その頃。

僕が、
人生の何よりも好きだった女の子は
僕の部屋から歩いて
2分ぐらいのところに住んでいた。
好むと好まざるとにかかわらず、
近所のコンビニに行くには
その前を通らざるを得なかった。
その女の子の家の前に
友人の自転車が止まっているのを
何度も見ていた。
友人は彼女と付き合っていて
彼女の選択は僕ではなく彼だった。

意識して遠回りするのも癪だし
気持ちを押し殺して
その前を通った。
そして次の日の朝、早くから、
また知らぬ顔で顔を合わせるのだ。

ひどく滅入ったし
元気になれるわけがなかったが
親友とそのことについて
話す僕らは
どう考えても楽しそうだった。
酒を飲み、ノートを広げ
あれやこれや話しながら
書き込む乱れた文字。
朝になって酒が抜け
またお互い、滅入って過ごす。

決して幸せだけではなかったが
今でも僕は彼女に感謝している。
今でも彼女のためならなんでもするが
ま、必要ないだろうな。
でも今でも彼女に会うと感じる。
とても、普通には話せない。
まだ、好きだから。

─ 片想いの残酷さ。