会社更生手続き中の日本航空が、再建に向けてコスト削減を加速させている。
(中略)
徹底した効率化で生産性向上を目指すトヨタ流の「カイゼン」を取り入れた。2006年にトヨタグループの豊田自動織機とコンサルティング契約を結び、現場で実践している。日航の計画では、航空機を減らす影響もあり、10年度の整備費は前年度より約170億円減る。
「半官半民企業だからこんなことも出来ない」というのはまぁ解る気がするんだけど、でも本当の所はどうなんだろう?別にカイゼンなんかしなくたって余裕で利益出てたってことじゃないのかな。航空業界は景気や世界情勢に左右される「浮き草商売」的な一面があり、大きな赤字を出すこともあるけど構造的に航空会社が不要な社会になったというわけではないし、明日は明日の風が吹く的な業界ではないんだろうかと。だから「カイゼン」する気はさらさら無かったし必要すらなかった…
日本航空の連結決算を見てみよう。
そんなストーリーを考えたんだけど、印象論で話しても仕方がないので、日本航空の最近の決算がどうなっているのか、見てみよう。参考にした資料はこの辺。
JAL投資家情報 – 決算情報
JAL投資家情報 – 過年度データ
これを元に1995年から2008年までの年度別の営業収益(要するに売り上げ?)と純利益をグラフにしてみるとこんな感じ。
んー。
これを見て「楽に儲かる商売」なんてことは言えないわなー。グラフの6割弱で赤字、しかも100億円単位。あと、浮き沈みが大きすぎ。直近14年分しかないし途中でJASを統合したりもしてるんでだいぶ数字が変わってるけれども、それにしても800億円を超える赤字の次の年が300億円を超える黒字で、その次の年がまた500億円弱の赤字とかどういう企業なの…航空業界こええ。
全日空の連結決算も見てみよう。
せっかくなので、全日空の連結決算も見てみる。参考資料はプレスリリースの決算情報から拾いました。
企業情報
これを元に1998年から2008年までの年度別の営業収益(要するに売り上げ?)と純利益をグラフにしてみるとこんな感じ。
どうでしょう。
前年度600億円あった利益が次の年に赤字になるとか、やっぱり発狂しそうなくらい浮き草ってるのは変わらないですが、日本航空に比べると圧倒的に純利益が安定してますね。売り上げは半分くらいしかないのに。
プレスリリースを眺めていて全日空が日本航空と違うな、と思うのは、赤字になったり株式配当が無くなったりすることに対する反応が素早いということでしょうかね。その都度、業務をいかに改善して利益を出すかという報告があり、実際それで経営が上向いてます。
全日空の「経営再建プラン」について (1998年6月22日)
ANAグループ2003-05年度の「コスト削減」計画(2003年2月24日)
09年度緊急収支改善策の内容について(2009年7月31日)
僕は別に株主ではありませんけど、仮に株を買うとしたらどちらを買いますか?と聞かれればそりゃ全日空だよねぇ(日本航空は上場廃止してますけどね)。航空業界が不安定で、企業利益が外因によって大きく左右されるのは仕方がない、それでもなんとか安定した飛行を心掛けるべくその都度対策を打っていく、そんな姿勢を全日空の経営陣からは感じます。あ、なんか飛行機の操縦っぽい。
で、日本航空どうなのよ
率直に言って、全日空を見習うべきですよね。両者を比べてみれば、日本航空にカイゼンの余地がなかった訳じゃなくたださぼってただけだってのがよくわかりますよね。経済的な乱気流の中、きちんと企業経営を操縦できてない。それが日本航空。
日本航空の企業規模、フラッグ・キャリアとしての影響力、政治力による支援などを考えると、多分ちょっと頑張ったくらいでまた利益が出ちゃうと思うんですよね、JALは。「こんなこともしていなかったのか」をちょろっとやるだけですぐに利益出ちゃう。豊田自動織機にしてみれば、こんなに美味しい商売ないっていうもんです。
でもそれじゃあダメなんだと思うんですよね…もうちょっと痛い目見ないと。頑張ってる企業が頑張ってなかった企業の売り上げ半分とかなんか変。
全日空も世界情勢から見て厳しい経営ではあるとは思いますけど、航空業界がより発展するためにも、是非頑張ってもらいたいと思うばかりです。