理性的な発言っていうのは、人の心に入ってこないんです。
感情がこもった発言のほうが、相手の心の中に入る。
同じ言葉でも、感情をこめるとこめないのとでは、
聞き手にとっては、まったく印象が異なるんです。
われわれが、何か言葉を出すときのメカニズムというのは、
「言葉にならない状態があって、言いたいことや考えや感情や、
そういったものが何となく形づくられてきて、やっと
それをいいあらわすのにふさわしい言葉とか文の形とか、
言い方、スタイル、といったものがまとまって声になって出る」
ということなんです。
感情のプロセスを全然経ない、表面だけの言葉には、裏がない。
言葉が生まれるプロセスを経ない。残骸みたいな言葉なんです。
(作家 米原万里さん)
http://www.1101.com/education_yonehara/