外国籍を理由に国民年金制度の対象外となり、老齢年金を受給できないのは「法の下の平等を定めた憲法や国際人権規約に違反する」などとして、京都府内に住む在日韓国・朝鮮人の女性5人(78?89歳)が国に1人当たり慰謝料1500万円の国家賠償を求めた訴訟の判決が23日、京都地裁であった。
山下寛裁判長は「立法府の裁量の範囲内で、違憲、違法ではない」と請求を棄却した。在日外国人の老齢年金を巡る同様の訴訟は大阪地裁、同高裁でも争われたが、いずれも棄却されている。原告側は控訴する方針。
この記事のことを取り上げている、以下のエントリを読んで、
よく分からなかったので、国民年金と、国籍について調べてみた。
またか!という感じですが、この記事もやや説明不足なので補足しますと
1)国民年金法の国籍条項は1982年に撤廃されたのは事実です
しかし、この時、彼らは年金に加入しなかった
2)撤廃後、6年間は特例期間があり、その間に加入し、その後掛け金を全部払うと貰える
なんら、対象外でも何でもありません。
以下のページを参考にして調べ、まとめてみると。
厚生白書(昭和56年版)
国民年金法と外国人問題
社会保険庁:1.国民年金の加入
- 日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の方は全て、国民年金に加入する。
- 1982年(昭和57)までは、日本国民に限られていたが、国民年金法の改正により、国籍に依らず日本国内に居住していれば誰でも加入することが出来るようになった(加入する必要がある)
- 1982年(昭和57)の改正は、加入条件の国籍に関する変更であり、年齢による変更はない。よって、年齢条項を満たさなければ加入は認められない。
- 1986年(昭和61)から6年間は、国籍に関する特例が認められ、国籍条項の撤廃によって資格を得て加入した者は、所定の年数に満たなくても受け取ることが出来る。
- 国民年金は加入が義務づけられており、また、加入し、所定の年数を満たした者に年金が支払われる公的サービスである。
で、今回の訴訟と判決を見てみると。
5人の方がいて、A、B、Cさんは、1982年の国籍条項撤廃当時、60歳以上であり、
その時点で、加入の資格がなかった。
(国籍とは関係なく、年齢という条件で資格がない)
もちろん、これに関しては、遡って資格を与えるべき、という意見もあるだろう。
法律上はともかく、道義的にはあり得る。
しかし、国籍によって制限していた年金法が間違いだったかと言えばそうではなく、
難民の地位に関する条約(1981年批准)によって、
それに沿った形で法律が改正されただけであり、
その撤廃前も、撤廃後も、法律は有効である。
難民の地位に関する条約 – Wikipedia
よって、現行の法律に従い、A、B、C三氏の受給資格を考えると、
加入資格を得たことが一度もなく、
当然、加入そのものをしていないので、受給資格はない、というのは、
極めて常識的な判決だと思える。
これを覆すには、法律の改正を求めるしかない。
それも、
と、加入資格、および、受給資格双方に、特例を設ける必要がある。
- 1982年当時60歳を超えていた者にも加入資格を与える。
- 上記に該当する者で、加入を希望する者は、加入期間が所定の年数に達しなくても、受給資格を得る。
法律に沿って、平等に判決が下される以上、
いずれにせよ、金だけもらえる判決は出せそうにないし、
(法律の改正を促す判決はあるかもしれないけど)
この判決は当然と言わざるを得ないんじゃないだろうか。
改正当時、加入資格を満たしていたD、Eの2人に関してはどうか。
この2人は、国籍的にも年齢的にも、加入資格を満たしている。
つまり、その時点で、申請していれば、現時点で年金を受給できているはずである。
が、どうやらこの2人は、申請しなかったようだ。
つまり、加入していない。
よって、受給資格を満たしていない。なので受け取れない。
これは、国籍は関係ない話なのではないだろうか。
もちろん、どの程度周知出来ていたかという問題はあるにせよ、
個人の不手際によって、受給資格を得られなかったと言うだけで、
国籍に依らず、日本人でも発生しうる。
ひょっとして、社会保険庁に申請し、未納分の掛け金を支払えば、
それに相当する年金を受給できるかもしれない。
他の、1982年の改正で加入資格を得、加入した人達は、
そうやって年金を受給してるわけだから。
この件に関して5人の状況を、
国籍というキーワードを軸に同一視点で語るのは、
少々乱暴すぎる気がする。
加入資格を認めて欲しいのか、
加入資格を認めた上で無償で受給資格も認めて欲しいのか、
その辺の論点をはっきりさせないと、
たかりという誹りを受けても仕方がないと思う。
ま、そんなとこかな。