初音ミクの揉め事の件。

『初音ミク』『VOCALOID』を取り上げるに当たって、
“祭りになったから書く”というような扱い方はしたくなかったので、
先に初音ミクとその音楽について触れました。

初音ミクの件(著作権関係の話はまた後で) : NOBODY:PLACE

ソフトウェアを擬人化するのはどうかと思いつつも、
唯一全く落ち度も何もないのは初音ミクで、
このいざこざのせいでその彼女(?)を正当に評価しない、
していないように見える取り上げ方をするのはなんか違うと思ったので。


で。

初音ミクを使用したオリジナル音源の著作権に関するやりとりで色々と起きてます。
まとめwikiもあって、個人的にまとめエントリあげてる方も無数にいるんですが、
とりあえず個人的なメモと若干の感想をば。


先に、今回の件に対する僕の雑感の中で一番大きな部分を占めてたのは、
技術によるエンターテイメントを追求するニワンゴと、
それを許容しつつも結果的にはそこからリターンを求めるドワンゴの親子関係。

先日の西村博之氏(以下ひろゆき)の発言からも感じられたけど、
もちろん巨額を投資してる以上それを回収することは目的の1つだけど、
それよりもサービス自体の色んな意味での質を上げたい(≒最終的にはそれが
大きなリターンに結びつくはず)という感じのひろゆきおよびニワンゴと、
不透明であっても出来るだけ具体的に黒字を宣言して株価を上げておき、
その間にニコニコに付随する価値を片っ端から現金化していきたいドワンゴとで、
考え方というか、目先の距離に大きな違いがあるのでは?と感じた。

まぁWEBの意見では、ニワンゴ=ドワンゴとして捉えてる人が多いんで、
僕のこの感じ方は気のせいなのかもしれないけど。



では簡単に事件のあらまし。


事実
  • クリプトンが初音ミクをリリース。それを利用して“職人”がオリジナル曲を作成、ニコニコ動画にアップ、人気沸騰
  • 一部オリジナル曲の着うた配信中
  • 一部オリジナル曲のカラオケ配信中
  • カラオケに関してドワンゴがJASRACに権料の徴収を信託(カラオケってのはJASRACなどの著作権管理団体に信託しないとリリースできないそうです)
問題点
  • 着うたなどのリリースに辺り、一部職人の許諾を得ていなかった(ないしは許諾を得ていないことを確認できなかった)
  • 着うたなどのリリースに辺り、契約を交わしておらず収益の分配などに関する取り決めが無く、分配されるかどうかも不明。
  • ドワンゴがJASRACに提出した書類に不備があった(クリプトンが出した条件がアーティスト名を初音ミクではなく『職人 featuring 初音ミク』にするということ)


状況から推測するに、著作者人格権はもちろん職人にあるけれども、
著作財産権/著作隣接権はドワンゴに譲渡されていると考えるのが自然。

またクリプトンの立ち位置が微妙だけど、
職人の作品そのものがクリプトンの著作物を利用した二次創作で、
作品に対する著作権の一部を主張しているのかな、と。
その根拠になるのはもちろんソフトウェアの使用規定だろう。

つまりドワンゴが作品をリリースするためには、
職人、クリプトンの双方から著作財産権/著作隣接権の譲渡/許可を受けなければならないが、
きちんとした契約がなされていないという感じからすると、
その辺の確認を疎かにしたままリリースに踏み切っちゃったという感じかなー
何を焦ってるのか知らないけど。


んでその辺曖昧なままリリースした割にはドワンゴの説明では、
クリプトンが“原盤権”(著作隣接権)を管理すると決めたと書いてある。

当社としては、クリプトン社側で原盤権の管理を行うとの決定をされた以上、当社及び権利者の皆さんの納得の行く説明を早急に行っていただきたいと考えます。
 

いやいや、それなら余計に今の状況はどうなんだよ、というのがあるよね…
原盤権が自分の所にないものを勝手にリリースしたのかい?
そこ解決してからだろ普通。


まぁこのドワンゴ・ミュージック・パブリッシング(以下ドワンゴ)のリリース
(というかニワンゴ運営のニコニコ動画の運営ブログのエントリだけど)
ツッコミ所多過ぎなんだが、例えば、


本件着うた配信に関しましては、本年9月、クリプトン社「初音ミク」担当者様が当社に来社された際、着うた配信の提案をさせていただき、ご了解をいただきました。この際に着うた配信のお願いはいたしましたが、独占云々といった話は一切行われておりません。

→ え。これは?

(株)ドワンゴは26日、クリプトン・フューチャー・メディア(株)が販売する音声合成ソフト「初音ミク」による歌声を収録した「着うた」および、「着うたフル」を独占配信すると発表した。同日付けで提供を開始している。
 

時間経過を明確にして書いてくれ。
この発表と上の文章との関係はどうなってるんだ?


その後、当然締結されていると考えていた各権利者と権利代行会社間の契約書が締結されていないことが、権利者からのクレームで判明いたしました。

当社は非常に驚き、早急に権利者との契約を締結するよう、重ねて権利代行会社に強く申し入れを行いましたが

なんだかさー事態が大きくなっちゃったんで、
上の人が文章書いてる感じだけど、驚いたのは上のヤツだけじゃねぇのかと。
現場は分かってたけど適当にやってたんじゃね?



…と書こうとしたけど、クリプトン社長の伊藤さんが、
ドワンゴのコメントに対してさらに見解を書いてらっしゃいました。

クリプトン伊藤です。

今朝未明に公開させていただきました私のブログエントリに対する反論が、ドワンゴ社より発表されましたので、それに対する見解を述べさせていただきます。
 


ドワンゴの反論に対してはここで大体突っ込み尽くされてるんで
まぁ別にいいかっていう感じ。
ドワンゴの担当者がなんて言う人か知らんけど、
伊藤さんの方が5枚くらい上手かな。



んーなんかまとまらなくなっちまった。
まぁいいか。


とりあえず、僕の感覚では『ニワンゴ≠ドワンゴ≒AVEX』なんだが、
ニコニコ動画を代表してドワンゴがコメントするの止めてくれんか。
ドワンゴ・ミュージック・パブリッシングなんだから、ニワンゴのブログで発表すんな。
ドワンゴのリリースでやれよ。


どっちがどれくらい悪いかは直接やりとりしてくれ。
それで話付いてからブログで発表してくれ。
良くも悪くもそれが大人だろ。
どっちが悪くてもリリースではもうちょっと大人に対応しとけって感じだな。
裏でどついたらいいだけやんけ。


少なくともニコニコ動画のイメージは大きく傷付いたなー
バカな親会社(またはその中の一部のアホな社員)のせいで。

基本ぼんやりした感情論しか、この件については持ってないけど、
でもほら、人が冷めてく瞬間ほど悲しくて嫌なものはないからさ。



参考サイト

ドワンゴによる初音ミクオリジナル曲登録問題まとめ(β) – トップページ

着うた配信の経緯:メディアファージ事業部 ブログ

ニコニコニュース‐クリプトン社の謝罪に対するコメント

ドワンゴ、「初音ミク」が歌う「着うた・着うたフル」を独占配信

着うた配信の経緯(2):メディアファージ事業部 ブログ

「みくみく」JASRAC登録で「手違い」 ドワンゴ・ミュージックが謝罪 – ITmedia News

ドワンゴ、「アーティスト名:初音ミク」のJASRAC登録で「クリプトンと協議中」 – ITmedia News

ニコ動 vs クリプトン 第2回戦 – Usada’s Backyard

[電波とどいた?] – 2007/12c Diary