「このビールを買ったのはいつのことだったっけ…」
そんな風に思い出を振り返ってしまうようなビール、「サミクラウス」。
スイスで造られたビールでアルコール度数が14.4度とビールにしては異常に高いことでも有名ですが、それ以上に特徴的なのは瓶内で「長期間熟成させて飲む」ビールであるということ。特殊イーストの作用によるものらしいです。
自宅で保管していたサミクラウスはそんなリニューアル前のもので、醸造は1997年。ラベルには「飲み頃:2007年頃が良いとされていますがお好きな時期にお召し上がりいただき、甘味、酸味、熟成の違いをお楽しみください。」とあり、実はもったいなくて飲めないまま3年さらに過ぎてしまっています(苦笑)それが少々不安だったのですが、思い立ったときが時期だとおもって、思い切って開けてみました。
注いでみて一番に感じるのは、とにかく香りが違う。ビールらしさも感じないことはないのですが、それよりもこれはむしろワインに近い。熟成された甘くそれでいて苦い酸味のある入り組んだ香りがします。凄く香ばしい。
ビールなのに泡は殆ど立ちません。そのあたりもワインっぽい。
お味の方はと言うと…美味しい!
正直「ビールか?」と言われるとビールじゃない気もしますが、飲み物としてこれは美味しいです。香りの時と同じように、酵母の甘味と苦味、熟成したワインのような酸味、それが一体となって繊細な味を作っています。なんだろうなぁ、これ。過去に飲んだことがあるようでもあり、まったく飲んだことがないようでもある、絶妙な味です。
このビールとは、都合13年間、間に2度の引っ越しを挟みながら付き合ってきたという自分の「歴史」があるので…その分思い入れも強いんでしょうね、きっと。あー何か色々思い出すわ。
このビールを買ったのは1997年、その時1回切りで、家にあるのもこの1本だけ。なので次に飲めるのはまた何年か後ということになります。毎年サンタクロースの誕生日である12月6日(そうなのか?)に合わせて限定醸造されるとのことなので、また何年か後に振り返るべく、何本か買っておこうと思います。このビールを何かの記念日に開ける、というのもなかなか良いんじゃないでしょうか。
ちなみに。
最近のサミクラウスはリニューアルして容量が250mlから330mlに増え、原産国はスイスからオーストラリアに変更され、「5年後が飲み頃」とされているようです。1997年当時はリニューアル前のもので「10年後が飲み頃」となっていました。ベルギービールJapanさんのレビューによると、「心なしか以前のサミクラウスより色が薄い」「モルトの香りが全面に出ており、以前のブランデーのような複雑な香りはあまり感じられない」とあり、何か組成が変わった(もしくは会社自体が変わった)のかも知れません。
…そう思ってwikipedia(英語版)で調べてみたら驚くべき記述が。
Schloss Eggenberg – Wikipedia, the free encyclopedia
Hürlimann’s founder Albert Hürlimann was a world leader in the scientific study of yeast, and the brewery has a long history of yeast development. The Samichlaus Christmas beer was first brewed in 1979 for sale in 1980. Production continued annually until 1997, when the brewery closed. In 2000, it returned, this time produced by Schloss Eggenberg in collaboration with the original Hürlimann brewers, using the original Hürlimann Samichlaus recipe.
簡単に日本語にすると、
イースト酵母の研究者として有名だったAlbert Hürlimannが1979年から醸造していたビールだったが、ブリュワリーが閉鎖されたこともあり1997年に生産が終了した。2000年にSchloss Eggenberg社(オーストリア)がオリジナルレシピを使用して醸造することで生産再開。
なるほどそうだったのか…
ということは、僕が飲んだこのビールは、オリジナルのサミクラウスとして醸造された最後のビールだったということでしょうか。飲み頃が3年過ぎてしまったことを考えると、もしかしてこれ以上古いオリジナルのサミクラウスは、もう現存していないのかもしれません。。
(世界にはもっと長期間保存している好事家がいそうな気もしますけれども)