寛容力 ~怒らないから選手は伸びる~ 渡辺 久信 講談社 2008-11-11 売り上げランキング : 3270 おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
またまた、上司に借りて読んだ本。上司がこれを部下にかすってなんかおかしくないかwとか思いつつ、
別に深く勘ぐることもせず(俺だって苦労してんだとか)、すんなり楽しく読みました。
渡辺久信さん(以下敬称略)の人柄が、存分ににじみ出る良い本だと思います。
基本的には、監督という立場でものを考えるときに彼がポリシーとしていることを、
なぜそう考えるか、どうしてそう考えるようになったかを、きっちりと掘り下げて書いた本。
ある意味で、彼の半生記…とまでは行かないまでも、四半生記と言っても良いかも。
僕の記憶の中にある「渡辺久信」といえば、西武ライオンズのエースで、
比較的安定した成績を残した割と控えめなかつマイペースなアスリートという印象なんだけど、
そういえば、台湾で投げてるって言うニュースも見たし、
文中で何度か取り上げられた工藤とのキャンプ中の企画も記憶にあるなぁ。
豪華だった頃のプロ野球ニュースだったっけ?
だから、彼がもの凄くいろんなことを考え、
もの凄く細やかな配慮を持って選手に接しているというのを知って、凄く驚きました。
いや、「そんなこと出来るようには見えない」ということではなくて、
実践していることが普通の人レベルでは出来ないことだから、
そんなことまで考えてるのかと。
折しも、最新号のNumberが監督の言葉に焦点を当てた特集で。
Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2009年 2/19号 [雑誌] 文藝春秋 2009-02-05 売り上げランキング : おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
まぁ、Amazonのレビューの人はお気に召さなかったようだけど、
この方はオシムに興味があるようだから無理もないかな。この号は、オシムの号ではありません。
そうではなくて、監督というのは何を考えてどう語るのか、ないしは、
どう語ってしまうのかをつぶさに見ていった1冊。
その中で複数の人間が語っている「野村」と言う監督の印象が、
まさに渡辺久信の語る印象と一致していて不思議な感じがしました。
あれ、野村ってそんなにいい人なんだっけ?
加えて台湾での自らの体験。
「相手のレベルまで目線を落として考える」というのはまさに教育者系の考え方だけど、
単に相手が劣っているからというだけではなくて、
常に相手がどう考えるかを考えた上で、全てをきっちりマネージメントしていく…というのは、
ただ情熱があるだけじゃない、計算があるだけじゃない、奥の深さを感じました。
あれ、渡辺久信ってこんなに凄い人だっけ?
この本が売れている理由は、管理職の人などを中心に、
組織をまとめる、人とコミュニケーションを取る方法論として参考になると言うことのようですが、
確かにそういう一面はあります。
でも、多分、彼と同じことをしようとしても…多分、出来ないんじゃないかなぁ。
これはもうきっと才能というものなんじゃないのかな。努力や経験も含めてね。
でも彼が大事にしていること、相手をきちんと見て相手が何を考えているかを考えた上で、
思いを適切な言葉で相手に伝えること…には、共感しました。なかなか出来ないけど、
でも、それを心がけているかいないかでは、失敗したときに考えることが違ってくるんだよね。
なんと無しに言葉を相手にぶつけてるだけじゃ、
上手くいかないときにどうしたらいいかわからないですからね。
彼のやり方をトレースするかどうかはともかくとしても、
そうした彼の思いというか人柄を感じるという意味でも、かなり面白い一冊だったと思います。
ある意味で、スポーツの裏側の人間的なものを感じられるんじゃないかなー