『マネー・ボール』を読みました。
非常に面白く、また、
ただのスポーツ本でも、ビジネス本でもない、
懐の深い本でした。
全体のあらすじとしては…
選手の能力を如何に把握するか?と言う命題に対して、
スカウトの目に頼る、伝統的、主観的な判断方法ではなくて、
膨大なデータから、その意味を精査して必要なデータのみを抜き出し、
その統計によって客観的な判断を下す…
そんな、野球選手の能力把握方法の『革命』を、
その始まりから、現在(執筆時点…2003年)まで見つつ、描くという感じ。
読む前まで、もっと冷徹な、いわゆるデータ偏重主義で、
ビジネスマン的な人間の牛耳る、そんな野球観なのかな、と思っていた。
でも、全くそうではなかった。
ビリー・ビーンは、僕は知らなかったけれども、
元メジャー選手だったそうだ。
それも、ドラフトで選出されたときには、
様々な過去の名選手と肩を並べて将来を嘱望されるほど、
期待された、そんな選手だったようだ。
しかし、彼が一流選手になることはなく、
メジャーにも上がったことがあるという程度の、エレベーター選手だった。
現役成績:
7年間148試合 301打数 66安打 打率.219 本塁打3本 打点29 三振80
(mlb.comによる記録)
なぜ、あれほど将来を嘱望された彼が活躍できなかったのか?
現役中、彼は、周りの選手がメジャーに上がっていくのを見、
自分が何度も挫折するのを味わい、
メジャーに上がるのはどういう選手なのか?ということを考え続けたのだろう。
それはつまり、実力のある選手を見いだすためにはどうしたらいいのだろう?
(逆に自分には何が足りなかったのか)ということであり、
伝統的なスカウティングに対する疑問を、
自分の人生を通して感じた、と。
もちろん、多くの野球理論を生み出した人々は、
データが好きで、野球を数学的に解析できないか、
それを見つければ依り効率的に選手の能力を把握できる、
そういう考えた方をした人々だったのだろうけれども、
彼は、そうではなくて、
物差しを探してたところに、その理論にぶち当たった、
つまり選択しただけだ、ということなのかな、と。
(理論は理論として面白いし、個人的には好きだけど)
彼が成功したのは、彼が理論を選択したからだ、
というようなことを感じた。
野球における選択を、データをキーにして行ったとしても、
やっぱり、そこには人間がいるのだなぁと。
ところで、この本が書かれたのは2003年で、
この本の中で書かれた部分、ドラフトや、
各スタッフの今度についての検証は行われていないけれども、
ネットで検索することで、ある程度見つけられる。
ビリー・ビーン
変わらず、アスレティックスのGMをつとめている。
その間の成績は以下。
2006 93 69 .574 –まだまだ、プレーオフで好成績は収められないものの、
2005 88 74 .543 7.0
2004 91 71 .562 1.0
2003 96 66 .593 –
安定した成績を収めている。
ポール・デポデスタ(ビリー・ビーン側近)
本の後、2004年からドジャーズのGMに就任。
しかし、2005年シーズンは成績が低迷し、解任されている。
LOS ANGELES — The Dodgers Saturday abruptly shifted from a manager search to a general manager search after dismissing Paul DePodesta less than two years into his five-year contract.
その後、2006年7月にパドレスの特別顧問に就任しているらしい。
SAN DIEGO — Paul DePodesta will be joining the Padres’ front office, working as a special assistant for baseball operations.
ジェレミー・ブラウン
2005年シーズンまではマイナー。
2006年は終盤になって5試合ほど出場している。
思ったより活躍してないけど、
まぁ、マイク・ピアッツァを取ったからなー
Jeremy Brown 5
ニック・スウィッシャー
2005年からメジャーのレギュラーに定着。
2006年シーズンの成績は、
157試合 556打数 141安打 打率.254 本塁打35本 打点95 三振152
もう少しかなー
Nick Swisher 33
もっと、純数学的に、
セイバーメトリクスを知るには、
『メジャーリーグの数理科学』という本を読むと良いようだけど、
なんか高いし(苦笑)
またそれは、別の機会に、ということで。