システムを便利にすればするほど作業者の能力が劣化するというジレンマ

肉中心のお総菜


至極当然なのですけれどね。


今現在、すべて頭で記憶しその記憶を元に手を動かしてしている作業があったとします。例えば特定のお客様を記憶しておき、そのお客様からの注文の場合には必ず領収書を封入するとか、昼間は受け取ってくれないことが多いので何も指定が無くても夜指定で出荷するとか。もっと単純に「今日のランチメニュー」がなにか把握するとか。こうした作業は、担当者が十分に優秀であり、かついつも通りのパフォーマンスを発揮できる状態であれば特に問題は起きませんが、どちらかが欠けた場合には必ずミスに結び付くため業務フロー上のリスクとなります。

このリスクを減らすためには、自動化するなりリマインダ機能を付けるなりして人間が記憶しなくてはならないことを減らし、誰がやっても滞りなく作業できるような形へ持って行くことが必要です。業務フローの設計としてはそれで合格点であり、完了であり、計画通りに進めば確実に良い結果に到達するはずなのですが、機械とは違って人間相手の最適化ってのはなかなかそう上手くいきません。






具体的に言うと、今まで記憶する必要があったことで鍛えられていた記憶力が、その必要が無くなったと同時に衰えます。お客様の声に対して柔軟に対応していた対応力が硬直します。必要な情報はすべて画面に表示されるので何も考えなくなり、「単純ミスの繰り返し」は減りますが、大きなミスの頻度が上がります。で、全体としては思っていたよりも最適化の効果が得られない。

結果として今度はその大きなミスを検知するための機能を追加することになり、ますます機能は膨らみ人は考えなくなり、少し前までは対人感のあった作業があっという間にモニター相手の単純作業に変わります。そうなると残った手作業の部分(荷物の梱包とか)も雑になり、今度はそのために梱包を支援する機械を導入し…どこまで続く最適化の連鎖。


システム構築を目的にエンジニア視点で「改良」を考えるとどうしてもこういう流れになりがちなのですが、最近はミスを防ぎつつ作業者の能力にチャレンジできるようなシステムは作れないだろうか…ということを考えています。単純に人間のやる作業を削っていくのではなくて、どこかで人間に裁量を与えるとか手間を掛ける場所を設けるとかそういう部分を織り込むことによって、例えその部分ではコストが上がったとしても業務全体に良い影響をもたらすような…そんなシステムが作れないかなと。

ミスを防ぐためにはストレスフリーなシステムを目指すだけではダメで、作業者にある程度ストレスを掛け続けることで作業者から緊張感や集中力を引き出す…というシステムをリスクとコストを横目に見つつ作れるのがベストだなあと思ってます。まあ概念だけで、具体的な形には落とし込めていませんけどね。ちょうど職場でシステムの改変期なのでそんなことをつらつらと。