皮肉に対する切り返し。

先日、バー営業のWeller’sClubで飲んでいたときに、
静岡から京都に来て1ヶ月という女の子と喋ってました。

ばりばりの関東弁(正確に言うと静岡弁だけど)を聞くのが新鮮で、
まーなんつーか、全然知らない女の子だったんですが、話を聞いておりましたところ、
どうも京都人の持って回った言い方が神経に障るらしく。
その辺をしきりと愚痴っては、連れの女の子(京女)がフォローするみたいな、
コンビ漫才みたいなことを延々してました。


その女の子の言うこともわからんでもないですけどね。
特にその女の子が感情と発言が直結してるタイプの女の子だったんで、
余計に言い方が気になるだろうなーとは思ったんだけど、
ただなんていうかなぁ…もし、会話で勝ち負けを付けるとしたら、
相手に不満があってそれを関東弁でまくし立てて言い負かしたとしても、
それって多分、勝ちにならんよね、とか思ったり。

その辺、僕は静岡出身ではあるけれども、
こっちに住んでもう10年以上だし、だいぶ感覚として分かってきたところがあって。


例えば、女の子が話していたエピソード。

居酒屋で飲んでいて、その店は凄く狭い店で1つのテーブル相席とか当たり前で、来た客がなんと無しに一緒に飲むみたいな感じのスタイルで。来てたお客さんの中に、親子で来てた人がいて、息子は20歳くらい、だからお母さんの方はもう40越えてる感じなんだけど凄く綺麗な人で、ホント綺麗な人だったから『綺麗ですねぇ』とか言ってて、いやいやいやとか話してたんだけど、あとで隣に座ってた地元の人っぽいおばちゃんに、皮肉を言われて。もうそれがすっごいむかついて、なんだよーこの人!とか思ったんだけど、もうホントに京都人て。なんて言われたか?いやね、その親子連れが他の人と話し始めたときに隣のおばちゃんが、『もうあれやねぇー関東の人ははっきりいわはるわねぇ、もうあたしらそんなお世辞とかよういわんわー』とかなんかそんなの。お世辞じゃねっつーの。もうなんかホントに言いたいことあるんならはっきり言えと(以下略)

まぁ、こんな感じ。
ありそうな話です。


でも実際問題さーこういう感じの皮肉って言うか、いじりっていうか、そういうのって、
別に京都限定でも何でもなくて、どこの県行っても皮肉っぽいおばさんとかいるし。
比率の問題とか、言い回しとかはともかくまー腹立つ人はいますよ、うん。

んで、彼女としてはそのおばさんに対してあなたはむかつきますね、
という不平を申し立てたかったけど出来なかった、みたいな話なんだけど、
僕が思うその場面での正解は、決して喧嘩して言い負かすことじゃないと思うのね。


この辺は関西に来るまではちっとも思わなかったんだけど、
“勝負”に勝つための方法ってのは実際には2種類あって、
1つはもちろん相手を言い負かすだとか強く言って黙らせるとか何だけど、
もう1つの方法として『笑いを取る』っていう方法があって。
どんなにダメな状況でも、笑いが取れればそれでもう参ったになるっていうね。

コミュニケーションの主導権なり優位性で勝負を付けるとしたら、
相手をはっきりと言い負かすことだけが、勝負の決め手じゃないんだっていう。



そういう意味で、この場面においては、
皮肉には皮肉で返しておいてなおかつ笑いも取るって言うのが、正解だったかなと思う。
そうしたら、皮肉に対して不満を述べるという意味でも目的は達成できるし、
なおかつ話の面白さでも相手に対して優位に立てて、
自分がお世辞を言ったという点は身を切った(認めた)としてもお釣りが来るくらいの勝ち。
改めて褒めたかったらそのあとでも十分間に合う。


これは大人とかそういうことではなくて…要はリズムなんだよね。会話の。

真剣な話をしてるときであっても、分かってる人はきちんと笑いのタイミングを作るし、
会話の緩急の中で自分の主張を滲ませるのが巧い。
それは関西人とかそういうことじゃなくて話のうまい人全般に言えることではあるけど、
特に関西人はそういうことが出来る人が多い。だから、面白い。


確かに京都人はあまりはっきり言わないとか、皮肉っぽいとかあるけれども、
それに対して京都人の土俵で闘っても多分1つも良いことはない。
だって彼らは生まれてからずっとそのリズムでやってきてるし、百戦錬磨だから。
真正面から行っても、はーそうですかぁ、とか言われるのがオチ。

それならその土俵での勝負に関しては、私はあなたには敵いません、と見せちゃって、
その土俵の外側、例えば笑いという紐付きのツッコミとか、
その辺で勝負する方が、総合的に見れば勝つ要素は多いし、なにより、面白い。
後味良く皮肉返せた方がお酒も美味しいしね。

どんなに皮肉られたって返しで笑わせりゃ勝ちなんだって。マジで。



僕が関西を気に入って、関西に住んでる理由の1つは、
そういう敗者復活的な面白さかなぁと思う。
いじめられててもいじめっ子を笑わせたら勝ちなんだっていうね。

関西に住んだからってそれに合わせる必要は確かにないけど、
そういう感覚が身につくと、会話がより一層楽しくなると思うなぁ。



あぁあと、関西の人間は自分がぼけて笑いを取るのになれてるから意識しないだろうけど、
関東の人間で自分でぼけて笑いを取るってのは結構難しいもんなんだよね。
笑わせてるではなく、どうしてもただただ笑われてるという感覚ばかりが残っちゃって、
楽しむような感じになれなくて。
(もちろん個人差はあるけど、少なくとも僕はプライドが高いのかなかなかなじめなかった)

だから、突っ込んでみんなで笑うときも、その辺気を遣ってあげる方が吉かなと思う。
僕ら普通の会話のつもりで笑ってても、先方は意外に気にしてることもあるからね。
相手にとってはただいじめられてるだけになっちゃうし、そうなると面白くない。
(多分、関東でツッコミ→笑いの構図って欠点の指摘が多いからだと思う)

関西人だったらそれも読み切った上で花を持たせつつ、つっこんでかないとね。
ポジティブな意味でキャラを立てられるかどうか、その辺が腕の見せどころっしょ。