非正規雇用の多い職場における「社員」てただの会社員のことではないのよね

学生時代にアルバイトで働いた経験を考えてくれれば大体わかるとは思うのですけど、「社員」てのは文字通り企業に採用された人間と言うことでは無くて、多くの場合は「幹部社員」的な意味を持ちます。非正規雇用に比べて給与や福利厚生が厚い一方で、課せられる責任が重かったり、労働時間が長くなったりします。店頭スタッフの大量辞職で脚光を浴びた「すき家」を運営するゼンショーの「階級ピラミッド」が解りやすいでしょう。


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(「キャリアステップについて | 【公式】「すき家」ではたらく!」から引用)


すき家の分類では、店長、複数店舗を担当する人間ですら非正規雇用(契約社員)であり、正社員はその上のランクに位置づけられています。さすがにこれは正社員の比率が低すぎるだろうと思いますが、でも「社員」とそれ以外のランクの差、大きさについてはどこも大体こんなもんでしょう。




個人的には、パートタイム的に雇うのであればともかく、フルタイムで期間を定めずに雇う(ないしはずっと勤め続けてもらうことを期待する)のであればそれはもう「社員」として雇うべきでしょと思うのですけど、それは経営の間尺に合わない「正論」なようで、月給を払えるくらい信用出来る限られた人間のみを「社員」として正社員登用するというのが「すき家」のような飲食チェーン、ないしは非正規雇用が多いタイプの零細企業などにおける現実です。結果、「社員になったんだから今まで以上に頑張って」的なセリフを掛けられることになりますし、場合によってはそのまま管理職に→残業代は出ません、というコースも。



そういうシステムに身を投じ正社員登用を目指す場合、必要なのは実績の積み上げとアピールです。前述の「すき家」の場合は「昇格試験、面談を受け、合格することが条件」と書かれていますし、「ユニクロ」でもスタッフ区分とそれぞれの昇格基準が細かく設定されています。

人事制度 | 店舗スタッフ採用 – UNIQLO ユニクロ

大手チェーンのようにしっかりとした基準がない場合、多くは直属の上司またはマネージャー、場合によってはオーナーへの印象付けです。頑張ってる、売上が伸びたなどのポジティブな実績を積み重ねつつ、会社に貢献し続ける意志を示すことで信用を勝ち取り、居場所を与えられる、みたいな感じ。それがなければ「単純作業を繰り返すだけでは社員には不十分」とか「部署の労務管理や改善まで出来ないとダメ」とかのダメ出し。ただ雇用を自動更新される身として会社に所属したいだけなのに、なぜこんなに責任を背負わされるのか……。

もちろん非正規雇用の人間が自分のペースで働けているのも一面事実ではあり、それによって不足する部分を「社員」になった人間が補うわけで、そういう意味で増えるノルマや責任にはそれなりの理由が(会社側には)あります。まあ「社員」になって偉くなったような気がしても、一般企業的な視点で見ればそれはただの就職ですからね。給与がびっくりするくらい増えるわけでもないし、むしろようやく人並み。待遇は多少改善したけど、ノルマ&時間外労働の激務で健康を損なうこともよくあります。肩書きが変わったからって前の何倍も働けるわけじゃないですからねえ。能力的な意味でも体力的な意味でも。むしろ職責変わったら能力リセットって言った方が良いのでは……やっぱり大変。



ただここでは「それを変えるべき」と主張するつもりはなくて、まあそういうのが自分の弱いところかも知れませんけど、社会のシステムとしてこれが現実なんでしょうがない。自分がそこに身を投じていて、正社員登用されてよりよい待遇を得たいと思っていたとしても、そこまでには道のりがあるというのは、言いたいことはあっても理解しなくてはいけない部分(前職だってそういうシステムだったよ)。変えたいという意志はあっても、しょせん自分は雇用される側だしねえ。ポジティブな意味で、仕方ない。

変えられるようになるまではシステムに文句を付けても詮無きことなので、それを忘れずにシステム内で生き、実績を順調に積んでいけるようサポートしてもらいながら成長していくしかないのですよね。先輩が後輩をしごく伝統がある部活とかにちょっと似てる、かも。