熱さに対する強さ

厨房で必要になる基本的なアビリティの1つに「熱さに強いこと」というのがあって。熱いものを持てるかどうかで効率が変わるし、場合によってはクオリティも変わります。例えば、熱いものが持てず盛りつけるのに時間が掛かったら、お客様のもとに届く頃には冷めてしまうわけで、熱いものは熱いうちに盛りつけて出さなくてはならない。


長いこと飲食やってる人はみんな熱いものを平気で持つんですけど、あれ、別にその人の才能とかそう言うんじゃなくて、繰り返し熱いものを持ってだんだん持てるようになるってだけなんですよね。だから入ってすぐに持てなくても仕方が無いし、でも「僕は熱いものを持てない」で終わりってわけではない。僕も元々熱いもの、全然持てなかったのですけど、必要に迫られてと言うか訓練のつもりでというか、ギリギリを攻め続けていったら結構熱いものを持てるようになってきました。継続って大事ね。


で、「熱いものを持てるってなんなのか」というのを最近考えていて、思い至ったことがあって、それは「熱いものを持てる」っていうときの能力を測る基準は「熱さ」つまり「対象物の温度」だけではなくて、「時間」つまり「どれくらい長い間持っていられるか」ってのもあるんだなあということ。

どんなに訓練積んだって、熱いものは熱いんですよ。熱湯が大丈夫になったりしないし、火から下ろした鍋をすぐに素手で持てるようにはならない。それよりも、熱々のものを持てないと感じるまでに何秒かかるか?というのが仕事の上では有効は物差しで、僕が3秒しか持てないものでも30秒持つことが出来たら、その人にとっては、仕事の上では「熱くない」とほぼ同義。


って書いてたら、なんかこれ、水泳の息継ぎとか、ザ・ワールドの時間を止める能力とかに似てるなあ。時間さえ止まっていれば、存在していないも同じ。

直感的には「より熱いものを持てる」という認識で正しいとは思うけれど、でも実際には、違う基準の言葉上の置き換えでもあるなあという……何言ってるかわかんないかもしれないけど。