京都市の財務状況について維新の会の市議候補の人が何か言ってたので

東京都議会選挙で民主党が惨敗しまして、来月行われる参議院選挙もかくなりやという感じでありますが(というのも今回の東京都議会選挙は地域に根ざす問題が争点にならず主に「アベノミクス」といった政党の国策が争点になったため)、個人的には日本維新の会がたったの2議席しか獲得出来なかったのが印象的でした。ああ、去年秋頃の勢いはどこへ行ってしまったのか。まあどっか行ったままで全然構わないし、どっかに行った理由もはっきりしてるんで別に良いのですけど、そういうところはきちんと見られてるよねと思った次第。

んで、そんな東京の人にとっては日本維新の会など小石以下の存在だと思うのだけど、関西だと案外そうでもなくて、大阪ではまだまだ橋下大阪市長の露出は多いし、その積極的なスタイルを支持する人も関東よりは残っている感じです。来月参議院選挙と一緒に市議会議員の補欠選挙が行われる京都市では、大阪に比べるとかなり低いテンションではありますが、日本維新の会としてはまだ「行ける!」と思っているようで、結構積極的な選挙活動が既に行われています。頑張ってはるのね、という感じ。日中普通に選挙カーが回ってくるんですけど、あれってどこかに訴えても良いんですか。うるさいんですけど。


そんな日本維新の会の京都市議会議員候補の人がその選挙カーでこんな主旨のことを言ってました。

京都市の公務員トップは退職金として2,000万円以上をもらっています。京都市の財政に占める人件費の割合は5割を超えている!みなさん、おかしいと思いませんか。民間で人件費が5割を超えているような、そんな会社がありますか!我々維新の会は大阪市の改革に負けない規模で、京都市において積極的に改革を行っていきます!

なんというか、よくもまあそんな口から出任せを言えるもんだと、呆れましたね。そんなもんですよねえ。ありもしない事実を並べ立てて、自分が綺麗に見えさえすれば良いっていうのが日本維新の会の手段なんですかね?党首のスタイルから推して知るべしって感じなんでしょうか。



人件費が5割超えてるってどこの沈没船だよ

こちらの資料を見れば一発でわかりますね。

京都市:財政のあらまし
22年度決算参考データ集(ファイル名:22kessansankou.pdf サイズ:244.89 キロバイト)

この資料によると、平成22年度決算における人件費は1,206億円、歳出に占める割合は15.5%です。5割という数字はどこから出てきたのか?というと、人件費に「扶助費」「公債費」を加えた「義務的経費」の割合から来ています。平成22年度決算ではこれが48.5%。この数字は政令指定都市の中では4番目に高く、そういう意味では確かに財政状況は良くないと言うことが出来ます。

ただ「人件費」はこの数年継続的に縮減されており(たとえば公務員数は平成19年度の16,153人から平成24年度には13,702人にまで減っている)、義務的経費を押し上げている要因は「扶助費」です。「扶助費」というのは生活保護や児童福祉、老人福祉などに宛てられる経費であり、政令指定都市の中で高齢化が進んでいる京都市の場合、その部分の経費が大きいのはある程度しかたありません。福祉を切ってでも減らすってなら話は別ですけど。

仕方なくないのは巨額の公債費ですが、市民1人あたりの公債費は政令指定都市の平均を下回っている上、年1.7%弱と緩やかなスピードではありながら、その根本理由である鉄道事業の改善などを含めながら徐々に改善して行っており、「年々膨らむ赤字」というイメージではありません。


大阪市の改革を超える?

確かにいろいろと改革は行ってきたんだろうなと思います。Togetterにもまとめられてましたし、そうなんでしょう。

橋下市長の実績 – Togetter

だけどね、財政状況で言ったらば、大阪市の財政状況っていつまで政令指定都市ワーストの座を守り続けるんですかって言う話なんですよ。「義務的経費」の話をするならば、市民1人あたりの人件費は相変わらずトップだし(2位が神戸で3位が京都。おいおい、近畿地方どうなってんだよ)、市民1人あたりの扶助費は断トツでトップ(理由は高齢化率はそれほどでもないものの、生活保護率が異常に高い)。また、公債費も莫大な額になっています。市民1人あたりの公債費は、神戸についで政令指定都市で第2位。大阪市の見込みでは平成25年度まで増え続け、それ以降減る予定になっていますが、ホントにそうなるの?平均までさがるのはいつ?

そういう意味でね、財政について語ったあとに、大阪での改革の実績をあげられても見るべき点なんかないんです。まだなんの結果も出てないじゃん。むしろ、大阪市と同じノリで伝統芸能への補助金廃止とかされたら困りますよ。



現在の京都市政の施策を超える具体策を持ってきて欲しい

昨日も、四条大宮の駅前で演説されていて、たまたま通りかかったんで信号待ちの間少し聞いてたんですけどね……まあなんというか、素人でも眉唾だと思うこと言ってりゃ支持も離れるよねという感じ。運動員の方がチラシを配ってたんですけど、苦笑いされて断られる様がちょっと可哀相でした。まあもちろん僕も受け取りませんでしたが。別にね、党首の政治的発言とかどうでも良いんですよ。地方政治ですから、地方の問題に正しくフォーカスしてくれる人なら、どんな地方政党だって構わないんです。逆に言えば的外れな煽りを入れてくるような候補は、それが例え京都出身だろうと信用できません。

敢えて名前は挙げませんけど、この候補の方は、日本維新の会の実績をアピールして選挙戦うのは無理じゃないかなーと思います。それしかないんでしょうけどね。もう少し京都市政の現状に寄り添った、正しい改善案を持って選挙戦を戦うべきですよ。僕個人は京都市政が現状実施している改善案は十分ビジョンを持ったものだと思いますし、それを超えるものでないと評価出来ません。今の京都市政はそれくらいの勢いで頑張ってますよ。知らない人は京都市民新聞なり、京都市議会広報なりを読んでください。それよりもっとやれるという案があるんであれば、支持しましょう。

具体策を持たずに弱点だけを煽って、党首人気で勝つっていうのはもう流行らないです。残念ですけど。




その他参考資料

京都市:財政のあらまし
京都市交通局:財政状況について
patmapランキング | 日本全国版財政指標(2011)=将来負担比率[%](2011)(財政関連データ)
総務省|地方公共団体の財政の健全化|早期健全化基準と財政再生基準
扶助費 とは – コトバンク
大阪市市政 「大阪市予算の概要と財政の現状」について(平成25年4月)
大阪市:文楽補助金凍結 廃止か継続か 橋下市長と技芸員、きょう意見交換 「努力する構造に転換を」- 毎日jp(毎日新聞)