Nobody but You

『きみだけは、』
なんていう心地良いだけの言葉を
僕はあまり好まない
この世界には、いや、京都にだって
出会っていない人は数限りなくいるし
いつ相手に対する評価が変わるとも限らない
僕だって意固地に見えても気持ちは変わる
ただ、心地良いというだけで
大切な想いを安易に 甘い言葉に託したくない
きみの気を引くためならなんだって言うよ
あとでなんとでもなる
そういう気にはとてもなれない、
泥酔してたとしてもだ
人に言われるのは別に構いやしないが
それぞれに考えや気持ちがある、
自分の言う言葉には出来うる限り、責任を持ちたい。
それはある意味で
僕が多くの約束や言葉を
裏切ってきたからなのかもしれない
『きみだけを、』
見続けることも、考え続けることも、僕にはできない、
見る夢も、思う気持ちも
きみが出てこない場面は数多くある
気を引かれるような出会いや、
自分で精一杯なこともある
ただ、そんなとき、
ふと、そこに腰掛けて、深い溜め息をつく
そのとき僕はきみのことを想っている
いま僕を、こんな気持ちにさせるのは
きみだけしか、いない。
それが明日、どうなっているかは
僕にはよくわからない
長い長い、馬鹿馬鹿しいエクスキューズを
いつまで僕は続けるのだろう
僕が想うほどには
想い出も、きみも、本当は
美しくはないのだろう
『きみだけが、』
そう想うときが、
いつまで続くのか、もう終わってしまっているのか
僕にはよくわからない

ただ、いまでも、きみのことを、想う

五月雨の、京都にて。