全体に閉塞感がある業界ならそれを何とか打破したいと考えるのが当然だと思うし、もともと他人のしないことを先取りして優位性を築くようなスノッブ気質のある人なので、先行者利益とアーリーアダプターに憧れる気持ちも理解できるのだけれども、なにぶん現場ではなく本を通しているので1週遅れているのは否めないし、執筆者のフィルターが掛かっている情報を鵜呑みにしているような空気がある。そう仄めかすと否定するけれども、実際の行動はそのまんま。
例えば、とある1冊のビジネス本に感銘を受けて社員への要求の性格が変わったり、Kindleが受けているというニュースを読んでこれからはKindleが来る、コンテンツのデジタル化だと言ってみたり、TwitterやiPhoneで消費者の行動が大きく変わるからそれに合わせて企業の利益構造も変わると言ってみたり。間違ってはいないだろうけれども、あまりにもセンシティブというか。言ってみればそれらはまだ与太話のレベルであって金への転換の方法も明確でないわけだし、方針決定に取り込むにはまだ時期尚早。ウォッチの段階。なるべく資本を落とさずに、最低限の労力でとっかかりを持っておく程度で十分だと思う。
こうしたいわゆる「先進的なサービス」や「流行のビジネス」、またそれらを紹介、推進する「ビジネス本」「マーケティング本」というのは、河野さんの言葉をお借りすると、
手伝ってる立場としては誉めないまでもスルーするのが大人な対応なんだろうけど、ぼくには(仕事がなくなるリスクと引き替えに)自分の意見を述べる自由があるので、もっかい言います。
儲からないよ。
「自己啓発本を読んで成功した」ってのと同じで、その人は本を読まなくても成功してただけの話。そしてその裏に100倍以上の成功してない人がいることを忘れてはいけない。だってみんな成功してないじゃん。こんなのは占いと同じだよ。
というわけで。それが商売の芽になる「可能性」は否定しないけれども、ビジネス本読んだくらいで本業が儲かるんだったら不況なんか来ないよ。KindleでもTwitterでもiPhoneでもなんでもいいけど、こういう煽りをやって儲かってるのは誰ですかってそりゃ本書いた人やそのために設立された企業に決まってて、そっち側からビジネスのあり方を計算するのはあんまり上手くいかない。ていうか、失敗例がゴロゴロしてて精査する気も起きない。
正しい「道具」の使い方は、その道具ではなくまず目的の方をきちんと認識することから始まるんだと思うのよ。ドラえもんじゃないけど、例えば顧客がどんな情報、どんなサービス、どんな手段を必要としているか見極めて、どんなアプローチをすれば幸せになれるかを考えた上で、じゃあそれにはこれだよね、と道具を出すのが正しいんだと。
その当たりをもう少し解ってもらいたいのだけど、多分今のままじゃ無理だろうなぁ。相手の知識不足につけ込んで暴言を吐くことは出来ても、相手が「自分が情報優位性を持ってる」と考え、信仰に近い思いを抱いているのを否定するのはなかなか容易じゃない。
どうしたもんか。