孤独感の喪失。

僕らは孤独を失ってしまっているのではないだろうか?

現代人は孤独だ、とよく言われる。
一昔前の、家族や、地域の暖かさや、温もりが無く、
ただ、動いていく社会の中で一人生きているだけだ、
そんな印象が、頻繁に提示される。
だが、果たしてそうだろうか?

現実的な感覚で言えば、
僕らが、完全に孤独になってしまう場所、というのは、もうほとんどない。
山奥や、森林に分け入れば可能だが、身の回りにはない。
部屋で一人だったとしても、
そこにはテレビがあり、ラジオがあり、PCがあり、携帯電話がある。
常に何かに繋がれるし、自分と同種の生き物を確認できる。
どんな孤独でもすぐに紛らわせる。

僕らは孤独を失ってしまっているのではないだろうか?
驚くほど多くの人間が、自らの寂しさを主張するという事実も
暗にこのことを示唆しているのでは、と思う。
僕らは孤独を受け止めることを止めてしまい、
何かで穴埋めすることになれてしまった結果、
明確な孤独感というものを喪失し、
それを受け入れることが出来なくなっているのではないか。

僕は決して『常に独りでいい』なんて思わないし、そんなに強くもない。
でも、孤独は怖くないし、嫌いでもない、
独りでいるときの自分と、友達といるときの自分とは違うし、
独りでいるときの自分も嫌いじゃない、
孤独な時間を、孤独な時間として、受け止めたいと思う。


今、独りだからと言って全てを失ったわけではない。
ただ、少し、独りでいたいだけだ。