insomnia
友達の『眠れない』というメールでさえも
大したことではないように思える
『眠れない』はすなわち『眠くならない』であって
眠ることへの欲求が消えたわけではないし
時間が経てばやがて眠れる
いまの僕は違う眠たいのだけど眠りたくない
自分を説得できない
睡眠障害ではないのではないか
とさえ思える
眠ることへの欲求が、ない
こういう状況になるときの多くは
なにか熱中しているときだ 眠る時間さえ惜しいとき
でもいまはちがう
何の気無しに、起きてしまっている
眠りたくない
考えてもわからないようなことを
なんとなく考えてしまっている
他人の心の中なんてわからないものなのに
初めから
どんなに近づいてみても
僕に心を開くことは二度とない
と思える
電話では解決しないとわかっていながら
初めて電話する人と長電話
話していないと落ち着かないのだろう
相談しているのではないのだろう
独り言の電話、なのだろう
ある友達と『ライン』が切れた
携帯を壊してしまったらしい
部屋の電話番号は知らない
困る事じゃないけど少しぼうっとする
僕らの繋がりなんてそんなもの
最近知り合いになった人と深夜早朝のチャット
個人的なメッセは軽く拒否してみる
そんな気分じゃなかったんだ
みんなでわいわいするのはいいけど
2人で話すことは何もない
心の沈んだ夜は
自分のマイナスばかりを思い出す
沈んだままで迎える朝は
最高だった明け方を 思い出す
波打ち際のあの、朝を
僕から話しかけることはもう
二度とないと思える
うろたえている友達に
メールを出してみる
返事はあっちへ行ったり
こっちへ行ったり
僕の悩みは置いてけぼり
仕事がないと父親から電話
深刻な電話、だけど
釣りでもしたらと薦めてみる
忙しくてできなかったのだから…
そんな父親が好き
遊びに行こうか悩むうちに
朝は来ていて
午前中にウォッカを飲むことになる
服に絡む違う色の髪の毛
静かに払い落とす
眠りに落ちていたはずの中で
ごく自然に電話を受ける
まったく何も問題なく
受け答えをし、決定し、電話を切る
演技ならば苦手ではない
甘い言葉をささやく資格、など、
僕にはもうない
誰かがそれを望んでも。