日々 過ぎていくごとに
想いが薄れていくのを感じている
記憶とは いずれ 形を失うもの
その輪郭だけが どこかに 落ちている
触れなくなって 久しい
その輪郭が落ちていたはずの 部屋も
いまは僕の側にはない
僕は今 確かに ここにいて
煙草に 火をつけている
時間という形のないものが
確かに形を為していた 僕の 想いから
静かに 波のように 何かを引いていく
それでいいのかもしれない
これでいいのかもしれない
僕には わからない
追い求めるものが 愛ではなく
追憶へと形を 変えてしまったとき
それは 額に入れられた写真のように
何も語らなくなる
それは 遠くはないだろう
心の距離も
体の距離も
今の 僕には 関係ない
ただ なにも望まれていない という事実だけが
僕から 愛を奪う
言葉なんて 何も伝えやしない
言葉を伝えようとすることに 意味がある
そこには 確かに あなたがいるのだから
何も 変わらない
何も変わらないこの朝靄の中で
また ひとつ 指の間をすり抜けていく