騎手の体重制限について(TARI TARI第8話から)

TARI TARI 第8話「気にしたり 思いっきり駆け出したり」



最近お気に入りのアニメ「TARI TARI」。

詳しい話は割愛しますが、その中の登場人物の1人に競馬騎手になりたいと願っている女の子がいます。彼女は募集要項に体重制限があることを知り食事制限を始めるのですが、絶食に近い無理な食事制限が体に良いはずもなく倒れてしまいます。ああ、沙羽ちゃん…。ぎゅっと抱きしめてあげt…えー、体重制限が何キロかというと…なんと44kg。一般的に考えて女の子でさえ44kgっていうと随分痩せている方です。しかも、身長に対する制限もあります。成長期に入学することもあり、両親が背が高く身長が伸びることが予想される場合には失格になることもあるそうです(作中のセリフより)。


なんでそんなに厳しいのか…

思春期の娘に対して厳しく当たる父親が、電話で問い合わせて競馬学校と口論するシーンがありますが、この厳しい基準はなにもただ厳しくするためとか志望者をふるい落とすためとかではなくて、むしろ志望者のためにある基準なのです。この基準をクリア出来ずに入学し卒業したとしても、その騎手は恐らく乗り馬がありません。

なぜか?




競馬では馬の年齢や性別によって課せられる負荷(斤量と言います)が決まっています。これは馬以外のすべての重量(騎手、鞍など馬具すべて含む)になります。一般的には54kgから57kg、ハンデ戦などでは48kgから60kg程度までのレンジになります。また新人騎手にはその成績によって最大で3kgのハンデ(勝ち数の少ない新人騎手が乗る馬は少ない斤量で走ることが出来る)があります。馬具の重量は一般的に2-3kg程度なので、新人騎手は48kg以下を維持する必要があるわけです。48kgを超えても斤量内に収まれば馬には乗れますが、新人にとって一番必要なのは経験。とにかくたくさんの馬に乗る必要があります。斤量が少ない馬はベテランも嫌がるのでチャンスです。そういう意味で48kgを維持する必要があります。

また、競馬騎手というのはスポーツ選手です。競馬学校入学時にはほとんど筋肉が付いていないので、馬を追うために必要な筋力を付ける必要があります。当然その分体重は増えます。脂肪を落としながら筋肉を付けると言っても限界がありますからね。

そういう事情を考えれば…募集要項の「44kg」というのはとても現実的な数字です。それ以上の体重では恐らく騎手として必要な体を作ることが出来ません。筋肉を一切付けずに脂肪だけを落として体重を維持してもプロにはなれませんし。見たところ沙羽は両親共に良い体格をしていますし、本人も女の子としては上背がある方です。時間を掛けて節制すれば体重を維持することは可能でしょうけれど(例えば武豊の弟に当たる武幸四郎は177センチもあります)、高校3年生になってからでは…


そういうわけで沙羽ちゃんが今から競馬騎手になるのは難しいかも知れませんが(来夏なら楽勝っぽいけど)、でも競馬学校には騎手課程以外に「厩務員課程」というのもあります。本人の志望は騎手と言うことなのですが、なんとなく厩務員の方が向いているんじゃないかなと思ったりも。そこから調教助手になって自分の管理馬を世話していく方が…なんて思うんだけど、でもそれはきっと彼女の希望とは違うのでしょうね。厩務員の方が楽かといわれれば、それは違うわけですしね…

どうなってしまうのかなあ…心配。



余談

作中で「44kg」っていってますが多分これは勘違いですよね。JRA競馬学校の募集要項によると制限体重は年齢によって44kgから46.5kgまでの幅があります。高校3年生なら現在17歳で46.5kg。

JRA|競馬学校ホームページ – 募集要項

まぁ46.5kgでも十分に痩せていますが、それくらいなら無理な食事制限をしなくてもクリア出来るんじゃないかなぁ。簡単ではないですけどね。