道具へのこだわりとパフォーマンスと
その昔は、仕事で使うものにこだわっていたときもありました。お気に入りのキーボードはダイアテックのMajestouchで、メカニカルで深めのキーが好きでした。軽いものより剛性が高くしっかりしたものが好みで、キーは英字のみで十分だけど変換は欲しいから日本語キーボードの方が良い……普段自分が気に入っているものを使っている分、普段と違うものを使うと違和感があってストレスでした。
プログラマの仕事を辞めて、前ほどはキーボードを叩かなくなり、また自宅で高いキーボードに珈琲をこぼすことが立て続けにあって以来、そういうこだわりはなくなってきました。今家で使っているキーボードはLogicoolの無線キーボード。
いかにも安っぽい打ち心地で打鍵感もふにゃっとしていてキレが無く、そのせいで打ち間違いが多いんじゃないかとさえ思いますが、何より安い。2,000円くらい。そして途切れることなくしっかり動くし電池の保ちも悪くない。一応耐水と書いてあって確かに少しくらいなら水をこぼしても大丈夫だけど、大体の場合キー単位で動かなくなって交換。Amazonの注文履歴を見返してみると2年に1回くらい壊して新しいのを買っていて今使ってるのが3台目みたいですが、年1,000円と考えればまあ安いもん。
パートタイムでエンジニア的なことをしていたとき、職場で使っていたのはなぜかMacばかりで、キーボードは前回が普通のテンキー付きフルサイズキーボード、そして今回はテンキーのないコンパクトな「Apple Magic Keyboard」。普段Macは全く使っていないものの、前職と合わせて2年以上触っているので、Macのキーボード自体は慣れていて大丈夫。ただこのキーボードコンパクトなだけあって、キーボードのピッチが若干狭いんですよね。キーも、Appleのキーボードはみんなそうだけど、ちょっと盛り上がったボタンみたいな感じで、左右との境界が小さいので、つい隣のボタンを押してしまうと言うか押し間違えそうになっても感触で気付きづらい。ブラインドタッチは出来るけれど、直す回数が多くて……OSもキーボードもPCですら道具を選ばなくなって、ベストマッチとまではいかなくても何を使ってもストレス無く作業できるようになったと思っていたのですが、このキーボードのピッチは苦労するな……
そんなこと思ってたけど、3ヶ月くらいで慣れましたね。逆に普段使いのキーボードでTYPOが増えた時期もあったけど、それももう大丈夫。人ってのは環境に適応していくもんだなあと思いました。
プロとして自分が使う道具にこだわっていくのはとても大事だと今でも思っていて、実際、色んな包丁を使ってきてそれだけは自分専用のものを持とうと思って年末にちょっといい包丁を買ったんですけど、でも「どんな道具でも使いこなす」というのも大事なんだよなと改めて思いました。なんだろうな。働いていると道具の善し悪しを選べないときもあるけれど、そんなときに当たった道具次第で自分のパフォーマンスが大きく左右されるのもプロとしてはダメだと思うのですよ。道具へのこだわりを持ちつつ、道具を選ばずに動ける柔軟さを。特定の道具とのコンビでしか働けないようでは、まだまだなんでしょうね。
「弘法筆を選ばず」というけれど、空海さんだって筆は選んだと思うんですよ。お気に入りの筆もあっただろうし、書くものによって適切な筆の選択もあったでしょう、でも例えそれが自分の望み通りにならなかったとしても、その時手にした筆で、高いパフォーマンスを残せる。本人の中では「ああ、あの筆があったらな」と言うのが合ったかも知れないけれど、でも周りから評価を得るに足る仕事は出来る。んで、そうなるためには結局、道具を選り好みしていてはダメなんだってことなんだろうなあと思ったのです。なんでも使える方が便利だしさ。
まあでも、このキーボード。可愛くて軽くて無線が安定してて良いキーボードですよ。テンキーが無いのがツラいときもありますが(「+」の入力がシフト押しながらになるのがホントツラい)、それ以外は大丈夫。あまりに安定しているせいで最近まで優先だと思ってケーブルを繋いだまま使ってました。もう半年も使ってるのに!先週くらい仕事中、ケーブル外して無線だってのがわかって自分の間抜けさに大笑いしそうになりました。可愛い奴め。