空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書) 北村 薫 東京創元社 1994-03 by G-Tools |
推理小説は結構好き。
…なのだけど、高校の時に内田康夫にはまった以降、
日本の推理小説にはなぜか手を出そうとしなかった。が。
OFFICE CUEのCUE DIARYで北川さんがこんなことを書かれていて。
CUE DIARY / CREATIVE OFFICE CUE – 止まらない女。あぁ、、、止まらない、、、。
今読んでいる二冊の本が、面白い、、、。
「空飛ぶ馬」と、「食堂かたつむり」。
「空飛ぶ馬」は、落語家の円紫師匠が事件を解決するという推理小説。
アタシが落語好きと言うのを知って、知人が貸してくれた。
おお、落語家が事件を解決?
これは読んでみたい…ということでAmazonで購入。
主人公は、大学生の女の子。
お父さんが国文出で家に古い和書をたくさん持つような人で、
子供の頃からなんとなしにそういうものを愛読して育ってきた感じ。
その女の子が大の落語好きで、特に春桜亭円紫という落語家の大ファン。
女の子の趣味としては相当変わってるなぁと思うけれども、
以前、春風亭昇太を見に行ったとき客層にずいぶん若い女の子が多かったんで、
(それも春風亭昇太だからというより落語を知ってる女の子もいたりとか)
ありえるかもなーとか。こういうの読むと、東京がうらやましい。
でで、女の子と円紫師匠とは同じ大学の出身で、
女の子の先生を通して知り合って仲良くなる…という感じの始まり。
(ちなみに円紫師匠は結婚していて子供もいるんで、恋愛的なあれは双方一切無い)
『事件』そのものは、身の回りにある本当にありふれたこと(ある夢を見た原因の推理とか)で、
そういう意味でも一般的な推理小説とは一線を画していて、
そうだなぁ…推理小説的味わいもある、私小説…といった感じの趣き。
人が殺されたりアリバイ工作したりするばりばりの推理小説を期待すると当てが外れるけど、
こういうものだととらえるとこれはこれで心地良い。
そして、事件は、落語をはじめとした様々な文学的教養をアクセントに描写される。
それは事件のあらましから心理描写、落ちまで徹底していて、
中には落語としてもコアなものもある。
けれども要点はきちんと説明してくれているので、意味がわからなくて、
戸惑うということはないかな。知ってれば倍楽しいだろうけど。
例えば第1話『織部の霊』を例に取ると、
まず話は織部焼(古田織部が創始されたと言われる)から始まり、
落語『夢の酒』『樟脳玉』、演劇『天守物語』、
落語『夢金』『鼠穴』『茶金』と続き、小説『外科室』『解剖室』まで。
すべてを知ってる必要なくて、
解説があるもの以外は小道具みたいなものなんだけど、それがなかなか面白い。
(『茶金』が聞きたくなってきた)
話によって若干体裁は違うものの、こういう落語(および様々な文学)の使い方や、
日常と事件(非日常)との緩やかな共存の描き方なんかが描写されていてなんとも落ち着く。
推理小説が好きな人、というよりも、
私小説やエッセイが好きな人にむしろお薦めしたい本かなー。
ちなみに、この『春桜亭円紫』はシリーズ化されているらしくて、
現在までに以下の5冊が刊行済みの様子。
Amazon.co.jp: 空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書): 北村 薫: 本
Amazon.co.jp: 夜の蝉 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書): 北村 薫: 本
Amazon.co.jp: 秋の花 (創元推理文庫): 北村 薫: 本
Amazon.co.jp: 六の宮の姫君 (創元推理文庫): 北村 薫: 本
Amazon.co.jp: 朝霧 (創元推理文庫): 北村 薫: 本
順次、読んでいきたいと思います。
(って、言うが早いか『六の宮の姫君』まで買っちゃったけど)