないけれど。


コンビニは雑誌はもう売りたくないのでは

そうした事情を踏まえた上で、これだけ立ち読みを禁止する店舗が増えていると言うことはどういうことなのかなと考えるとに、要するにコンビニはもう雑誌なんか売りたくないんじゃないかと思うんですよね。立ち読みしてついでに何かを買っていく客が少しはいるとしても、そこの売上はもうあまり期待していなくて、出来れば雑誌売り場は縮小、代わりにもっと利益率の高い商品を置きたい。それが本音なんじゃないかなと思うわけです。付近のコンビニの中で随一の取りそろえを誇り、立ち読みフリークの聖地だったファミリーマートがあったんですが、去年の秋頃に雑誌売り場を縮小してプライベートブランドのラックを拡充しついで全ての雑誌の立ち読みが禁止されました。その前から「立ち読みするお前の態度が気に入らない」といった感じで立ち読みしている客にたびたび注意する男性従業員が現れるなど、その傾向はあったんですが、売上に貢献もしてないしという感じでそのまま禁止になった感じです。毎週あの店に集っていた人たちはどこに行ったのか。

結局、コンビニにとって雑誌はもはやどうしても必要な商材ではないってことなんですよね。今回のエロ本騒動の中で見つけたこちらの記事もそんなことが書いてあって、なるほどなあと思いましたね。


コンビニの雑誌は売れないのではなく邪魔な存在 – DANBO – Medium

昔、コンビニエンスストアは、オープン時は、セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマートの名前で呼ばれるが、3年が経過すると「コンビニ」という一般名称の店舗に変わり、お客の中の差異はなくなるため、同じメニューやサービスを提供しなければならないという同位競争という珍しい争いが起こることを教えてもらい、かなり勉強になったことがあった。

話しのきっかけは「コンビニでも雑誌は売れなくなっているのか?」という質問だったのだが、実は、コンビニの雑誌は売れないのでなく「邪魔な存在」などだということだった。



そう、コンビニはやること・売るものが多すぎるんですよ。店舗の大きさは変わらないのに売るものは増える一方で、そんな中でいつまでも窓際の広い領域を占めている雑誌売り場というのは確かに異様です。立ち読み自由でない限りそこに人がいるのは稀で、1冊の単価はコンビニの中では高い方かも知れないけれど、売上貢献度から考えるとどうなのという……そりゃ減らすよね。僕がオーナーでも減らすわ。「立ち読みが損になってるわけじゃない」と思ってるオーナーさんであっても、よほど余裕のある店舗じゃない限り、立ち読みの是非とは別に雑誌コーナーの縮小は考えるかも知れない。仕方ないことだけれど、でも、なんつうか雑誌の発売日に色んな年齢層の「男子」が雑誌売り場に集うって言うの、ある意味で恒例だと思っていたのに、そういう風景はもう過去のものになりつつあるのですね。世知辛いなあと思って。それを看過する余裕はコンビニには、そして多分社会にももうないんだろうな。


立ち読みが出来なくなったら僕は

このまま全てのコンビニが立ち読み禁止になって、漫画週刊誌が読めなくなったら、僕個人はマンガをほぼ買わなくなるだろうな。買うとして、アニメ化されたのを見てすごい気に入った作品の原作を買うくらい。最近だと「ゆるキャン△」とかそうだけど、それだけになるだろうなあ。それがあるべき未来です、といわれたら、うんまあそうなのかもしれません。世知辛いなあ。