- 有能な怠け者。これは前線指揮官に向いている。
- 理由は主に2通りあり、1つは、怠け者であるために部下の力を遺憾なく発揮させるため。そして、どうすれば自分が、さらには部隊が楽に勝利できるかを考えるためである。
- 有能な働き者。これは参謀に向いている。
- 理由は勤勉であるために自ら考え、また実行しようとするので、部下を率いるよりは参謀として司令官を補佐する方が良いからである。また、あらゆる下準備を施すためでもある。
- 無能な怠け者。これは総司令官または連絡将校に向いている、もしくは下級兵士。
- 理由は自ら考え動こうとしないので、参謀や上官の命令どおりに動くためである。
- 無能な働き者。これは処刑するしかない。
- 理由は働き者ではあるが、無能であるために間違いに気づかず進んで実行していこうとし、更なる間違いを引き起こすため。
ハンス・フォン・ゼークトはドイツの軍人で、第一次大戦後のドイツ軍を再建した人。まぁ本当にゼークトが言ったかどうかはわからないし、そもそも軍隊に関する用語であるから、このまま実社会に持ってくるのは無理があるとは思うけれども、1つ1つ例を当てはめながら「チームにどんな人間がいたら仕事が良く回るか」と考えてみると、あながち外れてもいないかなと。
で、ここから思う。
要するに、有能な怠け者と無能な怠け者を如何に働かせるかに、管理者のモチベーション・マネージメントのコツがあるんじゃないのかな。
自分自身では日々成長したい、しようと思っているけれども、一般的に客観的に見て、頭の良さや勤勉さを後から変えようとするのは結構大変。頭の悪い社員は少し状況が変わるだけで似たような失敗を繰り返すし、遅刻が多い社員は何度叱っても繰り返す。それを叱責するのは簡単なんだけれども、まぁなかなか変わらない。そういう人を排除していくというのも方法論としては正解かも知れないけれども、僕が好きなのはそういう人間も含めて上手くモチベートするようなタイプの人。
何らかの形で部下を持っている人で、「もっと頭が良くて働き者の人間がたくさんいればいいのに」ということを言う人は多い。気持ちはわかるけど、上の例を念頭に置きながら考えてみれば結局、「自分にはチームのモチベーションを上げることは出来ない」「だから有能な人が来て自分の代わりにやって欲しい」ということなんじゃないかと。それを「部下がバカだから仕事が回らん」と言っちゃうのは無責任ってものですぜ旦那、とか思うわけです。
だいたい上手く行かない組織は「無能な怠け者」に甘すぎるか、「怠け者」に厳しすぎるような。無能か有能かを判断するのは大変だから、「怠け者」かどうかを基準に切ってしまえと。おかげで、5%の「有能な働き者」と95%の「無能な働き者」だけが残って仕事が硬直化したりする。なんだかなぁ。
重要なのは「有能な怠け者」をいかに上手く探し出し、その人間のモチベーションを如何に上手く管理するかだろうなぁと思うわけです。仕事が出来るかどうかはともかく、他人に仕事をさせるのが上手い人ってのは確かにいるからなぁ。その人がそこはいることでなぜか回るみたいな人。
ちなみに「有能な怠け者」は「無能な働き者」からの屁理屈による攻撃や妬みの矢面に立っていることが多いので、早急な保護が必要です。保護のタイミングを逃すとさっさと辞めてしまったりするし。人を見るのって難しいよね。