夜19時。通販の梱包作業も一段落ついたころ、電話が鳴る。
電話が鳴ること自体は珍しくもないし、
特に、受注が集中しまくってるここ最近はひっきりなしなので、
気にはしなかった。
が、応対しているスタッフの受け答えがどうもあやしい。
明らかに、なにか問題発生である。
『Nさん、ちょっと…』
通販のボスはお休みだったが、サブ的役割の同僚を困った声で呼ぶスタッフ。
『どした?』
『それが…』
電話は、オンラインショップで買い物をした客の母親らしい。
親のクレジットカードで買い物をして、その了解を取るためとか、
親に電話に出てもらうことはたまにあるが、しかし今回は違った。
簡単に言うと、『息子に買い物をさせないでくれ!』ということらしい。
『は?』
スタッフ全員の目が点になる。
この電話の主の息子、レコードを通販で買っては、送り先を実家に指定し、
着払いで母親に払わせていたそうだ。
…馬鹿息子、ここに極まれり。
もうそれも限界なので、
今度から息子からオーダーがあっても通さないでください、と言う
いわば『お願い』のような電話だったようだ。
そんなことは親が直接子供に言えよ…全員が同時に思った。
このクソ忙しいときにそんな電話に応対する余裕など在るはずもないのだけど、
『子供に言ってください』とは言えない。
Nは、静かに、
『わかりました、それではお名前を…』
と告げた…。
ていうか、自分で買えよ。自分のモノなんだからよ…
母親からの訴えにより、見事にブラックリスト入りである。
ていうか、オーダーがあったときに
『お母様から、オーダーを通さないようにとのお話がありまして…』
なんて事を、大まじめに切り出せるんでしょうかね(苦笑)
理由を説明せずに、『お受けできません』とは言えないしなぁ…
ぜひとも、その状況に居合わせたいものである。