危険ドラッグ、クラブ来場者の2割が経験 厚労省調査:朝日新聞デジタル
東京都内で開かれたクラブイベントの参加者で、過去に危険ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ)を使ったことがある人が2割以上いることが、厚生労働省研究班の調査でわかった。研究班は「クラブに集まるのは学生や会社員などごく普通の若者。危険ドラッグがいかに広まっているかを示している」としている。
クラブ来場者4人に1人が危険ドラッグを使用 : J-CASTニュース
DJが奏でる音楽とダンスを楽しむ「クラブ」来場者のうち4人に1人が危険ドラッグを使用した経験があることが厚生労働省研究班の調査で2014年8月8日に分かった。
この調査は12年8月から13年11月にかけ東京都内で開催された4回のクラブイベントで行われ、16歳以上の男女307人の回答のうち使用経験があると答えたのは75人で全体の24.4%だった。使用場所は自室が37%と最も多くクラブでの使用も16%あった。入手経路は友人や知人が61%と最多で、販売店は24%だった。
記事が公開された直後から「たった4回の調査で何が解るんだよ」「特定のクラブだけ調べてクラブ全体に敷衍するのは無理があるだろ」という意見が多く、調査としても記事の体裁としても杜撰だなあという印象だったのだけど、どちらの記事も研究自体のソースを掲載していなかったので、調査が適当なのか記事が適当なのか見分けが付かなかった。「厚生労働省が」って言うから厚生労働省にあるのかなと思ったけど見つからなかった。
……で、そのソースというのはこちらになります。
http://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/drug-top/data/researchSHIMANE2013_2.pdf
記事では「厚労省調査」となっていたけど実際には厚生労働省の補助金を得て、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所の薬物依存研究部が行った調査であり、報告書自体も独立行政法人国立精神・神経医療研究センターのサイトにありました。
報告書には記事には掲載されていない情報がいくつか掲載されています。
- 欧米で行われているドラッグの使用状況を調べる調査を東京都内でも行ったものである
- クラブで調査を行った理由は、クラブ利用者層におけるMDMA等の薬物使用率は、一般人口に比べてはるかに高いことが報告されているため
- 調査は同一オーガナイザーの運営するイベントで行われた
- 音楽ジャンルは、すべてreggae/dancehall
で、具体的にどんなことを調べているかというと、クラブがいかに危険な場所か……ではなく、
- 脱法ドラッグを経験している若者が実際に使用しているドラッグの種類
- その後の薬物依存に繋がる可能性があるかどうか
- ドラッグを使用する場所やシチュエーション
- セックスドラッグとして利用されているかどうか
といった感じの内容。
結果として「調査対象の人の1/4が脱法ドラッグ経験者である」というデータは出ているものの、報告書全体の印象としてはその割合を調べたかったというよりかは、脱法ドラッグ経験者をより多く集めるためにそういう人が集まる場所(クラブやイベント)を選んで出向き、脱法ドラッグの使用状況を調べたというのが正確なようで、前述の記事のように「1/4」に焦点を当ててクラブの危険性を煽るような報道の仕方は、報告書の主旨からすると適切では無いのではないかな。
クラブの安全性を訴えるためには、クラブでのドラッグ使用について広範に網羅的な調査が行われるべきだなあとは思うのですけど、それとは別に、この調査は脱法ドラッグの使用状況や危険性についての研究なのでそこまで求めるのは酷かなと。ちゃんとソースを読まずに(もしくは読んだ上で敢えて)、「ほらね、クラブってみなさんが思ってるように危険なとこなんですよ」みたいな煽り記事を書いた朝日新聞と、それに載っかったJ-Castはもうちょっと反省してください。
終わり。